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―生まれ出でた意味―

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 竜王は語る。

 

『いずれ邪神が復活することを予見して、対抗させる為にである。

 ……我等竜種は、この世界の守護者となるべくして生み出され、そしてそれが存在する意義であった……』

 

「守護者……」

 

『しかし、ティアマットのような存在の出現によって、守るべき世界を我らが壊してしまった。

 既に竜種は守護者としての役割から逸脱し、世界にとっての脅威以外の何者でもない存在になってしまったことを私は悟ったのだ。

 それが(ゆえ)に、私は竜種の多くを駆逐する必要があると考えた』

 

「まさか……その為に私達を……?」

 

『斬竜剣士の一族が健在であれば、いずれ竜族にもそなたらの剣が向けられていたやもしれぬ。

 我等竜種は、(まご)うこと無く世界に対する脅威であったのだから……』

 

 竜王の言葉を受けて、ザンは動揺する。

 

「そ、それじゃあ何か? 

 私達は邪竜を倒す為だけじゃなく、あんた達の自殺を手助けする為に生み出されたって言うのか? 

 そんなの酷いじゃないかっ! 

 確かにみんなは邪竜を倒すという使命を持っていたけど、でもただ滅ぼすことが目的で戦っていた訳じゃないはずだ! 

 きっと、守りたいものがあったから……!!」

 

『確かにそなたにとっては、許しがたいかもしれぬ。

 だが竜種はこの世界にとって、あまりにも危険な存在となった。

 そなたも邪竜大戦時に、如何ほどの生命が竜種によって奪われたのかを知っておろう。

 そしてこの(たび)のティアマットの復活は、あの大戦を上回る規模の被害を世界にもたらしかねない……。


 このようにただ一個の存在が為に、世界の命運が左右されるようなことがあってはならぬ。

 そしてそのような存在を生み出してしまった竜種が、いつまでも世界の覇権を握っていてはならぬのだ。

 それが故に我々には天敵が必要だった……』

 

「でも……っ!」

 

 竜王の説明を受けてもなお、ザンはまだ納得いかない様子だった。

 確かに竜という種は、世界の脅威となっているのかもしれない。

 だからといって、自ら同朋の衰退を願う竜王は、あまりにも非情に見えた。

 そしてその手段として生み出された、自分達の存在も──。

 

「大体、(ドラゴン)が世界にとって危険というのなら、私達斬竜剣士だって竜以上の危険な存在なんじゃないのか? 

 なのになんであんたは、私達を(つく)ったんだ?」

 

『斬竜剣士の能力は、邪心を抱く者には発揮できぬように(いまし)めを施してある。

 むしろ何かを守ろうとする時にこそ、その能力を最大限に発揮できるように……と。

 無論、世代を重ねていけば、その例外が生まれることは否定できぬがな……』

 

「………………!」

 

 竜王のその言葉は、ザンにも思い当たることがあった。

 たとえば斬竜剣士の血を一応持つシグルーンであるが、その子供達は普通の人間であった者が殆どだったという。

 しかし人一倍正義感の強いフラウヒルデだけが、明らかに人間のレベルを超えた能力を有していた。

 これは竜王の言葉とは、無関係ではないのかもしれない。

 

 そして今自身の身体に力が満ちているのも、復讐の為ではなく大切な者を守る為に、心の底から力を欲した結果なのかもしれない。

 

「でも……それじゃあ……私達は、いよいよあんたの思惑に沿って創られた道具みたいだな……」

 

 ザンの表情が暗く沈む。

 

 だが、竜王は静かに首を横に振った。

 

『確かに役割を与えて生み出したからには、道具としての一面を否定はしまい。

 だが、私にとってそなたらは、希望でもあるのだ。

 

 私は限られた一部の強者によって、世界が動かされてはならないと考えている。

 大き過ぎる力は、世界を守護するべき者を、守護者ではなくしてしまう。

 世界はたとえ非力な者達であっても、多くの者が手を取り合って支えていくべきなのだ。

 

 だが、現状では世界の全ての種族が手を取り合っても、いずれ復活するであろう邪神には対抗できぬだろう……。

 だから私は、世界中の種の能力を、底上げすることを考えた』

 

「底上げ……?」

 

『そう……斬竜剣士の血を、人間に入れることによってな。

 何故私が、そなた達を人間の姿にしたと思う?』

 

「……!!」

 

『今や人間という種は、世界中に溢れている。

 そしてエルフなどのあらゆる種族との混血も、珍しくなくなりつつある。

 人間に斬竜剣士の血を加えれば、間違いなく世界中のあらゆる種族に広がっていくはずだ。


 おそらくその強靱な能力は、世代を重ねるごとに弱まっていくかもしれぬし、個人の力は竜に遠く及ばないかもしれぬ。

 だが人間という種全体で見れば、確実にその潜在能力は飛躍的に上昇するであろうし、彼らが一丸となれば竜という種をも上回るようになると私は信じている。

 

 ……私は人間に、新たなる守護者になってもらいたいのだよ。

 そしてその希望は、そなたの存在無しでは語れぬ。

 リザンよ、私はそなたに我が後継者となってもらいたいのだ』

 

「私が……後継者?」

 

 竜王の言葉にザンは混乱した。

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