危険な面会
コツコツ……今日も変わらず白い鳥が窓の外から扉を叩いている。
いつもご苦労さん……今日は特別に。昨日茨木のお父さんからもらった弁当の中に入っていたフルーツを窓の縁に置いておいておいた。
「今回だけだよ……」
これで最後かもしれないし……
薄らと空から明かりが差し込んでいる。相変わらず空は綺麗だな。
今日は失敗せずに出来るといいな……
行き先は学校から遠く尚且つ見つかりにくい穴場スポットに決めていた。
30分ぐらい歩いて目的の場所にやってきた。
壁は剥がれ落ち、鉄筋はむき出しで残っている壁にはカラフルな落書きが沢山あり独特な雰囲気を醸し出している。当然、こんなところに電気が通っている訳もなく自分のスマホを懐中電灯がわりにして取り敢えず探索する。
探索した結果、この建物は5階と屋上がある。ただ、屋上に登る為階段は崩れ落ちていた。
飛び降りるなら5階の部屋にしようかな……ここからなら即死できるだろうし……
さてと、どこから……あのガラスが外れている窓が良さそうだな……。窓に足をかけ一応、人がいないかだけ確認して飛び降りようと……何故か壁際にロープがあった。そのロープの位置が中からでは確認できない位置にあり、巧妙に隠されていた。よく見るとそのロープは上からぶら下がっていた。
確か屋上に登る階段は落ちてた筈なのに……気になってそのロープを登ってみることに……
ロープを登ると不思議な雰囲気纏った女性が屋上から夜明け前の街を眺めていた。
恐る恐る近づいてみると向こうがこちらに気がつき振り返った。
「ん?こんな所に人が来るなんて珍しい……」
何かを書いていたのか鞄に仕舞い込んでいた……人が来た為か、急いで帰る出る準備をしていた。
「何か邪魔だったようですね。この景色楽しんでいって下さいね」
よく見ると同じ制服をきていたな……見たこと無いからきっと後輩だな
そこから見える景色は山の隙間から朝日の光が差し、眼下の街を照らしていた。
ここの景色って綺麗だね。こんな所で自殺するとあの子に迷惑がかかるな……
ん〜今行っても早く着きすぎるからもう少し眺めてようかな。
無機質な廊下を歩く……
すれ違う人達がこちらを驚いた様子で見てくる。そんなにいい歳したおじさんが見舞いの品持って歩くのがおかしいのか?
やっと目的の部屋に着いた……コンコン
「よっ元気にしてたか。これ果物の詰め合わせ元気になったら食べて」
女探偵の後輩として前回、背中をナイフで刺されてしまった。現在病院で治療中の元にわざわざ先輩の上司である俺が見舞いにやってきたのであった。
「あっ田口さんわざわざありがとうございます。その果物の盛り合わせ大切に食べますね」
「そういえば、あいつはどこに行ったの」
「先輩ですか?先輩なら面会に行きましたよ。詳しく聞くことがあるとか無いとかで……」
「ちっ入れ違いになったか……教えてくれてありがとな。ゆっくり休んで早く復帰しろよ」
頭をポリポリ叩きながら部屋を出て行った。何か聞きたい事でもあったのだろうか?
あれから病院に警察が来ていろいろと聞かれ、帰ったのは深夜遅く……疲れている体に鞭を打ち車を走らせている。
目的の場所に着き中に入る。
中は白い空間にかなり厚みのあるガラス一枚で敷居られている。
何度来てもここは心が落ち着かない……しばらく待っていると向こうの扉が開き今日のお相手が入ってきた。
「ほら入れ」
髪を丸くされた男の人が目の前にいる。こんな壁がなければ思いっきり殴ってやりたいがグッと堪える。
「あんたが俺をここに呼び出して何が聞きたいんだ。探偵さんよ。もしかして一緒に居た奴は死んだか?あんたを庇ったばっかりによ」
減らず口はその辺にしてくれ……怒りが沸沸と湧き上がるが冷静に装って質問する。
「君に聞きたい事があってね。山田柑奈についてなんだけど……」
彼の表情がだんだんと青ざめていく……
「……この件には柑奈は……関係ないんだ。あいつが……全部あいつが悪いんだ」
「あいつって誰さね。この事件に黒幕がいるっていうのさね」
「言えない……言えないんだ……バレたら俺だけじゃない……柑奈も……危なく」
その後、ひどく取り乱してしまい面会時間は終了してしまった。
いい情報は全然得られなかったさね。でも……山田柑奈が関わって無いとするといったい誰が……
真相は闇の中さね……どうしたものかね〜
やっぱり、あの学校は何かが蠢いていつのさね。