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マッサたち、大広間へ

 マッサとブルー、お父さんは、長いらせん階段を、どんどん登っていった。

 登り切ったところには、大きな重い扉があった。

 マッサとお父さんは、顔を見合わせ、二人で、よし、とうなずくと、力を合わせて、扉を力いっぱい押し開いた。


 先に、飛び込んだのは、マッサだ。

 マッサは《守り石》を持っているから、もしも、入った瞬間に攻撃されても大丈夫だし、みんなも守ってあげることができる。

 でも、扉を開けた先には、暗い廊下があっただけだった。

 誰もいない廊下の奥に、別の、巨大な扉が見えている。


「よし、行こう。」


「ちょっと、待って!」


 前に進もうとしたお父さんを、マッサは止めた。


「もしかしたら、何か、罠が仕掛けられているかもしれないよ。ぼくが、先に通るね。」


 マッサは剣を構えながら、慎重に、廊下に入っていった。


 カチッ!


「ん!?」


 踏んづけた床が、足の下でわずかに沈んだ、とマッサが思った、その瞬間、


 ヒュンヒュンヒュンヒュンッ!


 廊下の横の壁から、何本ものとがった金属の矢が発射されて、マッサに襲いかかる!


「マッサ!」


「マッサー!」


 ピシャアアアァァン!


 もちろん、すぐに《守り石》が光って、マッサは無事だ。


「やっぱり!」


《守り石》の光にあたって、砂みたいに崩れた矢を、足の先でざりざり触りながら、マッサは言った。


「絶対、こんなことじゃないかと思ったよ。ぼくが先に進んで、罠を、全部動かしちゃうね。そうすれば、大丈夫だから。」


 マッサは、わざと罠の仕掛けを全部踏みながら、廊下を向こうの端まで行った。

 それから、念のため、床をどんどんと踏みながら、ブルーとお父さんのところまで、また戻ってきた。


「よし、これで、もう大丈夫。行こう!」


 マッサたちは、そろって、ゆっくりと廊下を進んでいった。

 マッサが、全部の罠を解除していたから、何事も起こらずに、みんなは奥の扉のところまでたどり着くことができた。


「お父さん、ここを開けたところに、大魔王がいるのかな?」


「分からん。よく覚えていない……だが、あんな罠があったのだから、おそらく、この向こうが、大魔王のいる部屋だと考えていいだろう。」


「うん。ブルー、ぼくの後ろに下がって。お父さんも、ぼくの後ろに隠れてね。」


 マッサは、二人に少し下がってもらってから、すううっ、と呼吸を整え、剣を構えた。


「ハァッ!」


 シャキンシャキーン!


 白い光が交差して走り、大きな扉はすっぱりと割れて、バターン! と倒れた。

 その向こうには、暗い巨大な空間が広がっていた。

 マッサ、ブルー、お父さんは、この順番で、ゆっくりと中に入っていった。


 そこは、大広間のような場所だった。

 マッサは、《魔女たちの城》で、はじめておばあちゃんに会ったときのことを思い出した。

 天井の高い、巨大な部屋の両側には、太い柱が何本も並んでいて、壁には、細長い窓が開いている。

 部屋のあかりは、ひとつもついていないので、窓から入ってくる外の光だけが頼りだ。

 床には、真っ赤な長いじゅうたんが、通路みたいに、奥へ奥へと敷かれている。

 大広間の一番奥には、幅の広い階段があって、そこには、左右に開く舞台の幕みたいなカーテンがかかっている。

 そして、階段の一番上に、カーテンに半分隠されて、巨大な椅子があるのが見えた。


 マッサたちは、顔を見合わせた。

 しばらくのあいだ、目と、身振りだけで相談しあってから、


「おい! 大魔王!」


 と、みんなを代表して、マッサが怒鳴った。


「ここに、いるんだろう!? 隠れてないで、出てこい!」


「よく聞け! 俺は、もう、おまえの部下ではない!」


 と、お父さんも怒鳴った。


「息子のマッサファールが、魔法をといてくれた。俺は、息子と共に、おまえを倒す! どこにいるんだ!」


『やっつける! ぼく、だいまおうやっつける!』


 ブルーも叫んだ。


『かむ! ひっかく! おしりで、ドンドンドーンって、する!』


 でも、あたりは、しーんと静まり返ったままだった。


「気をつけて。」


 マッサは、左右に目を配りながら、おさえた声で言った。


「大魔王は、柱のかげなんかに、隠れているのかも。それに、罠だって、あるかもしれない。ブルーも、お父さんも、ぼくから離れないでね。」


『うん!』


「分かった。」


 三人は、警戒しながら、ゆっくりと大広間を進み、大魔王の玉座らしきものが、はっきり見えるところまで近づいた。

 でも、玉座は、からっぽだった。


「誰も、いないね。」


「ああ……だが、油断はできないな。魔法で、姿を消しているのかもしれない。」


「あっ、そうか……ブルーも、気をつけて!」


『わかった、きをつける!』


 と、そのときだ。


 ササッ……


 それは、ほんのかすかな、ふだんなら音とも言えないほどの音だった。

 石と、布とが、一瞬だけこすれたような音。

 全神経を集中し、耳を澄ましていたマッサたちは、全員が、その音を聞いた。


「誰だ!」


「そこだな、出てこい!」


『でてこないと、かむ! ひっかく!』


 マッサたちは三人とも、まったく同じ場所を見ていた。

 向かって右側の柱の、奥から四番目――

 マッサたちは、だっ! と走って、マッサとブルーは手前から、お父さんは向こう側から挟み撃ちにするように、その柱のかげを見た。


「ひええええ……」


 そこに座りこんで、ちぢこまって震えていたのは、そまつな服を着た、一人のおじいさんだった。

 顔も手も、ものすごくしわしわで、ものすごく背中が曲がっていて、灰色の髪の毛は薄くて、ぼわぼわだ。

 ひょっとして、百歳をこえているんじゃないか? と思うくらい、ものすごく年をとっているように見える。

 おじいさんは、しわしわの口を動かして、何か、ぶつぶつ言っていた。


「助けてくれ、助けてくれ……わしは、大魔王に捕まって、無理やり、働かされとっただけなんじゃ……決して、大魔王の手下というわけでは、ないんじゃ……助けてくれえ!」


 マッサとブルーとお父さんは、顔を見合わせた。


「おじいさん、大丈夫ですよ!」


 マッサは、できるだけ優しく、おじいさんに声をかけた。


「ぼくたち、おじいさんを、やっつけたりしないですよ。ほら、ね、何もしないから、大丈夫ですよ!」


「立てますか?」


 お父さんが、鎧と手袋におおわれた大きな手を差し出した。

 おじいさんは、その手をちらっと見た瞬間、


「ひええええっ!?」


 と、腰を抜かして、そのまま心臓が止まってしまうんじゃないかと心配になるくらいの悲鳴をあげた。


「しょ、しょ、将軍! 大魔王さまの、将軍さま! ……ちがいます、ちがいます、わしは、決して、大魔王さまを、裏切ったり、しておりません! だから、命だけは、助けてくだされえ!」


「落ち着いて、おじいさん!」


 マッサは慌てて、おじいさんの、やせて骨が浮いた肩に、そっと手を置いた。


「この人は、ぼくのお父さんです。大魔王の将軍じゃ、ありません! ……いや、前は、そうだったときもあるけど、でも、今は、もう、絶対ちがいます!

 お父さんは、悪い魔法で操られて、無理やり、働かされていただけなんです。もう、その魔法はとけたから、もう、大丈夫!」


『おんなじ、おんなじ!』


 おじいさんの言葉をよく聞いていたブルーも、おじいさんを元気づけようとして、大きな声で言った。


『むりやり、はたらかされてた。おじいさんと、マッサのおとうさん、おんなじ! でも、もう、だいじょうぶ。』


「そう、そう。」


 マッサは言って、おじいさんの、痩せてごりごりした背中をさすった。


「今は、ぼくたちが来たから、もう大丈夫。なんにも、怖くないですよ! ぼくは、この国の王子です。ここに捕まっているみなさんを助けて、大魔王をやっつけるために、来たんです!」


「お、お、お、王子さま?」


 おじいさんは、驚きすぎて、目玉が飛び出しそうになるくらい、目を見開いた。


「あの、魔女たちの、予言の? あなたが、その、予言の王子様ですか? まだ、そんな、小さな子供なのに。」


「そうなんです。」


 マッサは、小さな子供、と言われて、ちょっとだけ嫌だったけど、これほど年をとったおじいさんからすれば、そりゃあ、ぼくは小さな子供だよな、と心の中で考えて、納得した。


「よろしければ、ひとつ、教えていただきたいのですが。」


 と、お父さんが言った。


「大魔王は? あなたは、大魔王のもとで働かされていたのですよね。大魔王は、今、どこにいるのですか?」


 おじいさんの答えを、マッサとブルー、お父さんは、緊張しながら待った。

 もしかしたら、今も、この部屋のどこかに、大魔王が身を隠していて、この会話を、残らず聞いているんじゃないか?

 そして、魔法で姿を消したまま、誰かの後ろから、ゆっくりと忍び寄っているんじゃないか――?


 おじいさんの痩せた腕が、よろよろ揺れながら、高く上がって、玉座を指さした。


「そこから……さっき、そこから、逃げていきました。あの、玉座の、後ろから。

 そこが、秘密の、隠し通路の、入口になっとるんです。」


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