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マッサたち、罠にかかる

 ボルドン、ブルー、そしてフレイオを茂みのなかに残し、マッサとガーベラ隊長、ディール、そしてタータさんの四人は、魔法使いの塔に向かって歩いていった。

 でも、巨大な金属の門の前まで来ても、そこには誰もおらず、門はぴったりと閉じて、あたりは、しーんとしていた。


「ディール、ここで待っていれば、リアンナさんが扉を開けてくれるのか?」


 ガーベラ隊長の質問に、


「はあ……まあ、多分、そうだと思うんですがね。」


 と、ディールが、少し自信なさそうに答えた、そのときだ。


 ゴオオオォォォン……


 と、重い響きをたてて、巨大な金属の扉が、左右に開き始めた。


「ずいぶんと、ぶあつい扉ですねえ! いったい、どうやって、動かしているんでしょう? 何十人も集まって押さないと、動かせないように見えますけど。」


「たぶん、魔法の力で動くようになってるんじゃないかな?」


 タータさんとマッサが、小さい声で話しているあいだに、


 ゴオオオォォォン……


 と、また、重い響きをたてて、扉の動きが止まった。

 扉は巨大だけど、開いたのは、ほんのちょっとだけで、もしもボルドンが一緒に来ていたら、間違いなく、肩のところでつっかえちゃっていただろう。


「えらく、中途半端な開け方だな……」


「住んでいる魔法使いは、侵入者を警戒しているというからな。きっと、用心のためだろう。」


 ディールとガーベラ隊長が、小さい声で話していると、


「いらっしゃーい! 待ってたわ。さ、どうぞ入って、入って!」


 と、ちょっとだけ開いた扉の中から、にこにこ顔のリアンナが出てきた。

 でも、


「あら、あら? あららーっ?」


 マッサたちを見るなり、リアンナは眉を寄せて、首を傾げた。


「変ねえ。四人だけ? ディールさん、あなた、さっき、『みんなで七人いる』って、あたしに言ったわよねえ?」


「あー……」


 気まずそうな表情で、頭をかきながら、ディールが答える。


「すまねえ。もしかして、お茶とかお菓子とか、七人分、用意してくれたのかな? ほんと、悪いな。ちょっと、色々あってよ。」


「そう、そう、そうよお! お茶も、お菓子も、ちゃーんと七人分、用意してあるんだから。あとの人たちは、どこにいるの? せっかくだから、みなさん揃って、入ってちょうだい! はやくしないと、せっかくのお茶が冷めちゃうわ。」


「あのう。」


 リアンナのお喋りの勢いに、すこし気圧されながら、マッサは、何とか口を挟んだ。


「あと三人の仲間は、みんな、『どうしても外に残る』って言ったんです。ぼくも『せっかくだから、いっしょにお邪魔しようよ』って誘ったんですけど……その三人は、ものすごーく、はずかしがり屋なんです。」


 マッサは、わざと、そんなふうに説明した。

 ボルドンが、じつは巨大な熊だとか、フレイオが魔法使いだとか、ブルーが、イヌネコネズミウサギリスという珍しい生き物で、いろんな言葉の通訳ができるんだとか、そういうことを、会ったばかりの人に分かるように説明するのは、難しいと思ったからだ。


「あら、そーお?」


 リアンナは、唇をとがらせて言いながら、マッサをじっと見た。

 この人、何だか、ぼくのことを見すぎじゃないかな? と、マッサがちょっと思った瞬間、


「ざーんねん。……でも、しかたないわね。ま、いいわ!」


 と、リアンナは大きな声で言って、扉の中のほうへと、大きく腕を振った。


「さあ、どうぞ、どうぞ! あなたたちだけでも、どうぞ、入ってちょうだい。」


「では、お言葉に甘えて、入らせていただこう。」


「ありがたく、お邪魔するぜ。」


「失礼します!」


「こんにちはー!」


 ガーベラ隊長、ディール、マッサ、タータさんの順に、扉の中に入っていく。

 目の前に、高い石の塔がそびえ立ち、塀の内側は、何もない広場だった。

 木の一本、草の花ひとつさえない、乾いた土ばかりの、がらんとした空き地のような場所だ。

 ずっと奥のほうには、塔と同じように石でできた、四角い、灰色の倉庫のような建物が、いくつも並んでいる。


 ゴオオオォォォン……


 という音が響いて、マッサたちが振り返ると、巨大な扉が、勝手に閉まったところだった。


「これはねえ、魔法の扉なの。」


 みんなの後ろに立ったリアンナが、にこにこしながら言った。


「お父さんかお兄さんが、閉めてくれたのね。ほら、開けっぱなしにしてて、泥棒なんかが入ってくると、困るじゃない?」


「ああ……」


 と返事をしながら、マッサは、何だか、この場所、変な感じがするなあ、と思った。

 あまりにも、静かすぎる。


「静かだな。」


 と、まわりを見回していたガーベラ隊長が、今まさにマッサが考えていたのと同じことを呟いた。


「人の気配が、まったくない……」


「そりゃ、この広い家に、リアンナさんと、お兄さんと、親父さんの三人暮らしだからじゃねえですか?」


「そうだが……あの倉庫……この広場……たった三人で暮らすには、あまりにも……」


 呟きながら振り向いたガーベラ隊長の表情が、一瞬にして険しくなった。

 驚いたマッサも、反射的に振り向き、ぎょっとした。

 ついさっきまで、みんなの後ろに立っていたはずのリアンナの姿が、忽然と消えていたからだ。


「おや? 急に、どこへ行ったんでしょう。おーい、リアンナさーん?」


 タータさんも目を丸くして、きょろきょろとあたりを見回す。

 そのときだ。


 ギイイイィィーッ……


 と音を立てて、マッサたちの前にそびえる塔の扉が開いた。

 みんなが、思わず身構えた、次の瞬間!


 バサバサバサバサバサアッ!!


 と、ものすごい音を立てて、塔の扉の奥から、大量の何か・・が飛び出してきた!



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