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マッサ、短い演説をする


 何だか、あたりが、がやがやうるさいような気がして、マッサは、はっと目を覚ました。

 ――しまった、寝坊した!? 学校に、遅刻する!

 あわてて、ベッドの上に飛び起きた瞬間、


「王子、おはようございます!」


 ばん! と勢いよく部屋のドアがあいて、手にランプを持ったガーベラ隊長が入ってきた。


「うわっ! おはようございます!」


 マッサは、あわててあいさつをしたけど、


「ふわああああ……あっ、ごめんなさい!」


 特大のあくびが出てしまって、大急ぎで、あやまった。

 隊長は、たぶん、徹夜ではたらいていたのに、寝ていた自分があくびをするなんて、失礼だと思ったからだ。

 でも、今、めっちゃくちゃ、眠い。

 今、いったい、何時だろう?

 この部屋には窓がないし、もちろん時計もないから、時間が、全然わからなかった。

 でも、これだけ眠いっていうことは、たぶん、寝てしまってから、それほど時間はたっていないと思う。


「今、何時ですか?」


「なんじ、とは?」


 ガーベラ隊長は、ふしぎそうな顔をした。

 そうか、この世界には、時計、っていうものがないから、何時ですか、って聞いても、意味が伝わらないんだ。


「もう、朝ですか?」


「夜明け前です。もう少ししたら、太陽がのぼります。出発の準備はととのいました。これから、朝の食事をとって、出発です。」


「ガーベラ隊長は、あれから、ずっと起きてたんですか?」


「ええ、まあ。しかし、夜に戦いが起きると、徹夜をすることは、よくありますから、大丈夫です。」


「徹夜は、体に悪いから、絶対だめだって、おじいちゃんが言ってましたよ……でも、みんな、ぼくのためにしてくれたんですよね。夜じゅう、準備してもらって、本当にありがとうございました。……おーい、ブルー! ブルー、起きてよ。もうすぐ、出発だよ!」


『ムニャムニャムニャ……おいしいもの……』


 マッサは、まだ、むにゃむにゃ寝ているブルーを、リュックサックに入れて、ガーベラ隊長といっしょに、部屋を出て下におりていった。

『青いゆりかごの家』と同じくらいある、大きな大きな食堂に入りかけたところで、


「うわっ!」


 マッサは、びっくりして、思わず、その場に立ち止まった。

 たくさんの長いテーブルが、ずらりと並んで、そこに、大勢の騎士たちと、えらそうなおじさんやおばさんたちと、騎士団長が勢ぞろいしていた。

 みんな、びしっとまっすぐに立って、マッサのほうを、じっと見つめている。


「王子、どうぞ。」


 ガーベラ隊長に案内されて、マッサは、みんなが見つめる中を、どきどきしながら歩いて通り、部屋のいちばん奥の、いちばんえらい人が食事をするテーブルについた。

 騎士団長が、マッサのとなりに立ち、おほん、と咳ばらいをして、演説しはじめた。


「今日は、我ら翼の騎士団にとって、歴史的な日である。この場に、我々の希望、この国の王子、大魔王を倒す勇者であるマッサファールさまにおいでいただくことができたからである。

 マッサファール王子、さあ、どうぞ。みなに、お言葉を!」


「ええっ!?」


 ずらりと並んだ騎士たちの顔を、みんな強そうだなあ、と感心して眺めていたマッサは、急に、話をふられて、とびあがりそうになった。

 みんなが、ざっ! とかかとをそろえて、ますます、びしっ! まっすぐに立ち、マッサを見つめる。

 でも、マッサは、これほど大勢の人の前で話をしたことなんて、これまでに一度もない。

 こんなの、まるで、小学校の校長先生が、みんなの前で話をするときみたいだ。

 何か、言わなきゃ! とあせって、マッサは、とりあえず、


「みなさん、おはようございます!」


 と、校長先生のまねをして、言ってみた。


「おはようございます!」


 と、騎士たちが、声をそろえて答えた。

 みんな、ものすごく声が大きい。

 食堂の壁が、びりびりっと震えたんじゃないかと思うくらいの大声だ。


「ぼくは……ぼくの名前は、マッサです! マッサファール王子って呼ばれるよりは、マッサのほうが、なれているから、マッサって呼んでください。みなさん、昨日は、ぼくたちのために、寝ずにいろいろ準備をしてくれて、ありがとうございました!」


 そう言って、マッサが、みんなに頭を下げると、


「いいえ、どういたしまして!」


 と、騎士たちが叫んで、いっせいに頭を下げた。


「ええと……」


 マッサは、次に何を言おうか、困った。

『ぼくが、ぜったいに大魔王をやっつけてみせます』って、言ってみようかな……?

 いや、むりむり、自信もないのに、そんな大きなこと、ぜったい言えない。


 この場の全員が、マッサの次の言葉を待って、目をきらきらさせながら、こっちを見つめている。

 何を言ったらいいか、わからなくて、パニックになりそうになったとき、マッサは、ふと、食堂のはしっこに、大きな大きななべを横に置いて立っている人たちがいることに気付いた。

 砦のコックさんたちだ。

 朝ごはんの準備をするために、待ってくれているんだ。

 マッサは、とっさに、大きな声で叫んだ。


「……それでは、みなさん。まずは、これから、朝ごはんを食べましょう!」


「そうしましょう!」


 全員が、大きな声で言って、そのまま、朝ごはんが始まった。

 騎士たちは、規律正しく列をつくって、自分のおぼんと、お皿をとり、順番に、おぼんにパンを、お皿にあたたかいスープをもらって、席についた。

 マッサも、みんなといっしょに列にならんで、朝ごはんをもらい、席についた。


『ムニャムニャムニャ……おいしいもの……ハッ! おいしいにおい、する!』


 ブルーも、やっと目をさまして、リュックサックから飛び出してきた。


「いただきます!」


「いただきます!」


 マッサが言って、みんなが声を合わせ、朝ごはんが始まった。

 この朝ごはんが終われば、いよいよ、出発だ。


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