死の運命
大変お待たせしました、
この小説は東方戦争記の続編になります、
まず、先にそちらをご覧になった方がこの小説を楽しめると思います。
私が最初に読んだ評論文はこんなものだった。
………人間、産まれた時に初めて背負うものは死という運命と、生きていく代償である。
死は全てを無に帰し、再生させるものであると同時に、人間にとっての最大の苦痛である。
だが、同時に死とはこの苦しみの世からの脱却であり、神の元へ向かうという意味もある。
古くから死んだ後は天国や地獄といった場所へ送られると信じられてきた。しかし、
いずれの世界も最後に待っているものは償いである。
人は、産まれながらして代償を引きずる。
それが何であれ、人はどんなものよりも、長い時間、そして重いものを産まれた瞬間から引きずり歩いている。
故に、人は常に孤独である。
東方戦争記~Four persons who survive~
それは、一件のfloorと呼ばれる通話アプリから始まった。
『久しぶりに皆でゲーセン行こうぜwww』
『いいね、行こう行こう!』
『どこにしようか?メガリスでいいか?』
『いや、あそこ結構高いし、アルカディアでよくね?』
『あそこか?あそこタバコ臭いんだよな』
『少し小さめだがU.F.Oもいいぞ、あそこ臭くないし、俺たちがいつも使ってる媒体もある』
『よっしゃ、そこにしようよ!』
『午後からでいいな?一時に集合だ!遅れんなよ!』
今思えば、集合なんてしなければよかったのに。
俺は………親からつけられた名前が嫌いだ。
皆からはなぜかアルマと呼ばれている。
なんでも女より肌が白いかららしい、それにしてもなんでドイツ名なのかわからない。
まぁ、実際高校で女顔のせいで女と間違われたが……
携帯の電源を入れ、連絡を入れる。
「現地到着、誰もいねえぞ」
『今向かってる』
『いくらなんでも早すぎないか!?』
『早いよ…どんだけ急いで来たの…』
「五分前行動は基本、だろ?」
『到着、後ろにいる、撃つなよ』
「撃たねえよ」
「まあ、朝鮮人だったら撃ってるだろうけどね、到着」
朝鮮人だったら撃ってる……今の日本は韓国と中国に宣戦布告され、高校の教育課程に武器の扱いを学ぶことになってしまった。
「まあ、そんな怖いこと言うなよ、到着だ」
俺たちは中学生時代、愉快な四人組と呼ばれていた仲良し分隊だ、全員中学二年の時に転校して来たグループだ、全員来た場所も違う、顔も知らなかったが、同じ教室で同じ境遇だった俺たちはすぐに打ち解けあった。
メンバーの紹介だ。
「よし、戦争の絆やろうぜ、おれ格闘で特攻するから」
こいつが三善 琢磨、通称突撃野郎A。
口癖は「何かすりゃなんとかなるって!」
発言からわかるように思考回路が若干突撃系に向かってる、テストは前日に詰め込んで普通に七十点取っていく奴。
「また突撃かよ、よく飽きねえなお前、俺は近接だ、遊撃でもしてるわ」
こいつは前田 匠。
口癖は「一歩下がって考えろ」
通称忍び寄るクリーパー。某サンドボックスゲームの豚の失敗作じゃない。
なんでもこなす万能型、あえて言うならステルス能力が高い。
琢磨が引っ張るエンジンなら匠は舵取り。
ただ時々慌ててミスが連発したりする。
テストは二週間前に始めて平均点を取る。
「あんたらいつもそれ使ってるじゃない、あ、私は遠距離使うわ」
彼女はチームの紅一点、小林 絵美梨、
通称ネゴシエーター。
口癖は「それはそうだけど」
勉強はこいつに聞けば0点から赤点回避間違いなしのエリート、同時に合気道によるそれなりの反撃手段を持つから手を出すと大体痛い目にあう。
テストは一ヶ月前から始めてる、テストが近くなると教える機会が増えて自分が勉強できなくなるかららしい。
「俺は狙撃だ、援護するぜ」
俺は通称アルマ、名前は好きじゃない。
通称何でも屋。
口癖は「よく俺の前でそんなこと言えるな」
父親は自衛官、母親はエリートビジネスウーマン。
アルビノのせいで肌も髪も白く、目も赤いのに、父親譲りの頑丈さ、母親の【一回読み書き聞きをすれば確実に覚える脳】を持つ。
アルビノにしては紫外線、光は普通の人間と同じで一番不思議とされている、時々テレビ出演を依頼されるが全て断っている。
父親も母親も自衛官になるよう言いつけているから嫌いだ、だから、
俺の居場所はここしかない。
《あんたまだあのことで悩んでるの?》
絵美梨からボイスチャットが来る。
「あぁ……まだうるさい、親は諦めるってことを知らないらしい」
宛先を絵美梨に変更して伝える。
《大丈夫だって、自分の直感を信じろって私は何度も言ってるじゃない、親の言うことなんて鼻から無視すればいいのよ》
「それで簡単に解決できればな…」
《ほら、始まるわよ、通信戻しましょ》
それで絵美梨とのボイスチャットを閉じる
《おいおい、五番機なに考えてるんだ?自陣守ってるわけでもなく、タンク守ってるわけでもない》
《やべえ自軍拠点やられた!敵タンク狩始めるわ》
《敵拠点撃破!まずい敵に囲まれた!》
「敵タンク撃破!あ、やべ、撃った後だこれ」
《タンク再出撃、拠点はもらうわよ》
「最後の一撃は貰った!……あれ、最後だけ取られた……」
《あの五番機、勝手にやられてやがる!ふざけるんじゃない!》
「敵タンク撃破!少し勝ってる!下がれ!」
《ダメだ、囲まれた!》
《あー負けたな……》
「おいあの五番機被撃破数トップじゃん!あれ戦犯だな」
《次行こうぜ次》
(作者が体験したことを一部改変してあります)
「あー楽しかったな、なんだかんだいって」
琢磨がコーラを飲みながら言う。
「そうだな、よし、二年でも頑張ろうぜ、じゃあな、俺は爺さんの家にいかなならん、ここでお別れだ」
匠が自転車に乗って颯爽と帰っていった。
「私はそのまま帰るわ、じゃあまたfloorで」
「俺は親が来ることになってるからここで待ってる」
本当は違う。
もう長い間付き合ってるから俺が親を嫌っているのは全員が知っている事実だ。
「そうか、じゃあ、お互い違う学校でも頑張ろうぜ、また今度!」
そう琢磨が言って去っていった。
残されたのは俺一人。
「…………仕方ない、ゆっくり歩いて帰ろう」
アルビノの筈なのに父親の頑丈な遺伝子を引き継いだせいで日に当たってもガンができない。光も眩しいと思わない。おかげで俺は毎日朝日を浴びて起きることができるし、夕日を綺麗だと思うことができる。
「夕日が綺麗ね」
「そうだな……誰だお前!」
聞いたことのない声に思わず返事してしまった。隣に金髪の長い髪をした女性が立っていた。頭にはナイトキャップ?モブハット?をかぶっている。
「ご機嫌麗しゅう、今日は一段と夕日が綺麗ね」
八雲紫?何故?俺たちの世界では東方なんて創作でしかないのに……本当に存在するのか?
「貴方、何で紫がここにいるのか?幻想郷はただの御伽噺でしかないと思っていたのに、と考えてるわね、何も言わなくていいわ、私には貴方が考えていることがわかるのよ」
この時、地球で不可思議な事件が発生した。
一つは同じ姿、口調、服装の女性が同時に四ヶ所に出現したのだ。
ある人は信号待ちをしている横に現れ、
ある人は住宅街のど真ん中に現れ、
ある人は家の中に突然現れ、
ある人は空から降りてきた。
その女性は皆口を揃えてこう言った。
『貴方が見る数分先のことを見せてあげる』と。
ある人は目の前にいた人が轢かれ、車と壁の間に挟まれ、こちらに手を伸ばして息絶える光景。
ある人は突然目の前からやって来た人が目の前の人の首を切り、こちらも切ろうと息巻いている光景。
ある人は家に強盗団が押し入り、自分以外を殺していく光景。
ある人は工事現場の鉄鋼が目の前に降り注ぎ、目の前で鉄鋼が頭から刺さる光景。
そして全ての人がそれをさせまいと動きだした。
『今日五時二十五分ごろ、交差点にて歩行者一人を巻き込む交通事故が発生しました、
この事故により運転手と同乗者が腕や足の骨を折るなどして重症。
巻き込まれた歩行者の一人が意識不明の重体で、搬送先の病院で死亡が確認されました。
運転手は現在錯乱状態にあり、警察の捜査は難航しています』
『今日五時未明、住宅街にて歩行者を狙う殺人事件が起きました。
これにより一人が心臓を刺され死亡、二人が腹を刺される等され重症、五人が腕を切るなどして軽症を負いました。
犯人は心神喪失にあり、警察は調べを…」
『今日未明、住宅地にて強盗殺人事件が発生しました、被害者は前田健二さんで、家の金品五十万円相当を盗んだあと、家に帰ってきた前田匠さんを殺害、そのまま逃走しましたが、逮捕されました、
犯人によると「家には最初健二さんが寝ていたので、盗んでそのまま逃げようとしたが帰ってきてしまった、殺害は計画に入っていなかった」と供述しており、警察は強盗殺人の疑いで捜査を続け…』
『本日、ビル建設現場で事故が発生し、現場は騒然としました。
建設中、鉄鋼を吊り下げていたワイヤー一本が切れ、鉄鋼が歩道に落下、この事故により一人が鉄鋼の下敷きになり、意識不明の重体で、病院に搬送されましたが、間も無く死亡が確認されました。
ワイヤーは新品で切れる心配はなかったと現場監督は語っています。
この事故により警察は監督を業務上過失致死の疑いで調べを…』