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小野くんからの手紙

この作品には、自殺や死に関する話が含まれます。ハッピーエンド予定ではありますが、苦手な方はご遠慮ください。

笹原さんへ

 この手紙を笹原さんが読んでいるということは、俺はもう、いないってことだね。

なんだか、こうやって誰かに手紙を書くのは初めてだから、恥ずいな。

 手紙を書きながら、この7日間について振り返ってみたら、隣にはいつだって笹原さんがいた。俺がそうなるように仕組んだんだけど、でもね、本当に幸せだったんだ。最後に過ごす相手が、笹原さんで良かったって、そう何度も思ったんだよ。


 白い封筒に笹原さんへと少し右上がりの癖字。中に入っていたのは小野くんからの手紙だった。ぽたりと室内なのに紙の上に水滴が落ちる。可笑しいな、雨のはずないのに。ぽたり、ぽたり、小野くんの癖字が滲んでいく。視界が潤んで、そこまでしか読めなかった。

 その封筒を見つけたのは今朝のこと。両親のうちのどちらかが朝食時に朝刊をポストからとってくる際に、一緒に持ってきてくれたのだろう。いつも座る席に置かれた手紙が誰からのものかはすぐに分かった。なんとなく小野くんは別れの言葉はきっちり済ませる方だと思っていたからだ。ただ、きっと面と向かってではないだろうとも思っていた。小野くんはそういう人だ。変なところで押しが弱い。

 ただ、もういないんだなとその封筒を開けた時に微かに香る小野くんの匂いに鼻の奥がつんと痛くなった。文字を一つ一つ辿るごとに目頭が熱をはらむ。震える喉。そして、滴が落下する音。



 

 小野くんは、もう、どこにもいないのだ。



 

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