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マッサたち、川に着く

 翌朝、空が明るくなりはじめると同時に、マッサたちは出発した。


「王子! それに、みなさん! お気をつけて!」


「猿と熊……特に、熊には、気をつけて!」


「必ず、大魔王をやっつけてください!」


 滝のすぐそばの岩壁を、細い階段をつたって下りていくマッサたちを、秘密基地の入口に集まった《赤いオオカミ》隊の戦士たちが、大声をはりあげて見送ってくれた。

 滝の、ごうごうという水音にかき消されて、その声は、すぐに聞こえなくなってしまった。


 マッサたちは、見張りの戦士たちにあいさつをしながら、いくつもの防壁を越えて、新しく教えてもらった道をたどりはじめた。

いよいよ、山脈を抜けるための旅の再開だ。


「ねえ、隊長。」


 荷物をせおって、いっしょうけんめい歩きながら、マッサは、前を歩いているガーベラ隊長に話しかけた。


「どうしました、王子? 足が痛くなりましたか?」


「いや、そうじゃないんだ。……ちょっと、気になってることがあって。」


「気になっていること?」


「うん。……ほら、あの、予言があったでしょ。えーと……」


「『王子と七人の仲間が、大魔王を倒し、世界を救う』ですか?」


「そう、それ! ……その、王子っていうのが、ぼくでしょ? で、仲間っていうのが、ブルーと……」


『ぼく?』


 マッサの足元を、たったたったと歩いていたブルーが、ひょいと顔を上げた。


「ああ、うん、ごめん、君を呼んだんじゃないんだ。……えーと、ブルーと、それから、ガーベラ隊長、ディールさん、タータさん、フレイオさん。」


 指折り数えて、マッサは、顔をしかめた。


「まだ、五人しか、仲間が集まってないよね。あと二人っていうのは、いつ、見つかるんだろう?」


 実は、マッサは、《赤いオオカミ》隊の戦士たちと出会ったとき、


(もしかしたら、この人たちの中に、仲間になってくれる人がいるのかもしれない!)


 と思っていた。

 道案内のために、ついてきてくれませんか、とお願いしたのも、もしかしたら、仲間になりたい人が、


「俺が行きます!」


 と言ってくれるかもしれない、と思ったからだった。

 でも、残念ながら、《赤いオオカミ》隊の戦士たちの中には、七人の仲間に加わってくれる人はいなかった。


「えーと、この《二つ頭のヘビ》山脈を越えたら、次は《死の谷》を越えて……その次に《惑いの海》を越えたら、もう、大魔王の島に着いちゃうでしょ? でも、《死の谷》とか《惑いの海》なんて、あんまり、人が住んでなさそうだし……もしも、あと二人の仲間が見つからないうちに、大魔王の島に着いちゃったりしたら、どうしよう?」


「王子と、七人の仲間」が大魔王を倒す、と、はっきり言われているということは、裏返せば、「王子と、五人の仲間」では、大魔王は倒せない、ってことだ。

 もしも、そんなことになっちゃったら、どうしよう……?


 心配するマッサに、ガーベラ隊長は、


「大丈夫です。」


 と、マッサがびっくりするほど、自信のありそうな声で答えた。


「魔女たちの予言は、これまで、外れたことがない。あと二人の仲間は、旅の途中で、必ず見つかりますよ。」


「あっ……そう? ……うん……そうだよね! きっと、そうだっていう気がしてきた!」


 マッサは、笑顔になってうなずいた。

 よく考えたら、まだ《二つ頭のヘビ》山脈を越えることもできていないのに、そんな先のことまで考えて、暗くなっている場合じゃない。


 それに「仲間」っていうのは、「親友」と同じようなものなんだから、無理をして、そのへんから見つけようとしたり、無理やり、なってもらおうとしたりするのは、変だ。

 きっと、隊長の言うとおり、あと二人の仲間は、ここからの旅のどこかで、自然に見つかるんだろう。

 今は、予言を信じて、進んでいくしかない!


 マッサが、そんなふうに、決意を新たにしたときだ。


「あっ、川が、見えてきましたよ!」


 道の先のほうをうかがっていたタータさんが、そう叫んだ。

 みんなは、石がごろごろしている道をくだり、涼しい水音をたてて流れる川へと近づいていった。

 すぐそばまで降りてみると、川の幅は、車が二台すれ違って走れる道路くらいあった。

 水の流れは、かなり激しい。

 突き出た岩にぶつかって、あちこちで白いしぶきを上げたり、渦をまいたりしている。


「確か、川に着いたら、橋を渡るんじゃなかった?」


 マッサが言うと、ディールが、


「おっ……橋ってのは、まさか、あれのことじゃねえのか!?」


 と、川の、少し下流のほうを指さした。


「ええーっ……!?」


 と、マッサが言って、


「何てことだ。」


 と、ガーベラ隊長が呟き、


「おや、おや、まあ!」


 とタータさんが叫び、


「勘弁してくれよ。」


 とディールが言い、


「やれやれ。」


 とフレイオが言った。

 そして最後に、ブルーが、


『はし、ない!』


 と言った。

 その通り。

 そこにかかっているはずの、古い木の橋は、流れの中に突っ立った何本かの杭を残して、完全に壊れ、崩れて、流されてしまっていた!


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