夜露死苦
〜放課後〜
茨木と一緒に桔梗の練習を見に体育館に来ていた。
やはり、大会前ということもあり練習に励んでいた。
桔梗は背が他よりも高いため鈴に見つけられた。試合に向けて先輩たちと3対3のゲーム形式でやっていた。
こっちが見ている事に気づいたのか先輩を抜き去り華麗にダンクした。
こっちが見ている事に気づいたのか手を振ってきた。
「あんな澄ました顔でアグレッシブな事出来るなんて」
「桔梗くんって本当に素敵だよね」
「あんな人と結婚できたらな」
若干黄色い声援にイラッとした。
「やっぱりバスケで背が高いっていいんだね」
「背が高いだけじゃプロチームからスカウトされないよ。先輩を抜いた時も何回か左右に揺さぶってたし」
「ふ〜ん。技術もあるんだ」
茨木がだんだんと暇そうにしてきている。早めに体育館を出るか……
「そういえばさ、山田の彼氏が警察に逮捕されたらしいよ」
「やっぱりあの人は何かやらかすと思ってたんだよね」
気になる話題を言っていたが茨木が帰りたそうにしていたので体育館を後にした。
体育館の中は冷房設備があった為、涼しかったが午前中に雨が降ったせいか……
外は蒸し暑さのせいで全身の穴という穴から汗が噴き出してくる。
「薊……暑いから自販機でジュースか何か買ってから帰ろうよ」
自販機でジュースを買って涼んでいると……
どこからか1・2・3とむさ苦しい声が響いてくる。
きっと野球部の部員たちが立浪を先頭にグラウンドの周りを足並み揃えて走っているんだろうな。
こんなむさ苦しいなかでよく出来るな……
「少し休憩できたから帰ろ」
茨木が手を引っ張って催促してくる。
もう少し休憩したいって思っていたけど……行くか。
校舎を少し出たあたりで
「そういえば亮平に挨拶しなくて良かったの」
立浪の練習を見たいって顔に出てたかな?多分顧問の先生が近くにいたと思うから挨拶するのは辞めたけど……
「今日は夕日が綺麗だね」
曇り空の間から陽の光が差し込み幻想的な雰囲気が醸し出されていた。
確かに綺麗だね。最近夕日見たのはいつぶりだろう?最近は早く帰って家で迷惑の掛からない自殺のやり方とか調べてたし……たまには遅く帰るのも悪くないかもしれないな
気づけばあたりが真っ暗になり、今にもキレそうな蛍光灯がチカチカしていた。
「朱音、こんな時間までどこ行ってたんだ」
その声の主は発言とは想像とは掛け離れた。ガタイの良いスキンヘットの男性が暗闇から出てきた。
相変わらず、茨木の父親は堅気には見えないな……
「親父……人前に出るのはあれ程やめろって何度も言ってるだろ」
「ごめんよ……つい帰ってくるのが遅くて心配になっちゃってさ。おや?薊君じゃないか。随分大きくなったね。良かったら夜も遅いし家で食べて帰るかい?」
「そんな、お父さん大丈夫ですよ。僕の分まで作るなんて手間もかかると思いますし」
断ろうとすると茨木が悲しそうな顔でこっちを見てくる。
「大丈夫だよ。家は大量に作るから一人分増えようと全然構わないから」
茨木もそうだぞ‼︎っと言わんばかりにこちらを見てくる。
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」
そう言うと茨木が「そう言う事なら早く家に入ろ」っと右腕を強引に引っ張ってくる。
痛た……あんまり強く引っ張って欲しくないに
茨木の家に入ると玄関には大きな木の根が飾られていた。それをまじまじと見ていると……
「前来たときは来た時はこれなかったよね。親父が目隠しにって買ってきたんだよ」
恥ずかしそうに話してくれた。
こんな物いったいどこに売ってるんだろ?
「今からご飯作るから2人で何かしといて」
茨木父はTシャツの上にエプロンを着て冷蔵庫から食材を取り出していた。暗くてよくわからなかったが腕にはタトゥーが手首まで入っていた。前にあった時よりも増えたんじゃないか?
「あっ薊、今日やった化学の授業ノート見せて」
起きてたはずなのにノートは取ってなかったのか……
そういえば、人が作った料理を食べるなんていつぶりだろ……ずっとコンビニ弁当やインスタント食品ばっかりだったからな。
そんな事を考えている間に続々と料理が食卓の上に並んできた。
「朱音、ご飯できたから手を洗っておいで」
「はーい。薊行こ」
また手を引かれて洗面所に案内された。
手を洗い終わって席に着くと大皿に盛られた料理が食卓に敷き詰められていた。
こうやって晩ご飯を誰かと一緒に食べるなんて……その時飲んだ味噌汁は全身が温まったような感覚になった。
ご飯も食べ終え帰る身支度をしていた。
「薊君、もし良かったら余り物詰めただけ、だけど朝にでも食べて」
そこまでしてくれなくてもいいのに……
「どの料理も大変美味しかったです。今日はありがとうございました」
「何かあったら家に来てくれていんだよ。いつでも待ってるから」
ひと時ではあったか温かい時間を過ごせて良かったな。