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拝啓、天国の母さん父さん、今日は待ちに待った入学式です。最初、志望校を男子校に変えられたとき、あまりの事に目眩がし倒れそうになりました。いやそれだけではなく、よっぽど母さんたちの元へ送ってやろうかと思いました。ただ、まだ犯罪者になりたくない為だけに思いとどまっただけです。そしてその学校に寮が有ると知って、ここから離れられる事に非常に安堵しました。これでこの実験台にされる事から逃れられると、なのにこれはあんまりです。
なんで・・なんで・・こんな所に祖父ちゃんがいるんですか?! なんか若返ってますけど?! なんで? なんで?!
「――新しく赴任してきました、御厨匤です。担当は科学になります。主に受け持つ学年は1年になりますので、よろしくお願いしますね。」
目の前の壇上にいるのは紛れもなく2日前に別れた祖父ちゃん・・・・。まぁ多少若返ってはいるが、以前アルバムで見せてもらった顔と同じだ。
「それと、新入生及び上級生の皆さん、1年A組の御厨愁は私の弟なんで手は出さないで下さいね。」
最後に爆弾発言をしやがった――――ッ!?
差し詰め、入学式も無事(?)に済んだので寮に向かった。着いた寮は寮とは言えずマンションのような概観に1DKのような部屋だった。思わずここほんとに寮? って自分でボケて突っ込んじゃいそうになったがまあいいや。どんな部屋だって相部屋じゃなければ別にいい。バレるより断然いい。部屋の中に乱雑に置かれたダンボールを片付けつつ、明日からの学校生活を考える。なぜ、祖父ちゃんが若返っているのか、とかこの際無視して。
黙々と作業をしていたが不意にドアがノックされ、荷物を解く手を止めて立ち上がる。
いったい誰だれだと思いながらドアを開けると目の前に立て居るのはメガネを掛けたイケメン。ただし黒髪の上、所々に銀のメッシュを入れている。なんだ? 不良なのか? そう思っていたら、
「――やあ、僕はこの1号棟の寮長で、名前は村守大樹。ちなみに2年C組だよ。」
自己紹介が始まった。なんだ不良じゃなくて寮長か。と、心もとテンションが下がったような気がするのは気のせいだろう・・・。
「――俺は御厨愁です。で、先パイ。用件は何ですか?」
「ああ、夕食が早まるからその知らせにね。」
「ああ、そうなんですか、分かりました。で、どれ位早まったんですか?」
「18:30からだよ。場所は分かるね?」
「あ、はい大丈夫です。じゃあまだ荷物が有るんで。」
そう言いながらあたしはドアを閉めようとした。そう、ドアを閉めようとしたのに足をドアの間に突っ込まれたッ!! あんたは、悪徳セールスマンか?! なんて心の中で突っ込みを入れていたら
「ねぇ君は、どっちなんだい?」
さっぱり、全然、全く持って的を得ない言葉が降って来たが、意味が分からず顔を顰める。そんなあたし顎が突然掴まれ、クイッと上に持ち上げられる。
「女みたいにキレイな肌してるよね、君って。」
再び降って来た言葉に今度は大体察しがついた。って言うかなんか危険なフラグが起ちつつあるんですけど・・・・。
「――先輩、俺そっちの趣味ないんで、やめて貰えます?」
ゆっくりと近づいてくる大樹の顔に冷めた視線を向けながら言葉を口にした愁。それに対して大樹は一旦止めたが、再び顔を近づけ小さい声で囁く。
「そう? 僕は・・・両刀だよ。」
啄ばむように何度かキスをすると満足したのか大樹は足を引き抜きその場を離れて行った。
基本コメディなのですがたまに変になるかもしれません。最後までよろしくお付き合いの程を・・・・。