ナンシーの悩み
[ナンシー視点]
「まりは、やはり不思議な子だ…」
「えぇ、そうね」
ゴートンの呟きに深く同意をする。
「あの子、かなりの教育を受けていると思うの…」
「そうなのか?」
「えぇ、最近、畑をお願いしているけど知識が豊富なの」
「ほう、例えば?」
「あの子、肥料ってものを手作りしてるの」
「肥料ってなんだ?」
「肥料って言うのは、土に栄養をあげる物よ。まりが言うには、土に栄養を与えることで作物の実りが良くなるらしいの」
「なんでまりはそんな事を知っているんだ?」
「私も不思議に思って聞いてみたの、畑をやった事があるの?って。そしたら、肥料の事はまりの世界では割と常識で、家で小さな畑をする人のための本を読んだ事があるから肥料の作り方も知っているらしいわ」
「本…?まりは字が読めるのか?」
「えぇ、字も読めるし、書けるらしいわ」
「まりは本当に貴族ではないのか…?」
「貴族ではないってこの間はっきり言われたわ。ただ、話を聞くと身分の考え方が私たちとは違うみたい…。難しすぎて、まりの言ってる事はあんまり理解できなかったわ」
「ほう…」
あまりの情報量に言葉を失っているゴートンを見つめる。
「まりは…これからどうすればいいのかしら…」
「…」
深く考え込むゴートンを見ているとため息をつきたくなる。
「もう、今日は寝ようか…」
そんなゴートンの言葉にうなづき、テーブルの上を片付ける。
いつも通り、明かりを持って寝室へ行き、布団に入る。
明かりを消すと窓から見える月明かりが、いつもより不気味なぐらい綺麗に見えた。