彼女たちの秘密
翌日放課後が転校生の勉強でつぶれるため、昼休みに自分の勉強をしようと図書室へと向かった。だが私の考えは甘かった。そう、彼女との約束では『図書室を利用しているとき』勉強を教えるというものだ。彼女はいつもの席に座っていた。まだこちらに気づいた様子はないためゆっくりと場所を移動する。
「あっ」
短く彼女の声が聞こえた。ばれたのである。私は急いで図書室から出た。そう、図書室から出てしまえば勉強を教えるという約束は行使されないのである。だがこの行動が軽率であったと後悔するにはそう時間はかからなかった。昼休みも終わり教室に戻ると私を見つめる視線がクラスメイトから飛んできた。一体何事かと思い数少ない友人の若菜に声をかけた。
「なぁ俺なんかしたか?」
「ついさっき図書室にいた芹那ちゃんから逃げたって結構有名だよ?」
何を言っているんだ、つい10分ほど前のことじゃないか。それなのにここまで冷たい視線が飛ばされるまでに話が膨れ上がるのか。
「さらには逃げたことで芹那ちゃんが泣いてたって…」
はぁ?そんなこと知るか。おそらくただ噂に尾ひれがついただけだろう。こんな短期間で広まるのだから、それぐらいなら許容範囲内だ。
「ねぇ奏斗はさどうして芹那ちゃんのことを避けてるの?転校してきた初日からずっとだよね?」
私が彼女を避けている理由…特にこれといってないのが事実だが、それでは若菜は納得しないだろう。さてどうやって納得させようか。
「俺はもともと人とかかわるのがあまり好きじゃないからな。ただそれだけだよ」
さてこんな理由で納得はしないだろう。だがこの状況では納得せざる負えない。なぜならもうすぐ午後の授業が始まるからだ。
「そっか。でもちゃんと聞くからね!次ははぐらかしちゃだめだよ!」
若菜はそう言って自分の席へ戻っていった。ちゃんとした理由でも作っておくか。私はそんなことを考えながら午後の授業を聞き流していた。だが、午後の授業に松山芹那の姿はなかったのだった。
放課後、図書室に向かうと彼女の姿はなかった。私は彼女を待つようにいつもの場所で勉強を始めた。だがいくら待とうが、この日彼女が現れることは無かった。
私が昼に逃げたのが理由なのか、そんなことを考えながら、帰路に着いていた。すると背後から声をかけられた。
「ねぇ!奏斗!」
私を呼び止めたのは若菜だった。若菜とは家も近く昔はよく一緒に通ったりしていたのだが、高校に入ってからはそれぞれ忙しくなり久しぶりに帰宅途中に声をかけられた。
「どうした若菜。珍しいなお前がこんな時間に帰るなんて」
「そう?むしろ君のほうが珍しくない?こんな早くに帰るなんて」
確かにそうだ、今日は松山芹那に勉強を教えるつもりでいたため自分の勉強にあまり集中できなかったので、早く帰宅することにしたのだ。
「たまにはいいと思ってな。」
この行動が後にあんなことを引き起こす引き金になっていただなんて、当時の私はまだ知らない。
こんにちは!第3話目です!次回から各登場人物について深く掘っていく予定ですのでお楽しみに!