意外なハルマの大弱点
翌日。
「よく寝たー! なんか幸せな夢見てた気がするー!」
気絶したまま寝っぱなしだったツバキが起きた。
攻めるときは攻めまくるくせに受けの耐性が異様にない。
幸せな夢とか言ってたから、女子に責められていたのも絶頂の要因かもしれない。
ダメだ。こんな事言ってたら僕の品格が疑われる。
まぁ吐き気がしちゃうせいでコンビニの成人向け書物コーナーに目を向けれない高一男子ですけれども。
そんな時、町内警報が鳴り響いた。
『ビッグバグ襲来! ビッグバグ襲来!! 一般市民の皆様は振動に備え、狩人の皆様は直ちに集会所に集合してください!!』
「おいまじかよ!?」
「いやでも、ハルマくんの傘があれば……」
「なんの騒ぎだ?」
事情を知らないハルマだけ、のんびりとコーヒーを啜っている。
「バケモノだよ、モンスターの中でも!!」
「どんなのだ?」
「えっと…でっかいダンゴムシみたいな!」
「……あっと……それなら……俺に期待すんのは間違いだぜ……?」
申し訳なさそうにハルマは言う。
なんで、と3人に詰め寄られ、少し狼狽しながらハルマは答える。
「あのさ、外骨格って知ってるか……?」
3人はその言葉に黙る。そして、顔を見合わせる。そして、ハルマの傘をみる。
「「「……終わった」」」
3人同時に絶望した。
「……とりあえず、行くだけ行こう」
絶望した顔のまま、イノは銃を背負う。
「……そうだね……」
死にそうな顔で、ツバキは鎧を着込む。
そしてモミジは……。
無の面持ちでハルマの傘を眺めていた。
「ねぇ、この傘防御貫通とかないの?」
「あるわけねーだろ。あったらあったでそれこそチートだ。聖剣エクスカリバーやら聖槍ロンギヌスやらじゃねーんだよ」
呆れたようにハルマは言う。
最後の望みが絶たれたとばかりに、モミジは大きなため息をつく。
「じゃあ防御貫通の武器買えば?」
「忘れたか? 俺の生身の攻撃力は2だ」
提案したはいいものの、ハルマの言葉にツバキは轟沈する。
「まー、嘆いても仕方ねぇ。行くか…」
イノの言葉に、ハルマたちは家を出た。
「ところで、そのダンゴムシはどんくらいの大きさなんだ?」
集会所に向かう道すがら、ハルマはモミジに尋ねる。
「んー、どのくらいなんだろう…大きいからなあ……」
「うーん、例えでいいからさ」
「高さがビル一個分」
「いやなんだそのでかさ!?」
「横は……えっとねぇ……」
「いや言わなくていい……」
ハルマでさえ、絶望してしまった。
終わりだ。