出会い
「あんた、こんなところでどうしたんだい?」
異国のおばさんが心配そうな顔をしている。
「ひっく、ひっく、家に帰れなくって…」
「迷子かい?家はこの辺なのかい…?」
「はい、ひっく。歩いて帰れるぐらいです…」
おばさんはしばらく難しい顔をして、
「今日は、もう日も暮れてるからうちに泊まりな?」
「…すみません、よろしくお願いします」
一瞬、誘拐とか、知らない人について行ってはいけないとか、頭をよぎったがこのまま野宿と天秤にかけるとついていく方がいいと思ったのだ。
「私はナンシー、よろしくね!」
「まりといいます。お世話になります」
「そんな丁寧にいいんだよ〜、うちは男ばっかりでむさ苦しいかもしれないけど、ごめんね」
「そんなこと!泊めていただけてありがたいです」
そんなこんなで話をしているうちに少しずつ気持ちも落ち着いて来た。
「あ、あれがうちだよ」
少し先に明かりが見える。
明かりが見えただけでかなりほっとした。
「ただいま〜!あんた!ジーク!ちょっと来ておくれ!」
「帰って来て早々、騒がしいな」
「母さん!後ろの子どうしたの?」
「迷子になってて、今日一晩泊めることになったんだよ、まりって言うんだ」
「まりです。今日、お世話になります」
ぺこりと頭を下げる。
「…俺、ジーク!よろしくな!」
「わしはゴートン、よろしく」
「じゃあ、みんなお腹すいただろうから、晩ご飯にしようか!準備するよ!」
*****
はっと目が覚める。
周りを見渡すと、ボヘミアン調の家具が並んでいる。
晩ご飯を食べた後、疲れてその後すぐに寝てしまったのを思い出す。
月明かりのなか、ぼんやりと今日を思いかえす。
なぜ、一本道を歩いてたのに帰れなかったのか…。
なぜ、外国人の村が日本にあるのか…。
田舎でそんな村?集落?があるなんて聞いたことない…。
ナンシーさんは明るい茶髪に同じ色の瞳。ゴートンさんとジークは暗い金髪に明るい茶色の瞳。明らかに日本人ではない。
そして、この部屋。家電とか電気を使う物が一切ないのだ。
いくら田舎とはいえ、コンセントもない家なんて見たことない。
最後に、足元のカバンを漁りスマホを取り出す。
パッと明かりがつくが、表示は圏外。
時間と日にちが進んでいる事しかわからない。
田舎とはいえ圏外ではなかった。
時々、電波が通じない時はあっても少し移動すれば大体、通じていた。
おかしいことだらけだが考えてもわからない…
家に帰りたい…
涙ぐみながら枕に顔をうずめそのまま、いつの間にか眠っていた。