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チュートリアル はじめてのおしごと

大量の箱がそこにあった。

「こんなに発注して売れるんだろうな」

「売れない」

「売れないと思って何故こんなにある」

「私が発注数を間違えたからです」

「そう発注ミスだ。10箱を1000箱と書いてあるな。

これは生ものだ、返品が効かない、売りさばくしかない」

ポーションは消費期限がある。

だから早めに売らなければならない。

「お前はなんだ、レジに立てば会計をミスり、

品出しをやらせれば商品を床にばらまいて、

事務をやれば発注数を間違える。

面接がうまくいかないからうちで働かしたらこれだ」

目の前にいる人間は父親。

「いちろうはうまくやってるのにお前ときたら……、情けない」

兄と常に比べられる毎日、実家の仕事すらクビになったのは言うまでもない。




知らない天井がそこにあった。

「起きたかい」

声がするところに振り向く。男がいた。

今度は変な不快感を感じない。気がする。

多少は怠いが。薬物中毒のそれではない……


「ここは?」

男に問いかける。

「キチジョー、ただの村だよ、そして俺はヒトシ」

ヒトシは答えた。

俺が森の中でぶっ倒れてたので家まで運んだことを

俺が船から落ちて海に流されてると言ったら彼は驚いた。

何故海に落ちた人間が森にいるのか、彼も俺もわからない。

俺は自分が勇者であることを隠しつつ、蒸発した家族を探す旅をしていると伝えた。

「薬中だったときのリハビリに協力してくれた凉太…俺の友人は知らないか?」

「知らない、見つけたのはお前、じろう一人だった」


薬中だったときと比べ、元気だった俺は、起き上がるなりキチジョーを歩き回ることにした。

そのとき、ヒトシが案内してくれたのだが。

「俺さあ、就活失敗してさ、今ニートなんだよね」

「マジか、俺もニート…、になるのかな一応」

クラスは魔法戦士になっているが、定職には就いていない訳だ。

ということは金がない。旅費がない。

「ギルドに冒険者登録すれば金を得る手段が手に入るぞ」

ヒトシは俺にそう言った。

「親切にどうも、ただ、何故そんなことを教えてくれるんだ?」

「本当は定職に就いた方が安全だからだよ……」

夢の内容を思い出して泣きたくなった。


俺たちはギルドに冒険者登録をした。

カードに名前等を登録すれば任意の仕事を受け持つことができる。

まあ、この辺は特に説明は不要として、登録者カードは簡易的な身分証明書なる。

それにモンスターを倒した時の剥ぎ取り素材が金銭と交換になる。

モンスターの討伐依頼が無くても倒したら金が手に入るシステムだ。

「これで旅の路銀で困ることはなくなる…はず」

「実際、モンスター倒せないと金が手に入らないけどな」

不安なヒトシに俺は答える。

そうだ。俺たちはニュービーだ。

だからまともに戦えるか微妙だったりする。

「採集クエがあるから討伐がすべてってわけじゃないし」

そう言いながらヒトシはクエストボードに貼られたカードをのぞき込む。

あまり本筋から離れたことをしたい訳じゃないんだが……

「これ、難易度高いクエストしか募集して無くないか?」

リビングメイル討伐

ミノタウロス討伐

ゴーレム討伐

等々俺たちには無理なクエストだ。

「簡単なクエストは既にとられてて、難しい奴は残ってるみたいだ」

「おい、ゴブリンの掃討ってのがあるぞ」

「掃討ってことは皆殺しだろ…、割に合うのかこれ?」

具体的な数は書いていない。

ヤバい数字の可能性がある訳だ。50とか100とか。

とにかく、残ってるクエストボードは難易度が高いのしかない。

チェックした感じだとそうだし、受付に訪ねてもそんな感じだった。

「初心者に渡せそうな奴は今存在しない」

そんな旨のことを言われた。

そんな矢先。

「なら、俺の依頼を受けちゃくれないか?」


筋肉質の男に話しかけられる俺たち。

こうして俺たちのクエストは始まった。


ヒボリの森にある眠り草がほしいらしい。

ヒボリの森では妖精がうろうろいたみたいだが、

最近は魔物が多く、一人ではキツいそうだ。

「から、空手やってんだけどさ、やっぱり一人じゃキツいんだよねー、仲間がほしかったわけなのよ」

彼はコウジと言い、空手が得意らしい。

「空手、素手で戦うの、キツく無いですか」

「貴重な戦闘経験者」

俺の感想に続き、ヒトシが呟く。

「この辺の敵は簡単だけど、眠り草の近くにいる奴がやっかいなんですよー」

だから仲間がいて助かるわとコウジは言った。


まあ、戦闘は楽だった。

コウジは殴る。

ヒトシは魔法。

俺も魔法。

ヒトシは一応魔法使いのクラスになるらしい。

俺は単体攻撃魔法が得意でヒトシは全体攻撃魔法が得意。

彼がフレイムを使えるなら俺はファイアを使う。

俺が剣で斬りかかるなら彼はフラッシュを使って眩ませる。

戦闘で使える手段は、打撃か魔法か防御か撤退か

魔法と言っても支援か攻撃か回復か防御か

いろいろ手段が出てくる。

前衛のアタッカーはある意味シンプル楽かも知れない。キツいが。

逆に中途半端に何でもできる俺みたいな奴は支援か攻撃か悩んで判断が遅くなる傾向がある。

「回復呪文が使える奴がいるだけで助かりますよー、ほんと」

真理だ、薬草やポーションは持てる数が限られる。

魔法も回数が限られるが……

マンイーターにファイアを放つ。

マンイーターは燃えて灰になる。

とにかく、魔法は楽だ。

斬りかかるより、恐れが少ない。

「やりますねえ」

コウジは俺に向かってそう言った。


こうしているうちに、眠り草があるあたりまでたどり着いた。

コウジが身構える。

三体の獣が目の前に現れる。

「かまいたち、き来ますよ」

「三体いるから、一人じゃきついわけか」

コウジの言葉にヒトシは答える。

三体の獣は俺たちに襲いかかる!


コウジの攻撃、だがコウジは空ぶる。

一体にコウジは転ばされる。

俺はファイアを放つも躱され別の一体に切られる。

遅れてヒトシのフレイムが三体に放たれる。

だが、もう一体が何かを振りかける。

多分、粉タイプの回復薬だ。

フレイムで受けた3体のダメージは一瞬に消えた。


回復魔法を俺は掛けながら言った。

「こいつら……、連携するタイプなのか」

「ああ、だから一人じゃキツい、だから仲間を呼んだんだ」

俺の台詞にコウジは答える。

確かに回復されるとキツい。


この場合、やっぱりヒーラーを攻めるしかない訳だが、

ヒーラーを狙うと転ばされてから斬りかかってくる奴がいる。

どうやって戦い抜くか、俺たちは悩んだ。

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