表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/245

マッサ、ばんごはんを食べる


『青いゆりかごの家』の中は、ふつうの家みたいじゃなくて、体育館みたいにひろくて、天井が高い、たったひとつの部屋になっていた。

 そして、真ん中に通る道があって、両側には、ベッドがずらーっと並んでいた。

 しかも、普通のベッドじゃなくて、二段ベッド……でもなくて、なんと、四段ベッドだ!


 いちばん上の段は、もう、ほとんど、天井と同じくらい高いところにある。

 そのベッドの、あちこちから、小さな子供たちが、顔を出していた。

 ベッドと、ベッドのあいだを、ぴょんぴょん、飛んで渡っている子もいる。


「おい、そこ! ベッドのあいだを飛ぶなって、何度言ったらわかるんだ! あぶねえだろうが! 落ちたら、首の骨が折れて、死んじまうぞ!」


 ガッツに怒られると、ベッドのあいだを飛んでいた子たちは、ぱっと、ふとんをかぶって、隠れてしまった。

 まるで、森の中の生き物みたいだ。


 その、ベッドだらけの部屋を、まっすぐに突っ切っていくと、向かいに、ひとつ、ドアがあった。

 そこを開けると、中庭があって、さらに、そのむこうに、キッチンの建物があった。

 キッチンの中は、大勢の、年上の子供たちで、ごった返していた。


「野菜、こっちで洗うぞ!」


「今日は、わたしが、肉担当ね!」


「洗いおわった野菜は、こっちに、どんどん回してくれ! ほうちょうで切るから!」


「ねえ、火の強さ、これくらいでいい?」


「うーん、まだ、ふっとうしないな。もうちょっと、薪をふやして、火力をつよくしてくれ!」


 ガスや電気じゃない、木に火をつけて燃やすタイプの、大きなかまどがあって、その上にのった、めちゃくちゃ大きなおなべで、山のような野菜と、ちょっとの肉が煮られていた。


「おれたち、晩ごはんには、いつも、スープを作ることにしてるんだ。スープなら、一気に、大量につくれるからな。」


「そうなんだ。あっ、おいしそうなにおいがしてきた!」


 スープが、ぐつぐつ、ふっとうして、キッチンにおいしそうなにおいの湯気が立ちこめた。

 ブルーは、鼻をひくひく、ひげをぴくぴくさせて、まだ、何も食べていないのに、


『ウフフフフーン……』


 と、おいしい顔をしていた。

 大量のスープが、無事にできあがると、ガッツが、キッチンの外に出て、ドアの横にぶら下げてあったベルを、リンリンリーン! と鳴らした。

 すると、


「晩ごはん、できた!?」


「おなかすいた!」


「ばんごはーん!」


 と、叫びながら、小さな子供たちが、どどどどどーっと、キッチンの前に行列を作った。

 晩ごはんの用意のようすは、まるで、小学校の給食の用意みたいだった。

 列を作って、キッチンに入って、木のお皿とスプーンをもらって、お皿にスープをたっぷり入れてもらって、最後に、パンをひとつもらって、キッチンから出ていく。

 ドアのところには、ガッツが立って、小さい子たちがけんかをしたり、うっかりぶつかって、ごはんを落としたりしないように、目を光らせていた。


 小さい子たちが、みんなごはんをもらうと、次は、大きい子たちの番だ。

 大きい子たちのパンは、小さい子たちのパンよりも、少し大きかった。

 みんな、体が大きいから、よけいにおなかがへるし、明日も、大いそがしのしごとが待っているから、栄養をとって、力をつけておかないといけないからだ。


 このパンは、パン屋さんでしごとをしている子たちが、お給料として、もらってくるらしい。

 晩ごはんが、ちゃんと全員に行きわたったところで、ガッツが、大きい声で、


「いただきます!」


 と言った。みんなも、


「いただきます!」


 と言って、むしゃむしゃ、もぐもぐ、食べ始めた。

 食べる場所は、なんと、それぞれのベッドの上だった。

 他に、こんなに大勢で食事ができる場所がないからだ。


 ガッツのとなりのベッドがあいていたから、マッサは、そこを使うことになった。

 なんと、天井のすぐ近くの、四段目だ。

 そこまで行くには、長いはしごをのぼらないといけない。


 はしごから落ちたらあぶないから、小さい子たちは、下のほうのベッドを使って、大きい子たちが、上のほうのベッドを使うことになっていた。

 マッサは、まだ、少し小さいけど、下のほうのベッドは、どこもいっぱいだったから、特別だ。


「みんな、スープをこぼすなよ! こぼしたら、ふとんを洗ってかわかすまで、スープくさいふとんで、寝ないといけなくなるからな。」


 ガッツが、そう言って、みんなに注意していた。

 ブルーは、あついスープがのめないから、パンのかけらと、りんごを一個もらって、


『ウフフフフーン……』


 と、おいしい顔をしながら、むしゃむしゃ、食べていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ