第三話 脱出
『素晴らしいなNo.14は、我々が必要としている以上の実験をしても耐えている』
『だがもう終わりだ、館長がこれ以上NO.14の実験をするなと言い出した、どうせ自分の物にしたいのだろう』
研究員達は皆中国語で話している、少し前に父親が無理矢理中国語を教えたせいで何と無くではあるが、言っていることはわかる。
『それを言ってどうするんだ?』
『そこでだ、俺たちの物にしようじゃないか、ここには監視カメラもセンサーも無い、あるのは中央管理のセキュリティ用ロックシステムと機材だけ、誰もここで起きたことには気づかない』
『いいな、乗ろう、どうするんだ?ここで犯すのか?』
下劣な会話をしているが、今はそんなことも気に留めないほど感情は消えている。
二人の研究員が縦に固定されている私を横にしようとした。
その時。
《緊急事態発生!緊急事態発生!研究棟内に特殊部隊侵入!全研究員は接触を回避せよ!第一、第三、第五セキュリティゲートを閉鎖する!内部の研究員はそのまま待機せよ!》
なんだ?特殊部隊が突入?どうやらようやくここの異変に気づいたらしい。
『監視カメラをこのパソコンに繋げられる筈だ、少し待ってくれ』
奴らがパソコンの方を向きこちらから完全に目をそらしている。
今しかない、壁に固定された手首の拘束具を無理矢理引き、ネジごと外す。
ネジはかなり強固に固定されている、だが、もう既に人では無い何かになっている私にとっては全く問題無い。
ネジごと外れて地面に拘束具が落ちる。
その音にも気づかずパソコンを見ている。
もう片方も外し、ネジ一本を構え、研究員の一人めがけて投げる。
ネジは勢い良く飛び、研究員の頭に当たる。ネジの勢いは止まらず、研究員の頭を貫通し、コンピュータのモニターに突き刺さった。
隣にいた研究員に血が掛かり、慎重にこちらを向いた後、ロックされた扉を叩き出した!
『助けてくれ!化け物だ!化け物がいるんだ!開けてくれ!』
研究員はパニックを起こして開きもしない扉を叩く。
ゆっくりと研究員の近くまで行く。
『殺される!やめろ!やめてくれ!あぁぁぁぁぁあ!!』
ロックされた扉の向こうから断末魔が、窓からは男のものと思われる血痕がついた。
送信#15-13 指定#Sierra
元中国の奥地に不当な研究所を発見した。
URN連合軍に出撃要請。
研究所から研究員を出すな。
2250時 2056年4月28日
ロックのかかった扉を腕で押し倒す、それだけで扉が倒れる。
パワーも人間の域を超えているようだ。
最初に殺した研究員の一人からモーゼルC96を奪い、弾を込めておく。
誰もいない廊下を歩く。
まずは服を手に入れよう、今は手術着を着ているが、非常に動きにくいし、血が付いているせいで張り付いて動きにくい。
近くにシャワールームがある、そこで体を洗って服を探そう。
鏡の前に立ち、自分の姿を確認する、
目は赤く染まり、髪は銀の様に真っ白で腰の上あたりまで伸びている。
顔は女の顔立ちだが、今は血が付いて悪魔のような形相になっている。
首筋にはNo.14と刻印されている。取れそうにもない。
シャワーを浴びて、身体中の血を洗い流し、あった服を手に取る。
服は霊烏路空のような服装だがラインが赤と黒の混合になり、スカートも緑ではなく、真っ赤に染まっている。
胸元には真っ赤な目もある、完全にお空の服と正反対だ。
だが、今はこれしかない、これをきて脱出しよう
また誰もいない廊下を歩き始める。
途中で研究員と接触した。
『な、何でNo.14がここにいるんだ?!』
研究員は懐から銃を取り出し、こちらを狙うが、一歩早くこちらが動いたので、引き金を引く前にこちらに撃たれた。
「出口はどこ?」
銃を頭に突きつけて聞く。
『で、出口はあっちだ、ここをまっすぐ道なりに進めば着く!助けてくれ!』
それを聞いてから引き金を引いて殺す。
道は壁や天井が崩れ落ちている部分があるが、歩けそうだ。
しばらく道なりに進むと、反対方向から人が来た。
『そこの者!大丈夫か?!こっちにくるんだ!』
よく見るとロシア軍の迷彩服だ。
大丈夫だろう、彼らの元に向かおうとしたら、天井がいきなり崩落した。
『くそッ!大丈夫か?!大丈夫そうだな、回り込んで落ち合おう!』
あと少しで脱出できる、そう思い別の
道に入った。
天井が所々崩落している、一部通路は封鎖状態だ。
持ち上げられそうな破片もあるが、殆どが大きく私には持てない。
燃えている物もある。
途中研究員と出会うが、全て発砲して殺した、既にこれまでに五人殺している。
だが、罪悪感は無い、感情を捨てただけじゃない。
もう既に人を殺すことに慣れた、慣れてしまったのだ。
ようやく先ほどのロシア軍の兵士と合流した、前方30mほどの所にいる。
『大丈夫か!?こっちだ!辛かっただろう、もう大丈夫だ』
兵士の元へ走って向かおうとすると地震が施設を襲う。
それに足を取られて転んでしまった。
その上から天井が落ちてきた。
『危ない!』
それを回避する間もなく下敷きになった。