表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/245

女王、マッサを試す

 「ええ、いいですよ!」


 なんと、女王は、この《守り石》まで、作り物じゃないかと疑っているらしい。

 用心深いことは、大切だけど、さすがに、ここまでくると、用心深いというより、疑い深すぎる。

 マッサは、さすがにちょっと嫌な気持ちになりながら、言われた通りに《守り石》を首から外して、女王に向かって、ずいっと突き出した。


「どれだけ、よーく見られても、ぼくは、かまいません。どうぞ、納得がいくまで、よーく見てください。」


 すると、その瞬間!

 ぐいっと、強く引っ張られるような感覚があったかと思うと、マッサの手から《守り石》が離れて、びゅーんと、女王のところまで、飛んでいってしまった!

 目に見えない、魔法の力で、女王が《守り石》を引っ張ったんだ。

 女王は、飛んできた《守り石》をつかむと、裏返したり、表に向けたりしながら、じろじろ、眺めはじめた。


「……おいっ!?」


 マッサもびっくりしたけど、それ以上に、びっくりして、腹を立てていたのは、ディールだ。


「こら、おい! あんた! 女王だか、何だか知らねえが、さっきから、何様のつもりだっ!? マッサは、あんたに会うために、ここまで、大変な旅をしてきたんだぞ!

 マッサだけじゃねえ、俺たちや、俺たちの仲間も、怪我をしたり、色々と苦労して、ここまで来た! それを、何だ、あんたは? 偽物だとか、何だとか、わけのわからねえ文句をつけやがって!

 よく見ろ! どうだ、その《守り石》をよく見ろよ! 本物だろ! さっさと、それをマッサに返せ!」


「ディール!」


「ディールさん、落ち着いて!」


 さすがに慌てて、隊長と、マッサが、同時にディールを止めた。

 怒ってくれる気持ちはありがたいけど、女王に対して、この言い方は、さすがに失礼すぎる。

 でも、女王は、別に、怒りだしたりはしなかった。


「ふん!」


 と、馬鹿にしたように、言った。


「この《守り石》が、本物であることくらい、わしには、とっくに分かっておったわ。かつて、ずっと身に着けておったものを、見忘れたりするものか。

『返せ』じゃと? ふん! ばかめ。これは、もともとは、わしの持ち物だったのじゃ。わしが、これを娘に与えて、娘は、これを、自分の赤ん坊に与えた。」


「お……おう、そうだろう? だから、その石が本物だってことは、つまり、マッサも、本物なんだよ。簡単なことじゃねえか。」


 ディールがそう言い、ブルーも、隊長も、タータさんも、みんながうんうんと頷いた。

 でも、女王は、うなずかなかった。


「この《守り石》は、確かに本物じゃ。……じゃが、そこの男の子までが、本物のわしの孫じゃと、どうして言える? のう、男の子よ。」


 女王は、鋭い目でマッサをにらんだ。


「おまえは、この《守り石》を、どこで、どうやって手に入れた? 落ちていたのを、拾ったのかえ? それとも、どこかから、盗んできたのかえ?」


「こ、こ、この、ばばあ! 疑い深すぎるのも、いい加減にしやがれ! マッサが、泥棒だって言うのかよっ!?」


 とうとうディールが暴れ出し、隊長が、彼を後ろからはがいじめにした。

 まわりの魔法使いたちが、女王を守ろうと身構えて、空気が、ざわっと動く。


「おい! マッサ! はっきり説明してやれ! おまえが、いつから、どうやって《守り石》を持ってたのか!」


 隊長に止められながら、ディールが叫ぶ。


『マッサ!』


 と、ブルーも叫んだ。

 ――でも、マッサは、すぐには、口を開くことができなかった。


 いつから、どうやって、この《守り石》を持っていたのか。

 おじいちゃんの家の「あかずの部屋」の、宝箱に入っていたのを見つけたんだ。

 それを、気に入ったから、そのまま着けて、こっちの世界に来てしまった。

 でも、こっちの世界への入口だった、ふしぎな《穴》は、もう消えてしまって、はっきり見せられる証拠は、何もない……


「ほれ、どうした、どうした。言えぬのか?」


「ぼ、ぼ、ぼくは……」


 女王に、意地悪そうに急かされて、マッサは、必死に言った。


「ぼくは……その石を、自分の……おじいちゃんの家の、入っちゃいけない部屋の中で、見つけました! 宝箱に入れて、大事に、しまってありました!」


「ほほーう。」


 女王は、ますます意地悪そうに言った。


「そうか、そうか。入ってはいけない部屋にな。……つまり、それは、隠してあったわけじゃ。ということは、おまえの祖父が、《守り石》を盗んできたのかもしれんのう。」


「ぬっ……」


 その言葉を聞いた瞬間、さすがのマッサも、怒りで、目の前が真っ赤になった。


「盗んできた、ですって!? 違うっ! おじいちゃんは、めちゃくちゃ怖いけど、めちゃくちゃまじめで、絶対絶対、泥棒なんか、する人じゃないよっ!

 あなたなんか、ぼくのおじいちゃんに、会ったこともないくせに! 今の言い方、失礼すぎる! 謝ってよ! 謝れ! ぼくのおじいちゃんに、謝れっ!!」


 あんまり怒りすぎて、怒鳴っているうちに、涙まで出てきた。

 マッサが、泣きながら怒っていると、


「そうか。」


 と、急に、女王が、これまでとは違う静かな声で言った。

 いったい何が「そうか。」なのか、マッサには、分からなかった。

 もしかしたら、マッサが、真剣に怒ったから、とうとう、信じてくれたんだろうか?


「そこまで、真剣に言うのならば、お前の言うことは、本当なのかもしれんのう。……じゃが、はっきりした証拠がないことには、何事も、信じることはできぬ。」


「しょ……証拠?」


 マッサは、いやな予感がした。


「おじいちゃんに会わせろ」とか、「《守り石》を見つけた部屋に案内しろ」とか言われたら、どうしよう?

 もう、あの部屋に戻る方法はないのに――


 でも、女王が次に言った言葉は、そんなマッサの心配を、遥かに通り越すものだった。


「おまえが、本当にわしの孫であるというのならば、おまえは、わしと、わしの娘の血の血を引いておるはず。すなわち、最高の力を持った魔女たちの血をな。魔法の力は、よくその一族の血によって受け継がれるものじゃ。

 少年よ。おまえが、わしの前ですばらしい魔法を使ってみせたなら、わしは、おまえを、わしの孫であると認めよう!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ