自殺未遂
ぼんやりとした意識の中、天井のシミを眺めていた。
コツコツーー
何かが窓を叩いている音が聞こえてきたーー。
窓を見ると白くてフワフワしている鳥が外から中を覗いているみたいだった。
ジュルリ〜ジュルリ〜
相変わらずあの鳥は変な鳴き方をする、
重い身体をあげ、洗面台に行く。そして顔を洗うーー。
ふと、鏡に映った自分が見えた。
相変わらずクマがすごいなーー。
パンをトースターに入れ、やかんでお湯を沸かし、インスタント味噌汁を作る。相変わらず偏った食生活だが別に気にしない。
朝食も食べ終え、家を出る。
「行ってきます」
あたりが白い煙にうっすらと包まれている中、高校生ぐらいの背丈の子が歩いていた。
こんな朝早くから登校しているなんて偉いな…それに比べてやれやれとくだらない自問自答を繰り返しているうちに目的地に到着した。
「いい物件だな。ここなら迷惑はかからないだろう」
よく見ると所々、コンクリートが剥がれ落ちて鉄筋が露出しており、何かよくない雰囲気のビルのようだ。
床に背負っていた鞄を下ろすと砂煙の輪が出来た、
「ゴホゴホ…あの鉄筋にしよう」
まずは手頃なコンクリート塊を探し、目星をつけた鉄筋の下に配置しそこに上がり鞄の中から麻紐を取り出して結びつけた。
そして、輪っかの中に自分の首を入れ、コンクリート塊を足で蹴飛ばした。
ドクン・・・ドクン・・・自分の心臓の鼓動が全身にビートを刻んでいくのが伝わってくる
自分の意識がだんだんと遠のいてきた
突如全身の力がふっと抜けた感じがした。次の瞬間、痛みが全身に走る。
うっ……また失敗したーー
仕方がない。今日は大人しく行くかーー。
残念がりながら鞄にちぎれた麻紐を仕舞い込み、廃ビルから立ち去ることにした。
あれから30分ぐらい歩くと目的地の場所が近づいてきたかのようにたくましい声が聞こえてきた。
朝から元気なことで・・・
ちょっとだけうらやましく思いながら校門を潜ると、一人の男の子がこちらに気づき走ってきた。
「よっ!!薊。朝からそんな辛気臭い顔するなよ」
やれやれ朝からむさ苦しい奴に絡まれてしまった。
このむさ苦しい奴は立浪亮平という馬鹿だ。野球部に入部しているらしく、4番と呼ばれていることはわかっている。
「良かった。あんな事があったから心配してたけど元気になったんだな。監督にサボっているのばれたら怒られるからじゃあな」
そう言って亮平は帰って行ったが案の定監督にばれてペコペコしていた。
あんな感じで馬鹿なのだが面倒みが良いのでなぜか憎めない奴だから困る。
さてと、教室に行くか……
階段を登って行くと混じりあった音が聞こえてきた。階段を上がり終え、音の発生源が廊下で練習していた。
ただ、各々ワンフレーズずつ吹いていた為ちょっぴりもどかしい気持ちになってしまった。
きっと、完成した曲はまるで誰かの心を揺さぶるぐらい、いい物になっているんだろうな。
教室に入るとまだ誰も来ていない為。シーンとしており、ちょっとだけ優越感に浸っていたが徐々に人が入ってくる。
そして、教室全体が騒がしくなっていく・・・
何か面白い話がないか聞き耳を立てるが興味関心を引く話題がないのが辛い。
誰も声をかけてこないので机に伏せていると、誰かが背中を叩いてきた。
全く寝てないんだから声をかけてくれたら起きるのにわざわざ叩いてくるとはいったい……
寝てもいないのに背伸びをして体を起こす。
はぁ。今日はやけに絡まれる。こいつは桔梗隼人で馬鹿二号だ。身長は193cmと日本人離れした身長に他を寄せ付けない運動センスでまだバスケを初めて6ヶ月なのに日本代表候補に選ばれているらしい。
「薊。お前また聞き耳立てたろ。これだからムッツリはモテないのに」
どいつもこいつも口を開けば陰湿、ムッツリとどういう風に見たらそんなふうに見えるのか見てみたいよ。
「そうやって嫌な顔する。お前はすぐに顔に出るんだから気をつけろよ。あっそうだ。今週の日曜日公式戦だから見にこいよ。」
この馬鹿もお人好しなので迷惑
そんな事を思っていると担任の先生が入ってきた。
「はいはい。お前ら、いつまでも話してないで席に着け」
手を叩きながら早く席に着くように促す。
全くいつまでも子どもでもないのに・・・ご苦労な事で
「出席確認するぞ。呼ばれたら大きく返事するように。1番青井、2番井上、3番―――。」
先生に番号を呼ばれた生徒たちが大きな声で答えていると
ガラガラ・・・
「先生、遅れましたぁ〜」
遅刻しているはずなのに悪びれる様子もなく金髪の女の子が入ってきた。
「茨木さんそんなに遅刻ばかりしてると親御さんに連絡しますよ。ほら早く席に座って」
先生に何を言われようとも知らん振りの様子であった。
ホームルームも終わり、次の授業が移動教室ということもあり、みんな準備をしていると横から
「なあ、薊悪いけどさ。次の授業のノート私の分もとっておいてくれない。私、体調悪くて保険室行ってくるから」
また始まった。茨木のサボり癖…受けたくない授業は単位を落とさないように必要最低限出席しない。しかし、テストでは毎回、上位の方にいるので先生も親を呼ぶに呼べない状況になっている。
渋々、承諾した。
「さすが〜私の幼なじみ。頼りになるぜ。じゃ、行ってくるからじゃあな」
煽てるだけ煽てて意気揚々と教室を飛び出し、保健室へと向かっていくのであった。
また、めんどくさい事を引き受けてしまったな・・・
でも、いい暇つぶしにはなるかもしれない。あんなつまらない授業。