第六話 新しい朝
……朝ね…
《部屋番号2458の方、博麗真中佐がお呼びです、至急上官室にお向かいください》
そういえば最後まで名前を公表していなかった。
とりあえず着替えて、カードキーを持って部屋から出る。
朝方ということもあってか昨日よりも多くの人が廊下を歩いている、その全ての人の視線を私が集めている。
それをあまり気にしない様に歩く。
事前に知らされているルートに沿って歩いていく。
「そこのお前、上官に敬礼しないとはな…」
肩に将軍の階級章をつけた初老の男性が私に向かって歩いてくる。
「たとえ民間人だとしても敬礼の仕方はわかるはずだろう……」
「将軍、その辺にしといてくれないか、その女性は私に会いに来てるんだ」
すると向こう側から真が歩いてくる。
「将軍、民間人にまで敬礼を強要するのはどうかと思うぜ、そんなんだから本部は状況を知らないと言われるんだ」
「上官に敬礼は当たり前だぞ、それで前線の統率がとれなくなったらどうするつもりだ、博麗真中佐」
「前線はお前達上官が心配してる程混乱してるわけじゃない、ましてや上官命令無視なんて起こるとこを見たことがないぞ」
「そうか、それならいい、君がそう思っているだけだと思うが」
そのまま将軍は去っていった。
「すまないな、うちの上官は頭が固いことで評判なんだ、座ってくれ、食べながら聞くといい」
部屋に入ると既に三人が料理を食べていた、皆私服だ。
私を席に座らせて別の人物が料理を出して来た。パンと卵料理、それと野菜だ。
「昨日の事は部隊員より聞いた、昨日はかなり疲れただろう、だが、もしかしたらこれからもっと苦労することになるかもしれん、落ち着いて聞いてくれ……」
少し間を開けて話し始めた。
「通達、本日をもってFDF軍紀第十二条より、幻想郷に迷い込んだ四名の外来人を幻想郷防衛軍の特殊作戦部隊の一員として採用したことを報告する、
なお、この通達を変更することはできない……すまない、これは初期に決めた軍紀のせいなんだ」
「軍紀?どんな物を作ったんだ?」
一人の男が発言する。
「第十二条、全て幻想郷に迷い込んだ者、以降外来人は、身体に極度の異常が見られない限り、幻想郷防衛軍に所属する義務がある……
元々、幻想郷に来た軍人を軍に引き戻す為のものだったんだが、いつの間にか一般市民にも適用されたんだ、もう変えられない」
「でも、それってジュネーブ条約違反じゃあ?」
「ジュネーブ条約第二追加議定書、紛争における15歳未満の児童の徴募及び敵対行為への参加を禁止、お前達は十六歳なんだろ?それにここ幻想郷ではそんなもの通用しない」
皆下を向いて黙り込んでしまった。
「まあ、安心しろ、一番の生存率を誇っているブルーイーグル隊に編成した、これでしばらくは安全のはずだ、だが、それでもお前達は戦わなきゃならん、針妙丸、説明してやれ」
デスクからゆっくりに載った針妙丸が出てくる。
「皆さん始めまして!私は少名針妙丸です、これからよろしくお願いいたしますね?
では先ず最初に私達の所属している幻想郷防衛軍の基本的な構成について教えます、
先ず、我ら幻想郷防衛軍は三つの中隊と輸送小隊、特殊作戦部隊、通称SOFの三つに分かれています、
今回貴方達が所属するのは特殊作戦部隊のブルーイーグル隊になります、この部隊は、指揮系統が通常の部隊とは異なり、前線司令部ではなく、本部による指揮を受けます。
通常通り他の中隊と作戦を行いますが、途中で本部から直接任務が届き、通常よりも危険度の高い任務を行うことになります、
次に報酬についてです、幻想郷防衛軍は歩合制になっており、敵を倒したり、目標を破壊、確保したり、作戦の達成具合で報酬が変化します、
報酬は銃のカスタムや本体の購入に使用します」
「先ずあなたたちには初期装備を選んで貰います、
M-16A3かAK-47の二つです、通常なら銃を買う為には報酬のポイントが必要なのですが、最初の銃だけ無料です」
「まあ、その方は後で射撃訓練で決めればいい、今慧音が空いてる連絡が来た、ここの幻想郷について教えてもらえ、一応教えておこう、
もうここはお前達の知っている幻想郷じゃあない」
突然こんなことを言い出した、まるでこちらが転生者とわかっているような言い方だ。
「俺は今日までずっと外来人を見てきた、だからわかる、お前達は転生者だろう、そのくらいわかる、さあ、針妙丸についていけ」
針妙丸の乗ったゆっくりが跳ねながら目の前を通って、扉を開けて外へでた。
それに続いて扉に近い順に部屋から出る。
私も出ようとした時、真に呼び止められた。
「そういえば、お前だけ名前が確かじゃないんだ、なんて名前だ?」
そういえば最後まで名前を言っていなかった、結局、私はそれまで呼ばれて来た名前を言う。
「……アルマ」
「よし、アルマか、いいか、こいつを持っておけ、中身を見てもいいが、誰にも見せたり言わないようにしろ、
特にあの将軍には見せるんじゃないぞ、いいな?」
手に渡されたのは小さいメモリースティックだ
面倒が嫌いだから頷く。
まだですか?と外から声が聞こえてくる、
またせてるようだ、いかなければ。
メモリースティックの中身
真?「盗聴記録、No.4025、再生開始」
(部屋には男性と女性がいる、女性は窓の外を向いており、こちらには顔を向けていない、男性は同じく女性の方に視線を向けている)
男?「……たった今飛行機が墜落した……本当にやるのか?」
女?「ええ、私は決めたことは必ずやるのよ」
男?「始めたらもう戻れないぞ、本当にそれでもいいのか?」
女?「これ以上決断を鈍らせるようなことを言わないで頂戴」
(男は頭を掻く)
男?「すまない、あんたが覚悟を決めているなら俺も反対はしない…じゃあ、月面の連中に宣戦布告するぞ、一応言っておく、あいつらが失敗すれば後はなくなる、幻想郷は月面の物になる、そうなる覚悟はできてるか?」
女?「ええ、できてるわ、始めましょう」
二人「幻想郷昇華計画を」
真?「再生終了」