転生しても必ず君を見つけ出す 〜愛を誓った姫はギャルになってました〜
「はぁ……はぁ……生まれ変わっても、またあなたと出会えるかな……」
薄れゆく意識の中、女は震える手を男の頬に添えた。
「姫、私は何度でも必ずあなたを見つけ出します」
男は涙を流しながら誓う。
「……よろしくね……」
女の血のついた手が、男の頬からずるりと落ちた。
「姫……姫ーーーーーー!!!!!」
男の悲痛な叫びが戦場に響き渡る。
そして二人は死別した。
永遠の愛を誓いながら。
⸻
それから千年後、
渋谷のカフェで、向かい合う男女が2人。
「ふーん、で?」
女はストローをくわえながら言った。
「あんたは前世の私のことが好きだってこと?」
高圧的に睨みつけられ、俺は姿勢を正した。
「あ、いや、えっと、はい、そういうことになりますね……」
「いや知らんし」
即答だった。
顔が引きつったのが自分でもわかった。
「まず100歩譲ってキモい前世の話信じたとしても、前世とかあたし覚えてねーし。それ結局他人だから」
「え、えー……」
口角が強張る感覚があった。
想定していた反応と違いすぎる。
もっとこう、
『あなた……もしかして、あの時の……?』
みたいな展開を期待していた。
「まじ仲良くないやつの恋愛相談聞いてる気分だったわ。つか妄想すごいね」
ガツンと頭に衝撃が走る。
顔がテーブルをつきそうなほど落ち込んでしまった。
「いや……え、本当に覚えてないんですか」
「……ハァ?」
女の眉間にしわが寄る。
冷めた目で見下ろされ、身体がキュッと縮こまった。
俺はなんでこんなに詰められてるんだろう…と、今にも泣いてしまいそうだ。
「やば……覚えてないって言ってんじゃん」
「……」
ガーンという音が鳴り響いたような気がした。
俺はテーブルに視線を落とす。
「てか話終わり?」
女はそう言って席を立った。
「ほんと急に女の腕掴むのやめなよ。次やったら警察だからね」
「あ、ま、まって!!」
俺は慌てて立ち上がる。
周囲の客がちらりとこちらを見た。
すると女の目がみるみる冷えていって、ついにはゴミを見るような目になっていた。
「……あんたさ」
「は、はい」
「自分がガチ目のヤバいやつだって自覚しなよ」
グサッと言葉の刃が心臓に突き刺さる。
もしかするともう泣いてるかもしれない。
「ここはあんたが払いな」
トドメだった。
女はそのまま店を出ていく。
ポツンとその場に残され、俺は力無く座り込んだ。
「あああ……」
目頭が熱くなる。なんだか周囲の視線も痛い。
店員は静かに伝票を置いた。
現実は残酷だった。
⸻
「……失敗した」
俺――小林刃は公園のベンチでうなだれていた。
前世の記憶が戻ったのは6歳だった。
そして十年かけて探し続けた。やっと見つけた。
前世で命を懸けて守った姫。その生まれ変わり。
姫野真央。
しかし。
「警察って言われた……」
前世では国一番の忠臣だった。
現世では不審者扱いである。
「何が『必ず見つけ出します』だよ……」
自分で言った言葉を思い出してダメージを受ける。
「見つけ出した結果がこれか……」
泣きそうだった。
ていうか泣いていた。
⸻
公園のベンチで、深いため息をつく。
「もう一回話しかけたら通報されるかな……」
刃は真剣に悩んでいた。
千年前は戦場で敵軍を先陣切って相手にしていた男である。
しかし今は、LINE交換すらできていない。
「前世の敵将より難易度高いんだけど……」
遠い目をした。
運命の再会。
感動の恋愛。
そんなものは夢のまた夢だった。
なにせ姫は現在、
「前世?知らん」
の一言で片付けるギャルだったのだから。
『姫、私は何度でもあなたを見つけ出します』
千年前の誓い。
その続きは、まず連絡先交換から始めなければならなかった。
⸻
一方その頃、帰宅中の真央。
「あーまじで怖かった。やばすぎ」
スマホを見ながら歩いていると、ズキリと頭が痛んだ。
「いてっ」
見たこともない景色が一瞬だけ脳裏をよぎる。
燃える城。
血の匂い。
誰かの泣き声。
そして。
必死に自分を抱きかかえる男。
「……何?」
真央は立ち止まる。
だが映像はすぐに消えた。
「寝不足かな」
首を振る。
そして何事もなかったように歩き出した。




