正当防衛
ビクッ……窓際から初めて聞く声が聞こえてきた。
声のするほうに振り向くと季節外れのロングコートに髪の毛は金髪に染め……学校関係者とは程遠い格好をしていた。
「なんだい?物珍しそうにジロジロ見て。そんなに興味があるのさね」
どちら様ですか?
「そんなに私の事が知りたいお年頃なんさね……ん〜私はただの保護者さね」
掴み所のない曖昧な返答が返ってきた。
ただの保護者?
あまり探りを入れると何かよくない予感がしたので深く追求しない事にした。
「まあ、また近いうちに会える様な気がする予感がするさね。白石薊くんもそっちのお嬢ちゃんの様に頑張って終わらす事さね」
視線の先には茨木がいた。茨木は敵意むき出しでこちらを睨んでいた。
初対面の人にガンを飛ばすのはどうかと思うけど……
茨木がこちらを見ているのに気づいたのか前を向いてしまった。
「ふふ、あのお嬢ちゃんを大切にすることさね」
振り返るともうそこには居らず、廊下からヒールのかかとが地面に当たる音が聞こえてくるだけだった。
なんで名前知ってたのかが不思議だったが、この時は気にも留めなかった。
―あいつが警察関係者……?そうは見えなかったけど一応、注意しとかないと―
遅い……16時に集合って言ってあったのに遅すぎる。
もうコーヒーを3杯とロールケーキを2つ食べれ終えるぐらいだっていうのに……ここに会計はあいつ持ちだな。
すると、慌てた様子で後輩が入ってきた。
お前さん、どこで油売ってたさね。1時間も遅刻して……
「先輩……どこで待ち合わせるか言ってくれなかったじゃないですか。学校中探しまったんですから……先生に聞いたら前のカフェでお茶してるっていうから慌ててきたんですよ」
あ〜〜そういえば時間だけで場所は伝え忘れていたような……
仕方がない。会計は自分で払うか
それは悪い事をしたさね。さっ探しに行くよ。
机に置いてあった伝票取り席をたった。
「え……ちょっと先輩、一息つかせてください」
そんな時間はないさね。こっちは時間が押してるんだよ。早く行かないと話すら聞けない事になるさね。
「そ、そんな…」
ガックリしていたが仕方がない。もしも、次の事件が起こるような事になれば……
とりあえず、山田柑奈の家の周辺で張り込んだか見つけることはできなかった。
「もしかしたら。もう家の中にいるんじゃないですか?今日のところは一旦引きましょうよ」
彼女は素行が悪いからこの時間だとまだ家にはいないさね
あれからずいぶん探しまわったが発見する事ができなかった。
そろそろ一息つかないと後輩が死にそうだな。
自販機の前で買ったコーヒーを飲みながら今後の予定について話し合う事にした。
一息ついてていると外灯の明かりの中からガラの悪そうな3人組の男が出てきた
「健さんあいつらすか?姉さんが言ってた男女の2人組って」
「君たち僕らに何か用かな」
後輩が何も考えずに3人組の方に近づいて行った。
すると、ひょろひょろっとした男がいきなり殴りかかってきた。
「ちょっ……いきなり暴力は勘弁すよ」
そんな殺気むき出しな人に向かって行ったらそうなるさね。
何か情報が得られないかとリーダー格の男に質問して見る事にした。
「どうして、私らを狙うさね。もしかして山田柑奈と関係があるのさね?」
「なんだ。そこまで知っているのか……もう邪魔するな。お前らにはここでリタイヤしてもらう」
はぁ……やっぱり山田柑奈の関係者だったさね。億劫だけどやるしかないか。
残りの取り巻きが迫ってくるが相手の右手を持ち、そのまま捻り蹴り上げた。
ゴキッ……声にもならない苦痛な表情を浮かべ地べたで転げ回っている。
若干、顔が引きつっていた……
「聞いてた話と違うな」
「人を見た目で判断しちゃいけないって先生に教わらなかったかい?」
「生憎そんな事を言う奴は全員ボコボコにしてきたから教わってないな」
ん〜攻めにくいね。早くこっちを助けて欲しんだけどね……
チラッと後輩たちの方に目をやると……お互いボロボロになりながら殴り合っていた。
やれやれ……高校生なのに隙がないっていうのもどうかと思うんだけど、これは本気にならないとまずそうさね。
「お前さん空手でもやってたのかい?」
「昔やっていたが……そんなことはどうでもいいだろ」
ん〜時間稼ぎもあまり出来なかったか……
こちらの様子を伺いながらじりじりと迫ってくる。
こっちもそれに合わせて距離を詰めていく、互いの間合いに入ると先に相手が攻めてきた。
決着は一瞬でついた……
まず右の大振りをかわし、相手の襟を掴む。
勢いそのままに相手を地面に叩きつけた。見事な一本投げが決まり相手は伸びていた。
後輩の方も決着がついた様で満身創痍で立っていた。
そんなボロボロでどっちが勝ちなのかわからないけど……
右腕を折って野田打ち回ってた男がフラフラした様子で立ち上がってきた。
そのままくたばってくれてたら楽だったさね。
チラッと伸びているリーダー格の男を見る。
「そ、そんな……健二さんが……このクソアマがぁぁあああ」
右ポケットからナイフを取り出し向かってきた。
おっと……それは想定してなかった。
「先輩……危ない」
グサッ……
「へへ……ざまあねえ……」
後輩が私を突き飛ばしたが背中にナイフが刺さっていた。
なっこんな私を助けなくてもよかったのに……
「先輩……そんな顔しないで欲しいっす。自分は先輩の事守れて良かったすよ」
馬鹿野郎だな……ただのパシられだった奴が調子に乗って……
どこからかサイレンの音が聞こえる。きっと誰かが通報したんだろう。