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58 思っていたよりも


 ドラゴンさんの訪問後、ただただ呆然としていた私だけど、時が経つにつれ少しずつ冷静さを取り戻してくる。


「とにかく、このことは誰にも言わないように。僕も見なかったことにするから」


 ルークの提案に、私はうなずいた。

 王都に飛竜種が現れたとなると、事情を知らない人からすると間違いなく王都崩壊の危機。


 討伐隊が結成されて、王国史に残る大遠征が始まる可能性も十分にある。


 恩返しに来てくれたドラゴンさんにも、王国のみなさんにとっても不幸な展開であることは間違いない。


 何より、事の発端である私は、責任を問われて処罰されてしまう可能性があるのではなかろうか。


『ノエル・スプリングフィールド、死刑!』

『いやあああああああああ!!』


 嫌だ!

 嫌すぎる!


 結論として、私は都合の悪い事実から目をそらすことにした。


 何もなかったことにしよう。


 大人として働く上では、ずるいくらいがちょうどいい場合もあるのです、ええ。


 問題になりませんように、と神様にお祈りする。

 ふと気づいた。


「そういえば、ルークはなんでここに?」


 今日は週末でお互いお休みのはず。

 何か急ぎの用件でもあったんだろうか?


「え? いや、それはなんというか……」


 サファイアブルーの瞳が揺れる。

 別人みたいに力ない声。


 ルークは戸惑った様子で視線を彷徨わせてから、言った。


「………………なんでもない」


 いや、絶対なんでもなくないよね、その感じ。


 さらに、聡明な私は気づいていた。


 ルークが後ろ手に何か隠し持っていることを。


 ははーん。

 さては、その隠してるものに関連した何かだな。


 究極最強魔法使いである私には、ばっちりお見通し!


 その秘密、まるっと暴いてやるぜ!


「ねえねえ、なになに?」


 ルークの顔を覗き込んで言うと、


「だからなんでもないって」


 逃げるように目をそらして言う。

 夕焼けに照らされて、ほんのり赤く染まった顔。


 どうやら、何か恥ずかしい系な事柄の様子。


 気になる……ますます気になるぞ……!


 素早くステップを踏んで回り込み、後ろ手のそれを覗き見ようとする。

 しかし、すぐに反転されて隠されてしまった。


「ごめん、用事思いだしたから」

「え? あ、ちょっと」


 逃げるように去って行ってしまう。

 一人取り残された家の前で私は首をかしげた。


「なんだあいつ?」






 ◇  ◇  ◇


 逃げ込んだ路地の中。

 背中を壁に預けて、ルーク・ヴァルトシュタインは顔を俯ける。


 隠し通した二枚のチケット。

 視線を落として、深く息を吐いた。


「なにやってんだろうな、僕……」



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