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88 攻略組


 迷宮都市ヴァイスローザでの情報収集。

 その結果、見えてきたのが“攻略組”と呼ばれる大規模チームの存在だった。


「攻略組からのご依頼で」


「今日は攻略組の方が来てくださって」


「あれは攻略組が――」


 街の至る所で耳にしたその名前。

「どういうものなの?」と聞いた私にルークは教えてくれた。


「迷宮都市最上位の冒険者が作った連合チームだ。二十年に渡って幾多の冒険者を圧倒し続けた七十九層の階層守護者フロアボスを打ち倒すために結成されたものらしい」


 二十年もの間、冒険者たちの夢を打ち砕いてきたあまりにも高すぎる壁。

 強大な敵を打ち破るため、攻略組はいくつかの革新的試みを大迷宮に持ち込んだと言う。


 三十八層と五十九層、七十五層に探索基地ベースキャンプを作り、迷宮内で休息と補給ができる環境を整備。


 チーム内で情報を共有し、消耗が少なく進行できる最良のルートを研究。

 各階層に出現する魔物の統計を取り、その特徴に合わせた効果的な装備を製作。


 入念な準備と徹底した最適化を推し進めた。


 その結果、遂に二十年もの間誰も攻略できなかった七十九層の階層守護者フロアボスを打ち倒したのだと言う。


 新しく発見された領域である八十層は小規模パーティーで攻略するには難易度が高すぎるらしく、攻略組に入らないと調査はできない様子。


「攻略組に入るにはどうすればいいの?」


 私の言葉に、ルークは言う。


「選抜試験をクリアして実力を証明すれば仲間として認められる。ただ、この試験が本当に難しい」

「そんなに難しいの?」

「先日の試験では某国の筆頭騎士と宮廷魔術師長も不合格だったとか」

「嘘でしょ……」


 そのレベルの実力者が不合格なんて、普通ならありえないと思うんだけど。


「単純な戦闘能力や魔法の技能に加えて、冒険者としての能力にも高いものが要求されるらしい。迷宮探索における練度の高さ――トラップへの対処法や想定外の状況への対応力も非常に高度なものが求められるんだって」

「ああ、なるほど。そこは冒険者じゃないと難しいところだもんね」


 迷宮以外の場所では身につかない能力。

 だからこそ、国や組織の中で成果を上げた凄腕の実力者でも落選してしまう狭き門。


「でも八十層を調査するには攻略組に入らないといけないんでしょ? どうするの?」

「正面突破」

「え?」

「正々堂々真正面から試験をクリアして中に入り込む」


 ルークは言う。


「試験内容は攻略組選抜試験のために作られた演習用迷宮の踏破だ。これが厄介な代物で、一線級の冒険者たちが一筋縄では対処できない悪辣な罠を至る所に仕掛けている。合格率は1パーセント以下。簡単に乗り越えられる壁じゃない」


 不敵に笑みを浮かべて言った。


「それでも、僕らならできる。そうでしょ?」


 また無茶ぶりを……。

 私は心の中で頭を抱える。


 たしかに、歴史に名を刻むような天才のルークなら合格できるかもしれないけど、私にそこまでの力は――


 いや、違う。


 置いて行かれてなんてやらないって決めたんだ。

 前を行く親友に負けないために。

 昔みたいに隣で張り合える私でいるために。


 ルークが合格するのなら、私だってやらないと。


「わかった。絶対に負けてない成績を出してやるんだから」


 最高難度迷宮の未踏領域を目指してこの地に集った精鋭たち。

 そんな彼らでも極一部しか合格できない超難関試験。


 問われている冒険者としての経験も知識も、明らかに私には足りてなくて。


 それでも、あきらめるなんて選択肢はない。


 負けたくないあいつが突破するって言うのなら、立ち止まってなんかいられないんだ。



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