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―虚無の洞―

 今回はちょっと短め。

 ファーブが結界内に侵入した右腕で、魔法攻撃をしようとしたその瞬間──、

 

「グオォッ!?」

 

 その右腕の侵入を許していた結界の穴が、強引に閉じた。

 それによって、ファーブの右腕はあっさりと切断される。

 

「無駄だと言ったはずじゃ、ファーブニル。

 そなたはそこで為す(すべ)なく、傍観しているがよい」

 

 ティアマットが両手を突き上げたその上空には、直径5mほどの黒い渦が生じた。

 それはまさに、空間に開いた穴そのものだ。

 

「さあ、最後の斬竜剣士どもよ、(くら)幽世(かくりよ)彼方(かなた)に消え去るがいいわ――っ!!」

 

「ザン――――――っ!!」

 

 ティアマットは黒い渦を、ザンとベーオルフ目掛けて投げ放った。

 渦は周囲の全てを飲み込みながら突き進み、そしてついには親子の姿を跡形もなく飲み込む。

 黒い渦が通り過ぎた後には、地面すらもえぐり取られて、何も残らなかった。

 

「あははははははは、()き先は私にも知れぬ異空間じゃ! 

 最早、二度と戻ってはこれれまい。

 それに魂すらこの世に無いのでは、転生も叶わぬ。

 私が幾たび生まれ変わろうと、そなたらとは未来永劫再会は叶わぬであろうよ。

 あっはっはっは、あーっはっはっはっ!」

 

「ウワアァァァ――――っ!!!!」

 

 結界が弾け飛んだ。

 ファーブの激しい怒りに伴って発せられた膨大な闘気によって吹き飛ばされたのか、あるいはティアマットが最早用無しと、自ら結界を解除したのかは定かではないが、ともかく彼を妨げるものは何も無くなった。

 

 だが、ファーブはそこから一歩も動かなかった。

 ただ、射抜くような鋭い視線を、ティアマットへと注ぎ続けている。

 

「……邪魔が入ったな」

 

 やがてファーブは、視線をちらりと背後に向けて(つぶや)いた。

 

「竜族め、今頃お出ましか……」

 

 ティアマットは微笑んだ。

 彼女の視線の先には、空を埋め尽くすかの如き、無数の竜の群れがいるのにも関わらず──である。

 竜族の軍団でさえも、彼女にとってはさほど脅威ではないということなのだろう。

 

「……少し時間をもらおうか」

 

「……うん?」

 

 ファーブの言葉にティアマットは、わずかに(いぶか)しげな表情を浮かべ、小首を傾げる。

 

「貴様を倒すのはあいつらじゃねぇ! 

 俺の役目だ! 

 それをよく言い聞かせてくる。

 ……少しの時間も待てないほど、余裕が無い訳じゃないだろう?」


 ファーブの言葉通り、確かにティアマットには余裕がある。

 そしてこれから彼が何をしようとしているのか、そのことに対しての興味も──。

 だから彼女は、その提案を受け入れた。

 

「あははははは……なるほどな。

 いいじゃろう、いいじゃろう。

 奴ら(竜族)に手出しさせないようにしようが、こそこそと結託して策を練ろうが、好きにするがいい。

 だが、私は何をしようが無駄だと、言ってあるぞ?」

 

「無駄じゃないってことは、俺が戻った時に証明してやるよ……!」

 

 ファーブは怒りを押し殺したような笑みを口元に浮かべ、竜族の群れ目掛けて飛び立った。

 家族が体調を崩している為、急に更新を休む可能性があります。

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