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74 祝勝会


「すごいです、ノエルさん。我々が長年発見できなかった組織のアジトを独力で発見するとは」


 犯罪組織アジトでの戦いが終わった後。

 取締局の魔法使いさんは私のことを褒めてくれた。


「えへへ。いえいえ、そんなことないですよー」


 頬をゆるめる私。

 見つけたのはたまたまで、本当にそんなことないのだけどそれは言わないでおくことにする。


 折角の機会だからね。

 こういうときはたくさん褒めてもらっておかないと。


「よし、奢ってやる。お前らついてこい」


 事態の後始末が終わってから、ガウェインさんの発案で私たちはそのまま祝勝会へ。

 行きつけらしい酒場に連れて行ってもらった。


「この人はまた……」


 レティシアさんはこめかみをおさえてため息をついていたけど。


「チーズの盛り合わせとクラーケンの唐揚げ! あと牛串と豚串とモツ煮込みをお願いします!」

「おう、ありがとなノエル。みんなの分も頼んでくれて」

「全部私のです!」

「…………」


 たくさん食べて私は幸せいっぱい。

 前職でこんな機会はなかったので、お酒を飲むのも久しぶり。

 楽しくてついつい飲み過ぎてしまって、


「ノエル、飲み慣れてないならもうその辺りで」


 制止するルークを振り切って、


「いーの! 今日私はお酒を嗜むかっこいい大人女子になるの! 店員さん、おかわり!」


 さらにおかわりを注文。


「まだまだ飲めますよ! 夜はこれからです!」


 困惑する先輩たちを余所に、どんどん楽しくなって、


「いちばん! のえる・すぷりんぐふぃーるどうたいますっ!」


 気持ちよく熱唱し始めてからのことはよく覚えていない。


 後から聞いたところによると、店の前の茂みに頭から突っ込んでそのまま寝ようとする私を、ルークが介抱して家まで送り届けてくれたらしい。


『ほら、水持ってきたから』


 そういえば、甲斐甲斐しくお世話してくれるルークの姿が、ぼんやりとだけど頭の中に残っている。


「わざと弱い姿を見せて気を惹くなんて。恋愛上級者の愛されガールは違うわ……」


 お母さんは勘違いしてよくわからないことを言っていたけど。


 ともあれ、冷たい水で眠気を払いつつ出勤の準備。

 寝癖を直しながら思いだしたのは、飲み会の席での取締局の黄金ゴールド級魔術師さんのお話だった。


『誰にも言わないでくださいね。これはここだけの話にしてほしいんですけど』


 取締局の魔法使いさんは真剣な声で言った。


『実はノエルさんのことを探ろうと第一王子殿下が動いているようなんです』


 言葉の意味がうまくつかめなかった。

 ミカエル・アーデンフェルド王子殿下と言えば、王国の頂点に立つ一人。


『赤の宮殿』と称えられる大王宮における最重要人物。


 頭脳明晰で容姿端麗。

 王国一の大学を飛び級、首席で卒業し、チェスの腕前は周辺国最強と称えられていたグランドマスターを破ったとか。


 遠征のメンバーに選ばれたし、たしかに評価していただいている感じはあったように思う。

 でも、そんなすごい人がまだまだ駆け出しの私の調査なんて、するわけないと伝えたのだけど、


『本当です。全容はわかりませんが、少なくない人数が動いています。貴方の情報を探るために』


 取締局の魔法使いさんは言う。


『他国の密偵が貴方のことを調査すべく動いていたという話もあります。気をつけてくださいね。大きな何かに飲み込まれないように。貴方は、将来偉大な魔法使いになる可能性がある人だと思うので』


 心配してくれるのはありがたいけれど、何か勘違いしてると思うんだよな。

 私の調査なんて、王子殿下や他国の人がするとはとても思えないし。

 そう勘違いするくらい評価してもらえたのはすごくうれしかったけど。


 そんなことを思いつつ出勤する。

 隊舎では何やら人だかりができていた。

 先輩たちのざわめき。

 何が起きているのか確認したくて背伸びするけれど、私の身長ではよく見えない。


「何かあったんですか?」

「ノエルさん! 大変! 大変よ!」

「へ?」


 私の周囲を先輩たちが取り囲む。


「落ち着いて。落ち着いて聞いてね」


 見上げる私に、先輩たちは言った。


「年に一度、王室主催で行われる御前試合。その出場者としてノエルさんが選ばれたの」



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