第五話 This world…
ビルの内部に入り、ひたすら階段を登る。
「本当に登るのか?こんなの体育の時以来だぞ」
真の部下が愚痴を漏らす。
「ここに来てからも登ったはずだぜ、気合入れろ」
最上階までひたすら階段を登り続ける。
最上階にはヘリポートと若干小さい事務所、廊下がある。
「あれが迎えのヘリだ!早く行こうぜ真!」
「落ち着け、ヘリは逃げないぞ」
ハルトがヘリまで向かって周辺を警戒し始める。
私もヘリに行こうとした時、突然事務所から敵が出てきた。
突然のことで反応が遅れて、私は背後を取られ、首を締められ、ハンドガンを突きつけられた。身長が小学五年生ほどまで下がっている為、宙吊り状態で苦しい。
『そのヘリをこちらに寄越せ!でないとこいつを殺すぞ!』
ハルトが銃を持って敵を狙おうとした瞬間、敵はハルトに向かってハンドガンを撃ち、右腕に命中させた。
『銃を降ろせ!床に置くんだ!こいつの命が惜しければな!』
まだ私のハンドガンは太もも辺りに有るホルスターに入っている。
チャンスは一回切りだ。
息苦しいまま、タイミングを図る。
私の頭からハンドガンの銃口が離れた瞬間、ホルスターのハンドガンを引き抜き、足に向かって発砲、怯んだ瞬間を狙って腕を外す。
喉元を狙って殴りつけ、地面に倒れさせた後、背後に回ってハンドガンを頭に向かって発砲する。
頭から血が吹き出し、敵は息絶えた。
先ほどの拘束で酸素が回らなかったせいで倒れてしまう。
そこへ真が手を差し延ばす。
その手を掴んで立ち上がる。
ハルトもたった今手当てが終わって歩き出した。
「もう大丈夫だ、ヘリに乗ろう」
真に支えられてヘリコプターへ乗る、既に他の隊員は乗り込んでいる。私たちが乗り込み、ヘリはゆっくりと離陸した。
ある程度の高度まで達した時、今までいた場所の全体が見渡せた。
現代風の家屋が立ち並び、所々ビルが天を貫かんと伸びている。
ここは、本当に妖怪の住む幻想郷なのか?それは今、私にはわからない。
送信#14-12 指定#Hotel
真が一人の民間人を回収
訳ありの可能性有りと判断
追加情報は追って伝える
2100時 2056年4月28日
「着いたぞ、ここで今日は休め、お前は今日一日だけで色々なことがありすぎた」
ヘリは大きな基地の滑走路の建物の近くに着地した。
「ハルトは医務室へ、他はもう休め、報告は俺がしておく」
ハルトは腕を抑えたまま、他の隊員は談笑しながら離れていった。
「お前は一緒に来い、休む宿舎が空いてるか聞いてくるからな」
彼はそう言って歩き出した。
大人しく着いて行こう。
暫く歩くと、基地の内部に入り、カウンターに真が向かった。
「すまない、針妙丸に繋いでくれるか?」
「はい、少々お待ちを…繋がりました、どうぞ」
カウンターで少し会話をした後、受話器を受け取って話し始める。
「あぁ、針妙丸、今帰った、あぁ、心配するのは後にしてくれ、調べて欲しいことがある、兵員宿舎の、女性棟の部屋が空いてるか調べてくれ、
民間人を保護した、詳しいことはまた話す…一部屋ある、じゃあそこのカードキーの発行申請を、した、じゃあ送ってくれ……今届いた、送ってから戻る」
「来てくれ、これから案内する」
受話器をカウンターの受付に戻し、一枚のカードを持って通路へ向かった。
私はそれに着いていく。
「ここが女性棟だ、ウチの女性隊員はみんなここで寝泊まりしてる、男性は立ち入り禁止だからここで部屋の説明するぞ」
そう言って地図とカードを出した。
「部屋に入る前にはカードキーと指紋認証をする必要がある、カードキーを読み取らせたら右に窪みが出るからそこに右の人差し指を入れてくれ、音がしたら引き抜いて扉を開けろ、
扉は閉まれば自動ロックがかかる、夜も安心だ、意図的にロックを解除もできるが今は知らなくてもいいだろう、
今の時間帯ならシャワー、風呂焚きは温泉が出るはずだ、ゆっくり疲れを癒すといい、
朝食は明日の朝八時までにここだ、この俺の部屋に来てくれ、今後のお前の処遇も伝える、
軍隊の朝は早いから限界まで寝てるとうるさくて起きちまうかもな、では、おやすみ、ゆっくり体を休ませてくれ」
そう言って彼は元来た道を戻っていった。
宿舎に入り、指定された部屋に入る。
言われたとおりにロックを解除して、部屋に入る。
服を脱いでシャワーを浴びる。
首元の番号は消えていない。
シャワーから出て、部屋に用意されていたゆったりとした服を着て、今まで着ていた服を洗濯機に入れ、回して寝た。
ここは本当にどこなのか、それは明日になればわかるだろう。
俺は一人で誰もいない廊下を歩く。
その廊下の突き当たりにある部屋に入る。
「ただいま、針妙丸、今帰った」
「お帰りなさいませ!真様!」
「ゆっ!」
部屋に入ると、ゆっくりに乗った少名針妙丸が出迎える。
「お怪我はありませんでしたか?」
「ああ、無い、大丈夫だ、それよりもだ、あいつを調べたか?」
「私でもわかるくらい恐ろしい程の妖気を感じました、一体何者なんでしょう?」
「さあな、それは俺にもわからない、だが……
将来の“ブルーイーグル”になるかもな」
俺はそう言って針妙丸に微笑みかけた。