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歌姫は家に帰りたい  作者: さくら
いつのまにか…
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いつのまにか

初投稿です。完結できるように頑張ります。


 ~♪


丁寧に、でもしっかりと最後の音を鳴らす。


「まりー、そろそろお母さんにも弾かせてほしいな」

最後の音を鳴らして余韻に浸る、しばらく今の演奏の反省点を考えているとお母さんに話しかけられた。


はっと時計を見るとお昼を食べてからピアノの練習を始めて2時間近く経っている。

「わ!結構時間過ぎてる!はい!どうぞ!」


慌てて楽譜をまとめてお母さんに席を譲る。

いつもは午前中は私、午後はお母さんと分けているのだが、今日は私が午前だけでは足りなくて午後の時間も弾かせてほしいと頼んだのだ。

それにしてもこんなに時間が経っているとは思っていなかった。


 ~~♪~♪


お母さんのピアノの音が聞こえる。お母さんの音はいつ聞いても綺麗だ。


「まり。もう練習はいいのか?」

「うん、今日はもういい」

お父さんにそんな返事をしつつ、出かける準備をする。


「お母さん、散歩行ってくるね」

曲が終わり、しばらくたったタイミングでピアノ室の扉を開けて、お母さんに声をかける。


「あら、まり今日はどこまで行くの?」

「んー、どこまで行くかは決めてない。でも今日は暑いから川沿いを行ってみようと思う」

「気を付けてね。暗くなる前には帰ってくるのよー!」

「はーい!気を付けまーす!」

そう言って、玄関に向かう。

「お父さーん行ってきまーす!」

「おー!いってらっしゃい!」


お気に入りのサンダルを履き、お父さんにも一言声をかけて外に出る。


ドアを開けると少し見慣れてきた自然が広がっている。少し深呼吸をして、森の方へ歩いていく。


今は夏休みで、お母さんの実家がある田舎に家族旅行で来ている。旅行といっても観光地とかをめぐるわけではなく、田舎での〜んびりするだけだ。


とてつもなくひまだけど、普段は住宅街に住んでいるから、こんな自然に囲まれるのは珍しくて毎日のように近くの森に散歩に行っている。


最初のころはお母さんが心配して付いてきていたけど、ここ2、3日は一人だ。

たぶん、この暑さの中歩くのがしんどかったのだと思う。



 ∼♪∼♪~♪

小さく鼻歌を歌いながら道を進んで行くと川があった。さらさらと流れている川の近くは涼しい。今日はこの川沿いを上流に向かって歩いていく予定だ。

どこまでとかは決めていない。しいていうなら、飽きるまでだ。



しばらく歩いていると、最近ずっと悩んでいる進路のことが頭によぎる。今は高校1年生の夏、焦って決める必要はないが決まるなら早いほうがいい、この前あった面談でもそろそろちゃんと進路を決めていこうと言われてしまった。


そんなことを考えながらしばらく、いや結構歩いた。


ふと目線を上げると少し先の方に滝が見えた。こんなとこに滝があるなんてお母さん言ってたかな…?


不思議に思いつつ、近くまで行ってみる。

なかなか大きい、上を見上げるとミスト状の水が顔に降りかかって気持ちいい。

ここだけ空気の質が違う感じがする。


綺麗な景色に感化されたのかわからないが、なんとなく歌いたくなってきた。すうっと息を吸って、のどを震わせる。


 ~♪~♪


曲は世界的に有名なジブリアニメから選んだ。

音が響いて気持ちがいい。こんな景色を独り占めして、大声で歌っても苦情が来ないのは田舎のいいところだと思う。


 ~♪


最後まで歌いきってほうっと、ため息をつく。ここで歌えてよかった。時計を見るとそろそろ帰った方がいいだろうという時間だ。鞄の中から水筒を出し、少し飲んで機嫌良くるんるんで家に向かう。






おかしい。


来た時の道を戻って、帰っていたはずなのに家が見当たらない。迷ったと思い、スマホを見るが圏外だ。おかしい。いくら田舎といっても、圏外まではないはずだ。


いやな汗が出てくる。


どんどん暗くなり、必死で動かしていた足もついに止まってしまう。


数時間歩き続けていた足は一度、立ち止まると疲れと恐怖でもう動かない。


ぼろぼろと涙が出てきて止まらない。


ひっく、ひっくと泣いていると、とんとんと肩を叩かれた。


人の気配なんてしなかったのにと驚いて顔を上げると異国の人が立っていた。




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