34 魔法薬研究班3
新しい職場に溶け込めるか、少し不安だった私だけど、幸い魔法薬研究班の人たちはやさしい人ばかりだった。
みなさん、びっくりした演技をしながら私のことをたくさん褒めてくれて。
気づかってくれるのがうれしくて、私もさらに張り切ってお仕事に励む。
北部の伝染病問題が収束したのはそれからしばらくしてのことだった。
魔法薬研究班の活躍だと、王国の中では結構話題になっているとか。
簡単なお手伝いしかできていない私だけど、少しはお役に立てたんじゃないかなって思っている。
もちろん、魔法薬研究班のみなさんがすごくがんばってくださったおかげなんだけどね。
「ありがとう。スプリングフィールドさんのおかげでなんとか乗り切れたよ」
班長さんの言葉に、私はしあわせな気持ちになる。
前の職場ではこんな風に言われることなんてなかったからなぁ。
王宮魔術師のみなさんはほんといい人たちばかりで、こんなに恵まれてていいのかなって思っちゃうくらいだ。
「それで、スプリングフィールドさんに少し相談なんだけど」
「はい。なんですか?」
「三番隊から異動してうちの研究班で働かない?」
「え」
予想外の言葉にびっくりする。
魔法薬研究班に入れるのは五番隊の中でもほんの一握り。
魔法薬研究に高い適性を持つ優秀な人しか入れないところのはずなのに。
誘ってもらえたってことは、ちゃんと貢献できてたってことだよね。
見えないように小さく拳を握る。
「どうだろう? 今すぐにとは言わないし、じっくり考えてくれて構わないけど」
私には勿体ないくらいのありがたいお申し出。
でも、結論が出るまでに時間はかからなかった。
地方の魔道具師ギルドで全然仕事ができなくて。
役立たず扱いされて、クビになって。
働けるところがなくて途方に暮れていた私を見つけて、手を差し伸べてくれた親友。
私が今こうしてしあわせに暮らせているのも全部そのおかげで。
少しでも恩返しできるように、今は隣でがんばりたいから。
ごめんなさい、と気持ちを伝える。
「残念。でも、気が変わったらいつでも言ってね。スプリングフィールドさんなら大歓迎だから」
ありがたい言葉に、胸があたたかくなる。
そんな風に言ってもらえたのは多分、魔道具師ギルドで一生懸命がんばり続けて身につけたスキルがあったからで。
そう考えると、あの日々も無駄じゃなかったんだよね、きっと。
「ねえねえ、ルーク! 私、魔法薬研究班に誘われちゃった!」
目一杯自慢する。
ルークは紅茶を片手に話を聞いてくれる。
穏やかな午後の時間が過ぎていく。