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願いごとは慎重に......  作者: 蒼月
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 お気に入り登録をしてくれた皆様方、ありがとうございます! 


 これからもがんばって更新の方をして行きますんで、


 こんな私を見捨てないで最後までお付き合い下さい。


 


 パンを咥えながら屋上のドアを開け定位置となっているスペースまで歩くと一度口からパンを出し大きく背伸びをする。


「んーー。やっぱ、屋上はいいなぁ。ぽかぽかしてて、気持ちがいい。」


 あたしはごろんと仰向けに寝転がり、目を瞑りながらもぐもぐとパンを齧る。ふと、視線を感じて目を開けるとこっちを見ていたらしい懸が、慌てて顔をそらすのが見えた。


「ん? どうした懸?」


「ねぇ愁は、どうして僕と友達になってくれたの?」

 

 顔をそらしたまま懸は隣に座り込む。胡坐ではなくなぜか体育座りで。


「なに言ってんだよ懸。自分で言って来たんじゃないか。へんなヤツだな。」


 最後の欠片のパンを口に放り込むとイチゴ・オレで流し込む。全くなに言ってんだか・・・ってあれ? いま吃音じゃなく普通に喋ってなかった? 腑に落ちずに懸に顔をむけるとジッとこちらを見る目と視線がぶつかった。途端の背中に走る悪寒・・・。な、なんかいきなりフインキが変わった?! 


 髪を崩し眼鏡を外したその視線をあたしに向けてくる。その視線はひどく妖艶で・・・・


「ん?! ・・・んんッ!?」


 今しがたの自分の状況が分析ずに呆ける愁。なんと、酷く淫らな口元から赤い舌を覗かせ、懸がペロリと愁の唇をなぞったのだ。妖艶な仕草でジリジリと愁に近づく懸。それに対して必死に後退して行く愁。


「な、何すんだよ?! 懸!」


「何って? 口を舐めただけだよ? それに―――――」


「それに・・・?」


「俺はかけるじゃなく、けん――――だよ。」


 は? ふ、双子?! いや、兄弟はいないって言ってたし、いったい全体どう言う意味だ?! 


「・・俺はね懸の中のもうひとつの人格なんだよ。引っ込み思案の懸が思い描いた自分・・・。」


 クスクスと笑いながら覆いかぶさるようして懸は顔を近づける。


「ねぇ、キスしよう?」


 キ、キス?! ちょ、ちょっと待って、男同士でキスなんてもう勘弁してッ! 段々近づく懸の顔にパニックになりながら回避する方法を探していたが見つからず、あと少しで唇が重なる所まで来た時、“

ゴンッ”と、何かが打つかった音が響いた。何の事は無い。あたしが思い切り懸の額目掛けて頭突きをしたのだ。但し手かげんなどする余裕も無く・・・だ。


 当然の如く、愁の上には意識を失くしてしまった懸が倒れこんでしまっている。――やっぱり、担いで行くしかないかなぁ。ひとつ溜め息を付くとあたしは倒れこんでしまった懸を俵の様に肩に担ぎ上げて屋上を後にした。


 ぶらぶらと保健室を目指して歩いていた愁は、不意に誰かの声がして足を止める。けど周りを見ても誰もいない。歩き出そうと足を踏み出した時、再びその声を聞いた。しかしやはり周りには誰も居ない。という事はどこかの空き教室からという事になる。


 懸を担いだままウロウロと空き教室の中を確かめていた時もう一度声を聞いた。必死に押し殺したような声を――


 ひとつの教室の前でそっとドアに近づき聞き耳を立てる。


 「・・あん・・ん・・んん・・・っんんん・・・・」


 「・・くっ・・・はぁ・はぁ・・・・・くっ・・・」


 ま、まさか?! ここって男子校だよね?! そうだよね!?


 あまりの事に動転したあたしはひとり質疑をした挙句、担いでいた懸を廊下に落としてしまった。当然、衝撃で懸は目を覚まし、教室の中に居るであろう人物たちは慌てふためいた。


 や、やばい・・・ここから早く離れないと。なんでこんな所に居るのか分かっていないだろう懸を引っ張り起こして、その場を後にしようとする愁。そんな愁の努力も虚しく懸が愁の名を呼んだ。そしてその場は沈黙に包まれる。そしてその気まずい沈黙が続くなか、それを破ったのはやはり懸だった。


「・・ねぇ、愁。・・僕・・・なんでこ・・んな所に・・・居るだろう・・・?」


 可愛らしく首を傾げる懸に名を呼ばれ、愁は自分たちの存在がドアの向こう側に知られてしまった、と諦めるしかなかった。


「・・・・屋上で転んで気を失ってたから保健室に連れて行くとこだったんだよ。」


「・・そうなんだ。・・迷惑・・かけて・・ごめん。」


「別にいいさ。」


 そもそも私が頭突きしたんだから、しかもここでも廊下に落としてるし。気まずい空気が漂う廊下を懸と共に歩くが背中にビシビシと突き刺さるほどの視線を感じる。


 痛い。視線が突き刺さって痛すぎる。余りの痛さに血が出てるんじゃないかと疑いたくなるよ。まったくホントにもう。


「・・・どこか痛むの?」


 懸に問われ声が漏れていた事に気づき、“何でもない”と頭を振ってみせるがそれでも先ほどの出来事が頭から中々離れない。にしてもホントにあぁ云う事ってあるんだねぇ。ケータイ小説や本の中だけだと思っていたよ。



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