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中編


短めです。


 

 一方で。

 ローズリンデが断罪劇をひっくり返していた頃、彼女を陰から狙う人物がいた。


(冗談ではない、こんな小娘にひっくり返されてたまるか…!何がギフトだ!殺さない程度に痛めつけて意識を奪うか、隷従(れいじゅう)をかけるかすれば―――!)


 ジェイコブ・ベルダ。

 フォンベルク国正妃デボラの兄であり、ベルダ公爵家現当主である人物。四十代後半で神経質そうな見た目、顔はそれなりに整っている為若干若く見える。

 彼に隷従のスキルは無いが、人や物の能力を少し増幅させる力があった。そのスキルを使って弱い隷従効果の魔導具を強化し、ローズリンデに使用してロックを解除させればいい、とそう考えた。



「ベルダ公爵。折角の娘の晴れ舞台、邪魔はさせんぞ?」

「……っ?!」



 エマーソン侯爵はベルダ公爵の後からそっと近付いて耳打ちした。



「娘を攻撃して口止めとは―――余程後ろ暗い所があるという事か」

「……っ……!…、……!」



 ベルダ公爵は振り返ることも言葉を発する事もできず、空気を漏らすだけ。背後の人物が何をしようとしているか確認しようと顔だけでも向けようとするが、動くのは目のみ。まるで全身を何かで固められているかのような圧迫感は、呼吸までも止められてしまいそうだった。



「ああ、そんなに怯えずとも大丈夫だ。ここで殺したりはしない。娘にケリを付けさせると決めたし、な。そこの老害共々、黙って見ていてもらおう。お前達はやり過ぎた」



 どうやら近くに居る前ベルダ公爵も同じ目に遭っているのか、顔面蒼白で今にも倒れそうな様子が視界の端に映る。



「まぁゆっくり見物しようじゃないか。正直、胸糞悪すぎて今すぐ息の根を止めたいところだが、簡単に死ぬのは無責任というものだろう?しっかり恐怖を味わって絶望してから終わらせてやる。でなければあの罪の子は―――死んでも救われん」

 


 貴様らの命で償えるものでもないがな、と顔を顰める侯爵。

 彼の持つスキル、影縫い―――

 それは、任意の対象の行動を縛り付ける、つまり行動不能にするもの。光によって作られた影を縫い付けるという意味ではない。己の影を自在に操り、複数の対象に危害を加えられる、より残酷で残忍なスキル。その特性故、極限られた身内のみが知るものだ。



「娘のスキルは私に比べれば平和的だからな。幕引きにはそれが良かろう」



 辛うじて呼吸と目を動かすことだけが可能な公爵達だが、その心はもはや怒りより恐怖で占められている。


 

「ローズリンデ・エマーソンの一世一代の大舞台、か」



 己の気持ちより国の益を優先する娘は、相当我慢をしてきた筈で、今、水を得た魚のように生き生きと輝いている。

 第二王子ヒューバートの出生の秘密を知り、その真実に涙したローズリンデ。そうして、相当悩んだ末に更生の道を選択させようと奮闘したのは娘で、結果、裏切られ、彼に引導を渡す事になったのもまた娘。

 


「しかし私の娘に隷従の魔導具を使おうとするとは…こんな物まで所持していたとはな。罪状に加えておいてやろう」



 精神に影響を与える魔導具等の所持・使用は重罪である。

 ベルダ公爵家は叩けば叩くほど埃が出てきそうだ。



(すまんな、ローズリンデ。せめてこれからはお前の力が政治の駆け引きに利用されないよう全力で守ってやるからな)



 そうして侯爵は、ローズリンデが最後までその任を終えられるよう静かに見守るのだった。



お父さんだけで話が書けそうな設定…

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