ようやく16話か。遅いな。
間あいて申し訳ございません!
頑張ります!(何をだ)
「広いな……意外と……」
ダンジョンの中は思っていたより広大だった。
くそ広い。
何が出ようともハルマがワンパンしていくため、パーティとしてはおめでたいことにノーダメージなのだが、スタミナに関しては話が別だ。
炭鉱を歩き回って敵を殴る。文字にして見るよりもかなり骨が折れる。
いやノーダメージではあるから、ポッキリとはいってないのだが。
「……もう、これでゴブリン何体目だ」
「えっとね、122体目」
ハルマの問いかけに、モミジが答える。恐怖のバロメーターが振れ切っているのか、もはや普段と変わらない。一つだけ違うとすれば、普段なら絶対やらない、撃破数カウントをしている。
何も確認せずにさらりと言った。1から数えていたのだろう。どこかおかしくなってる、こいつ。
「やばいな」
なんで122なんて切りの悪い数字かって?
なんとなくに決まってんだろ。
「ドラゴンとかも出なかったっけ」
「10体ほど」
「なんでそんないるんだよ……ボス級じゃねーか」
ボス級のモンスターが雑魚キャラとして扱われている。悲しすぎる事態だ。
「ところで防御貫通とかそういうのこの世界には存在するのか?」
「するよ。例えば……ドラゴンの中には防御貫通持ってるのいるよ」
モミジがさらりと答える。そういえばモミジは意外と博識なのだった。
「はぇー。ぜんぜん気にしなかったわ」
「はは。私もだよ」
モミジは乾いた笑みではなく、普通に笑う。
元気になったようで良かった良かった。
これがツバキのセクハラ効果なのかバロメーター破壊効果なのか、僕には判断がつかないが。
ハルマたちはずんずん潜っていく。
気づけば最下層だ。はやい。
「なんかいる」
そこにいたのは、ハムスターのような小動物だった。
「あれがここのボスか?」
「……みたい」
さすがのモミジも驚きの表情を浮かべている。
当然だ。ハムスターがボスなんて誰が想像するだろう。
だがそこはお気楽ツバキさん。
「ラッキーじゃん! あれ超弱そう!!」
んま、弱そうだけどもね!?
ツバキは大槌を構えると、ハムスターに向かって駆け出した。
だが。
──シャアアアアアアアアアアアッ!!!!
雄叫びを上げて、ハムスターが反撃を仕掛けた。
ハムスターの反撃くらい、と思ったそこの君。
ツバキをよく見ろ。
ドMツバキが苦痛の表情浮かべてるぞ。
鎧がボロボロだぞ。
よく見ろ。ハムスターの反撃が何だって?
分かればよろしい。
「な、なにあれ!! 小動物の火力じゃないよぉ!!」
ツバキは半泣きでハルマの後ろに隠れる。
そしてそれに乗じてツバキもハルマにぎゅっとしがみつく。
「……邪魔だお前ら」
「やだ、離れたくない。離れたら死ぬ気がする」
再び表情が死んでしまったモミジの言葉に、ツバキはうんうんと頷く。
女子2人にくっつかれる。
面白いくらいのハーレム状態なのだが、殺人ハムスターを前にはそんな悠長なことは言っていられない。
「とりあえず、喰らえ」
ハルマは石を蹴飛ばす。
ハムスターは食らう。そして眉間から赤い噴水を吹き上げる。
「石の威力じゃねーぞ」
「HP半分削れた」
ハルマの能力で、ステータスを見る。
「あ、あれ? ハルマくん単体の攻撃力って確か2じゃ……」
モミジが困惑する。感情を取り戻したようで、僕は嬉しい。
「わからんが急所かなんかに当たったんだろ、ラッキー」
ハルマがガッツポーズをとる。
ハムスターがゆっくりと起き上がる。
目が真紅に染まっている。お怒りのご様子を通り越して、ガチギレなさっているご様子である。
──シャアアアアアアアアアアアッ!!!!
段々とハムスターの雄叫びの声が低くなり、体が肥大化していく。
気づいた頃には、最深部の小さな部屋を埋め尽くすほどにまで巨大化していた。
「おー、目盛り覚醒タイプか」
「なにそれ」
「HP削ると覚醒するやつ。俺が勝手にそう呼んでる」
ハルマは折りたたみ傘を構える。
投げる。
はい終了。名も無きハムスターさん、出演ありがとうございました。
帰宅。
「ほんとハルマくんつよいねー」
今、ハルマはモミジのベッドの中にいる。
どうしてこうなった。
経緯はこうだ。
家に帰るなり、緊張が解けたツバキが、モミジにいつも通り襲いかかった。
モミジはいつも通り逃げ出した。
いつもと違ったのは、モミジがハルマを盾にしたことだ。
するとツバキが攻撃力に対する恐怖からか、大人しくなった。
要約すると、ハルマはモミジのボディーガードとなったのである。
かなーり、リア充風味のボディーガードだが。
「……? あれ、なんかここ固い」
「やめてそこ触らないで」
……やばい、R-18判定されないでくれ、頼む。