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料理をある程度取り分けた愁が空いている椅子へと座って黙々と食べ始めてから少し経った頃、マジメを絵に描いたような生徒が声をかけてきた。
うわー、すっごい髪の毛。しかもビン底眼鏡だよ。などと思いながらも愁は軽く肯く。
「・・僕・・愁くんと同じクラスの四乃宮懸って言うんだ。」
俯きながら小声で自己紹介をする懸。――懸・・懸・・・どっかで聞いたような・・。首を捻りつつ考えていたが、ふと何かを思い出したのか愁は懸の顔を見た。
「ひっよとして主席で合格したっていう?」
「うん、そう・・・それで何だけど・・僕と友達に・・なってくれない・・・?」
恐る恐る聞いてくる懸になんかこいつ捨て猫みたいだな・・・なんて思いながら接していたら、いつの間にか二つ返事で友達になることを了解していた。
拝啓、天国にいる母さんと父さん。昨日早速友達ができました。ちょっと引っ込み事案ですが、根はいいやつです。勉強は出来るようですが、運動は苦手のようです。ちなみにあたしとは正反対の成績です。
「――懸、昼めしどうする?」
「・・僕・・パンだからどこかその辺で食べようかと・・・・。」
「そうか、じゃあオレもパンにするから売店付き合ってくれ。」
その態度に慣れてしまった愁はニカッと笑うがそれとは対照的に黙ったまま何度も肯く懸。二人は教室を出ると並んで売店を目指した。
売店を目指し廊下を歩いているとこれまたいつもの様に周りのヤツラがちらちらこちらを見る。その視線に顔を向けると真っ赤になったり、急いで視線をそらしたり、はたはケータイで写真を撮られる始末。
この男の姿でモテても嬉しく無いんですけどッ! むしろ悪寒がして来るんですけどッ!!
「見里さぁん、チョココロネとイチゴオレ、頂戴。」
「おや、愁ちゃん、今日はパンかい?」
やっとこさっとこ着いた売店では里見さんが忙しなく動きながらあたしに微笑み掛ける。
「ん、そう。だから早く頂戴。」
『分かった分かった』と肯きながら袋にパンと飲物、それとサラダまで入れる見里に声をかけようとしたがすかさず言い聞かせるように怒られた。
「だめだよ愁ちゃん、野菜も食べないと。」
そんな里見に何も言えなくなってしまう。昔からそうだった。何だかんだで気が付くと愁は残した野菜などを食べさせられている。そんなことがよくあったのだ。
にしても祖父ちゃんに続いて、見里さんを見つけたときは思わず素が出てしまうとこだった。懸とともに初めて売店に行った日――その売店に見里さんが居て思わず声が出そうになった。懸命に自分を取り戻そうとしていた私に見里さんはあっけらかんとした顔で、『あら、愁ちゃん』とあたしの名を呼んだ。小さい頃からのあだ名で。
当然周りに居るやつ等はあたしを見る。そんな好機の目に曝されながら、いたって平気を装い『知り合い』と一言だけ述べると再会もそこそこにその場を離れた。懸にだけは取り合えず『昔、世話になった家の家政婦さん』と話した。