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―都会の夜道を進む2人―

 本格的に第2章開始。この辺からザンのキャラが丸くなっていきます。

 あと、pixivに第1章登場キャラのデザイン画あるので、どのような姿をしているのか知りたい人はご覧下さい。

 https://www.pixiv.net/artworks/83838425

 まあ、10年以上前に描いたので、今とは絵柄が違いますが……。

 ユーフラティス大陸の中央に位置し、かつ大陸のかなりの面積の領土を治める大国、クラサハード王国。

 その中部に、チャンダラ市と呼ばれる商業都市がある。

 

 チャンダラ市は人口約9万人弱を誇る王国内でも有数の大都市であり、北に位置する王都と南方の都市や国々とを結ぶ交易の中継地点でもある。

 そんな市の四方は、外敵除けの高い外壁で囲まれおり、それ故に壁の内部では人口が増えるに従って建造物も密集し、少々窮屈な景観を形成していた。


 そんな市街地の中央には、どこぞの王宮の如く豪華な建築物が、悠々とそびえ立っていた。

 今や街の名物としても有名な、市長の邸宅である。

 また、その市長の邸宅付近にも立派な(たたず)まいの屋敷がいくつも立ち並んでおり、チャンダラ市の繁栄の度合いが見て取れる。

 

 しかしその繁栄の恩恵は、全ての住民にいきわたっている訳ではなく、むしろ一部の上流階級の人間が富の殆どを独占してしまっている為、貧しい生活を強しいられている者の方が圧倒的に多いようだ。

 その証拠に、一度(ひとたび)裏通りに入ってみると、貧民街に出くわすことも多かった。

 

 そう、先に「人口9万人弱」と記したが、それは「市民権」を得た中流階級以上の者に限っての話であり、実際には余所(よそ)の土地から移り住んできた難民や、両親の定かではない孤児、職にあぶれた浮浪者等の数は、数万人にのぼるだろうと言われている。

 事実、それらの増えすぎた人口が既に外壁の外にまで溢れ出しており、これまた貧民街を形成しつつあった。

 いずれはそれらを囲むように新たな外壁が形成されて、市は更に広がっていくのかもしれない。

 

 それはさておき、板切れで辛うじて住居の体裁を取り繕った家屋や、布の継ぎ()ぎが目立つテント等が並ぶ貧民街の路地を、2人の人影が進んでゆく。

 辺りは既に夜の闇に包まれており、他に人影は見当たらなかった。

 

 先頭を歩くのはまだ若い、20歳(ハタチ)そこそこの年齢と思われる女性であった。

 そんな彼女の容姿には、特徴がかなり多い。

 まず最初に目に入るのは、短く切られた美しい銀髪だろう。

 そしてその銀髪から少し視線を下げれば、野性的な鋭さはあるものの整った顔立ちの中に、ルビーを思わせる紅い瞳が、彼女の強い意志を主張するかのように輝いている。

 

 まるで生まれつき体の色素が薄い、アルビノを思わせるような容姿を持った彼女であったが、アルビノ特有の儚げな印象は無く、それどころか彼女を見る者の全員が、「力強さ」というものを感じ取ることができるのではなかろうか。

 なにせ彼女は、女性としては比較的長身な身体(からだ)に、簡易的な鎧を纏っていたのだから。

 

 そのことから、彼女は傭兵の(たぐい)生業(なりわい)としているということが推測できる。

 そんな彼女に、弱々しい印象が無いのは当然のことであった。

 ただ不思議なことに、武器のような物は何1つ携帯していないようである。

 まさか素手で戦闘を行う、とでも言うのだろうか──そう不思議に思う者もいるだろう。

 

 それらの理由が故に、彼女はやたらと人目を引く存在であった。

 まるで寂れた暗い路地を、彼女1人て華やかに彩っているかのような印象さえある。

 おそらく余程物覚えの悪い者でも、彼女の姿を1度見れば、簡単に忘れないだろう。

 

 もっとも今は、そんな彼女に注目する人物など周囲には存在しなかったが。

 約1名、彼女の後ろに続く、少年以外は。

 

 その少年は、まだ幼いと言ってもいいような容姿をしていた。

 年の頃は14~15歳といったところか。

 しかしその小柄な体型と、女の子のようにも見える可愛らしい顔立ちの所為で、人によっては――いや、殆どの人間がもう2~3歳は幼く見てしまうのではなかろうか。

 

 彼は普段着にマントを羽織っただけという出で立ちで、足を引きずるようにしてヨタヨタと夜道を歩いていた。

 

「ザ……ザンさん……ちょっと待って下さい……。

 少し休みましょうよぉ~」

 

 少年――ルーフは心底疲れた様子で弱音を吐いた。

 その声音にはまだあどけない少年特有の高さがあり、男性らしさを感じさせない。

 だからなおのこと、彼は女の子に間違えられることが多かった。

 

「何言ってるんだよ……。

 その休む為の宿を、今探しているんだろうが」

 

 ザンという奇妙な名で呼ばれた女性は、呆れたような調子で答えながら振り返る。

 

「でも、僕の足は、もうガタガタですよぉ……」

 

「もう……これだから旅慣れてない奴は……」

 

 ザンはやれやれと、肩を(すく)めて溜め息を()いた。

 竜の攻撃によってルーフの故郷であるコーネリアの町が消滅してから、既に3ヶ月ほどの月日が流れていた。

 故郷を失い、ザンの旅に同行することとなったルーフであったが、旅慣れぬ彼にとって、その道程(どうてい)は決して楽なものではなかった。


 むしろ拷問の如き、厳しさだったと言える。

 本作では大陸や山に川っぽい名前がついていたり、逆に川や海に山っぽい名前がついていたりします。また、町や国の名前はゲームが元ネタである場合が多いのですが、重要度の高い場所は神話や伝承から名前を拝借している場合もあります。

 ちなみに「クラサハード王国」は、某ゲームの必殺技の改変ですが、分かる人はいるかなぁ……。そして「チャンダラ」は、物凄く昔に本屋で見かけたゲームブックのタイトルにそんなのがあったような記憶があるけど、本当に実在しているのかはよく分からない。

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