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仲間たち、マッサを探す

 そのころ、ガーベラ隊長たちは、迷路のようなトンネルを、下へ下へと降りながら、落ちていったマッサを探し続けていた。


 マッサがいなくなってしまったことで《守り石》の明かりがなくなり、真っ暗闇になってしまったので、みんなは相談して、しかたなく、持ってきたランプに小さな火をともし、それを明かりにしていた。


 本当は、地下で火をともすと、トンネルにたまっているガスに火がついて爆発したり、空気が汚れて息ができなくなったりして、危険なのだが、今は、それよりも、マッサを探すことのほうが大切だったからだ。


〈おらが悪かっただ。そこに穴があるって、口で注意するだけじゃなくて、ちゃんと見ておかなきゃいけなかったんだ。〉


 モグさんが、すっかりしょげて、悲しそうに言った。

 モグさんは、火のあかりが眩しいので、一番先頭に立って、光を直接見ないようにしている。


「いいえ、わたしが悪いんです。」


 タータさんも、すっかり落ち込んで、言った。


「わたしの次に、マッサが通るんだから、わたしが、ちゃんと後ろを向いて、支えてあげればよかった。」


「いや、俺のせいだ。」


 ディールが、苦虫をかみつぶしたような顔で、言った。


「俺は、マッサのすぐ後ろを歩いてたんだからな。マッサの姿が、いちばんよく見えてたのは、俺だ。それなのに、俺が、ぼうっとしていたから……」


「みんな、もうやめろ。」


 ガーベラ隊長が、びしりと言った。


「さっきから、何回、同じことを話しているんだ。過ぎたことを、いくら後悔しても、王子が見つかるわけではないだろう。……不幸中の幸いだが、王子は《守り石》を持っておられる。だから、怪我をしたり、亡くなったりしているという心配だけはない。今も、たった一人で、地下の迷路をさまよっておられるはずだ。一刻も早く、見つけてさしあげなくては。……ほら、ブルーを見ろ。」


 ブルーは、モグさんの足元にいて、何も喋らず、トンネルの地面のにおいをフンフンと嗅ぎながら歩いていた。

 寝ていてリュックサックから転がり落ちた自分を助けるために、マッサが穴に落ちてしまったと聞いて、ブルーは、自分のせいだと思って、必死にマッサを見つけようとしているのだ。


 やがて、みんなは、巨大な洞窟に出た。

 そこから、何十本ものトンネルが、枝分かれして続いている。


〈さあ、みんな、こっちだ。ここのトンネルを通って、もう一層、下へ――〉


 モグさんがそう言った、次の瞬間だ。

 ブルーが突然、ぴたっと立ち止まって、はっと顔をあげた。


『……なんのおと?』


「は?」


 ディールが、眉をしかめる。

 洞窟の中は、しいんとしていて、何も聴こえない。


「音だって? 音なんか、何も……」


〈いや。〉


 モグさんが、静かに、という動きをして、ひげをぴんと立て、耳を澄ました。

 ディールたちの耳には、まだ何も聴こえていなかったが、ブルーとモグさんは、遠くから近づいてくるその音を、はっきりと感じ取った。


〈大変だ、岩神さまだあ!!〉


 モグさんが悲鳴のような声で叫び、騎士たちは、敵が来るのかと一斉に武器を抜いて、外側を向いて円になり、あたりを警戒した。


「岩神さま!? それは、何者だ!?」


 ガーベラ隊長がたずねた。

 その頃には、隊長たちの耳にも、遠くから近づいてくる、ゴゴゴゴゴゴという地鳴りのような音が聴こえはじめていた。


〈岩神さまは、ものすごくでっかい竜だ。地面の下で一番大きくて、一番強いお方だあ! どんなに硬い岩でも、頭で突き破っちまう。岩神さまの通り道に巻き込まれたら、おらたち、あっと言う間に、ぷちっと、すりつぶされちまうだよ!〉


「くそーっ! この忙しい時に、余計なもんが出てきやがって!」


 槍を構えながら、ディールが叫んだ。

 もう、地面がびりびりと震え始めていて、立っているのがやっとだ。

 洞窟の天井からも、ばらばらと、石のかけらが落ちはじめる。


「だめです、こっちに近づいて来る! 逃げましょう!」


 タータさんが叫んだ、そのときだ。

 バゴオオオォォォォン!! と洞窟の壁の一部が吹っ飛び、まるで鎧をかぶったような、巨大な竜の頭が、ゴゴゴゴゴゴと現れた。


 その姿が、あまりにも巨大すぎて、戦ってやろうと身構えていた騎士たちも、思わず槍をおろし、あんぐりと口を開けた。

 戦うどころではない。

 あんなものに近づいていったら、象に踏んづけられたアリみたいに、ぷちっと潰されてしまう。


〈ははぁーっ、岩神さま! どうか、どうか、おしずまりください!〉


 モグさんが、その場にひれふそうとして、


「ばかやろう、逃げろ、逃げるんだ! 潰されちまうぞ!」


 モグさんを引っ張りながら、ディールが大慌てで叫ぶ。

 そのときだ。


『あっ!』


 急に、ブルーがそう叫んだ。

 そして、ブルーは、地面を砕きながらどんどん洞窟に入り込んでくる巨大な竜めがけて、たたたたたっ! と、走り出した!


「ブルー!? やめろ! あんなもの相手に、おまえでは、絶対に勝てない!」


 さすがに慌てて、ガーベラ隊長が叫ぶ。

 でも、ブルーは止まらなかった。


『いた!』


「はあ!? いた、って、何が――」


『マッサ! マッサいた! マッサいた!』


「……何っ!?」


 みんなが目を丸くした、そのときだ。


「おおーい!」


 ゴゴゴゴゴと、とぐろを巻いて、ようやくのことで尻尾まで洞窟に入り込んだ巨大な竜の、その尻尾のほうから、みんなが聞いたことがある、元気な声が響いてきた。


「みんな! ぼく、マッサです! ぼく、ここに、いまーす!」



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