アルティメッドブレード
「よくぞ来た勇者よ!早速、余の願いを聞いて貰えぬか?」
目の前にいる厳ついヒゲジジイは偉そうにそう言った。
実際偉いのである。王様だし。
しかし勇者?何のことだ?
「王様?俺氏は一介の村の道具屋の息子です。勇者なのではございません」
そしてニートの穀潰しです。とまでは言わなかった。
「いいや、信託の儀式によれば其方が、伝説の剣に選ばれた勇者と出たのじゃ」
そう言って、大勢の人間と共に説明を受ける俺。
何やらこの大仰な剣が勇者の剣で俺を示したそうな。
「これをつかい魔王を倒せ」
無茶言うな。
「王様、俺氏は戦いの素人です。そんな無茶を言われても……」
「太古の英雄譚では勇者に銅の剣と少ない賃金を渡して旅に出したという、わしらは良心的だと思うぞ」
そんなフィクションの話を出されても……
「それに心配するな、この薬を飲めば其方の力は覚醒される
経験はチートのパラメーターで補えるのじゃ」
チートとか言っちゃったよこの人……
「それにもう時間はない」
「何故です。国王」
「魔王は既にこの城に向かっておる。国の兵士を総動員しても滅びるじゃろうな」
詰んだ。現実は非情である。
「というわけでお主が最後の砦なのじゃ、ちなみに断ったら死刑じゃ、やってくれ」
ちっくしょお、ニートに戻りてえええええ
そうして、俺は魔王と対峙した。
伝説と言われた究極の剣、「アルティメッドブレード」を持って。
目の前に魔王がいる。
とてもヤバい威圧感だ。
「貴様が勇者か?」
目の前の魔王はそう言った。
「違う、俺はただのニートです。勇者なんかじゃ」
「勇者殿!其方の聖剣を持って魔王を討ち滅ぼすのじゃ!
やい魔王め!こんなところまでやってきおって、貴様なんぞ勇者殿の力で一撃必殺じゃあ!ざまあみろ」
城のテラスから国王は魔王に向かって叫んだ。
あのクソジジイ殺してやる。
「そうか、ならば貴様を倒さねば先に進めぬのだな」
そう言って魔王はマントをなびかせる。
「征け!」
背後にいた魔物の群れが俺に襲いかかる。
どう言う手はずでいく、切るか、突くか、守るか。
様子を見る暇も無く、吸血コウモリたちは容赦なく襲いかかってきた。
「いきなり襲いかかってくるんじゃねええええ!!!」
どうやらコマンド入力を受け付ける前に攻撃するタイプらしい。
「ちっくしょおおおおおおっ!」
俺は無我夢中にアルティメッドブレードを振り回す。
一体、また一体と一撃で葬り去る。
気がつけば、一体のコボルトを突き刺していた。
「強い……」
俺は感心した。
この剣、めちゃくちゃ強い。
戦いと呼べる物をしたことがないニートの俺が、英雄譚に出てくる主人公のように魔物を倒すのだ。
調子に乗るのはいうまでもなかった。
「往生せいやああああクソ魔王おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
剣を渾身の力で上から魔王に振り下ろさんとする!
だが
「この程度か…勇者よ」
あっさりと受け止められる。
「所詮、剣の力に溺れてるだけの人間か」
腹部に、背中に衝撃がくる。
苦しい、痛い。
そんな感情は後からきた。
そして、動けない。
魔王は俺を見下ろしていた。
「勇者よおおおお、死んでしまうとは情けないぞおおおおお、機会をやるからがんばれよおおおおお」
上からヤジを飛ばすクソジジイ、マジで殺してやる。
しかしヤバい。
血反吐を吐きそうな痛みで俺は、動けずにいた。
「ゆる、ゆるしてください。魔王様…、あなたの手下になるから許してください」
本当はばっくれて逃げたいけど動けないので命乞いをした。
「……ッチ」
ただ、魔王は虫けらを見るように舌打ちしてこちらを見下ろしただけだった。
「死ね」
魔王の放った魔力が、俺を貫いた。
「貫いたと思ったのだがな、何故貴様のような三下が生きている」
目の前の魔王は、俺の姿に驚愕?いや、感心していた。
俺は、アルティメッドブレードを構える。
「この手段は、使いたくなかった」
国王から渡された。アルティメッドブレードと共に渡された。チートアイテム。
覚醒薬……字面がヤバくてつかいたいと思わなかった。
だが、魔王の魔力に貫かれる瞬間、俺は覚醒薬をキメた!
体力が回復し、力と早さと頭の回転が非常にアガる。
「イマの俺に疲れなんか知らねえええええええ!!!」
射精の何倍は気持ちいいかなああああ、台詞が下品で口に出す気にはなれんがねええええええええ。
「下郎が」
「その下郎に蹂躙されるのは誰だあああああ!!」
アルティメッドブレードの一撃は魔王を容赦なく貫いた。
一撃必殺とはいかなかったか。
魔王は再び魔力を放つ。だが、俺はそれをアルティメッドブレードで打ち払い。再び魔王に一撃を食らわす。
「二撃決殺!」
魔王はよろめく、だが、魔王は起き上がり再び魔力を練り上げる。
「メギドバースト!!」
激しい轟音が爆発が、俺を襲う。
だが、覚醒薬の力で覚醒した俺にダメージはなかった。
魔王に最後の一撃を与えた。
「三度目の…、正直だ!」
俺は、魔王を倒したのだ。
「素晴らしい、素晴らしいぞ勇者よ!!」
テラスの上からのんきに叫ぶクソジジイ。
うるせえくたばれまじしね。
俺はテラスに向かい飛び上がろうとした。
だが、
足が動かなかった。
「どうやらアルティメッドブレードの効果が発動したようじゃな
確かにものすごい力を与えるが…、生命力を吸う」
マジか。
「まあ魔王は倒したし、平和になった。勇者も必要ないじゃろ
これで余を脅かす存在はいなくなるな」
ふざけるな。ころしてやる。このクソやろう。
「じゃが、勇者の存在は必要じゃ、魔王を倒した存在は他の国への抑止力となる。生かしておく必要はあるのー」
どうするつもりだ。
「まあええわ、とにかく今は問題を置いておいて、宴の準備じゃあああああ!!!!」
魔王を倒したことにより、この国はその夜盛大な宴が行われた。
そして俺は、薬漬にされ投獄されたのだ。