表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/245

マッサ、眠る

 みんなで晩ごはんを食べ終わったら、すぐに、お皿洗いだ。


「はい、おにいちゃん。こっちの、おけに、お皿を入れてね!」


「えっ、きみたちが、お皿を洗ってくれるの?」


「うん!」


『青いゆりかごの家』では、皿洗いは、小さい子たちがするきまりになっていた。

 お皿もスプーンも、木でできているから、落として割ってしまう心配はない。

 中庭に、水をくむことができる井戸があって、小さい子たちが、おけいっぱいにつみあがったお皿とスプーンを、きれいに洗っていく。

 そのとなりでは、ふきん係の子たちが待ち受けていて、洗い終わったお皿を受け取って、しっかりふく。

 そこから、キッチンまで、ずらっと一列に並んだ子供たちが、順番に「はい!」「はい!」「はい!」と、お皿を渡していって、列のいちばん終わりに立った子が、キッチンの中の棚に、お皿とスプーンを、だいじにしまう。

 みんな、まだ小さいけど、ものすごくなれていて、てぎわがいい。

 五十六人分の皿洗いは、びっくりするほど、すばやく終わった。


「さあ、寝るぞ! みんな、歯をみがけ! トイレをすませて、ベッドに入れ!」


「えっ、もう!?」


 ガッツの言葉に、マッサは、びっくりした。

 まだ、お風呂にも入っていないのに。

 ……そういえば、ここには、お風呂がないみたいだ。

 みんな、どうやって、体をきれいにしているんだろう?


「ねえ、ガッツ、みんなは、いつ、お風呂にはいってるの?」


「風呂? そりゃ、汚れたなあ、と思ったときに、中庭で水浴びだな。」


「水浴び!?」


 マッサは、びっくりして、それはまた今度にしよう、と思った。

 歯磨きをする場所は、中庭。

 トイレも、中庭のすみにあった。

 みんなが、行列を作っているので、マッサも並んだ。

 トイレは、水で流すんじゃなくて、ためてあるだけのやつで、ふたをとると、ものすごくくさかった。

 マッサは、息を止めて、あわてて、おしっこをすませた。


 部屋に戻ると、年上の子供たちが、あちこちの窓に、がんじょうそうな木の板をはめて、戸締りをしていた。

 ドアのかぎも、ガチャリとしめられた。

 年上の女の子が、ベッドのあいだを歩き回って、小さい子たちがそろっているか、たしかめている。


「みんな、もう、ベッドに入ってるね? みんな、いるね? ……あかりをけすよ!」


 あかりは、電気じゃなくて、火をともすランプだ。

 年上の子たちが、ふっと、ランプの火をふきけした瞬間、部屋の中は、ほとんど何も見えないくらい、真っ暗になった。


「おやすみ、マッサ。また明日、がんばろうな。」


 となりのベッドで、ガッツがそう言うのが聞こえたかと思うと、がーっ、がーっと、すごいいびきが聞こえてきた。

 下のほうからは、小さい子たちが、ひそひそ声で、おしゃべりする声や、


「しいっ。みんな、しゃべらないで、もう、ねなさい。」


 と言っている、少し年上の子の声も聞こえてきた。

 マッサは、いつもと違うまくらとふとんで、はじめての場所で、ちゃんと眠れるか、ちょっと不安だった。

 それに、真っ暗になったら、こわくて、おじいちゃんのことを思い出して、さびしくて、泣いちゃうんじゃないかと思っていた。


 でも、ぜんぜん、そんなことはなかった。

 ブルーが、マッサにぎゅっとくっついて、むにゃむにゃ眠りながら、


『チョコレート……ウフフフフーン……チョコレートォォォォォ』


 と、寝言を言っているのが、おもしろすぎて、涙は引っこんでしまった。

 それに、レストランでのしごとを、めちゃくちゃがんばった疲れが、どっとでてきて、マッサは、目を閉じた十秒後には、もう、ぐっすり、眠っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ