第2のダンジョン
「おはよう」
誰にともなく、俺は言いながら起き上がる。
もう日は昇っている。
「あー、心配したんだよ、ハルマ君」
部屋を出て、リビングに向かうなり、モミジがハルマに声をかける。
「心配ってなにが?」
「丸一日寝てたんだよ」
イノがため息混じりに言う。呆れ返っているのだろうか。
「……ふーん」
「さして驚いてないね」
ツバキがすぐにハルマの薄味反応にツッコミを入れる。
「いやだってこのくらい、よくある事だから」
「え」
「三徹した次の日とか」
「今まで徹夜続きだったの?」
モミジは首をかしげながら、ハルマに尋ねる。
違うと思う。お前らが引っ張り回したからだと思う。
「1日消し飛ばしたか。ま、いいか」
「消し飛ばしたって言い方間違ってないようで間違ってると思うの」
ツバキがまたもツッコミを入れる。あれ、お前ってボケじゃなかったか?
「とりあえず、今日は何するんだ?」
「前ダンジョン行ったろ? あれよりもう少し難易度高いやつ行こうと思って」
イノはゲームを攻略していくかのように告げる。
そこでハルマは、モミジをちらりと見る。
思考停止していた。
「……行くか」
そこでモミジはぶっ倒れた。
目だけはカッと見開いていて、怖いし不気味だった。
「そういや難易度高いっつったけどいくつだ?」
「前回が3だな。で、今回は不明」
「なんでだよ」
「なんせ、挑戦者が帰ってきてない……ってのはもちろん嘘で」
「嘘かよ」
「まぁまぁ。で、今回のやつっつーのは新規なんだよ」
「新規?」
「新しく見つかったやつだ。昔の炭鉱らしいんだけど、今じゃモンスターがうようよいるらしい」
「内部詳しくわかってんじゃねぇか」
「いやー、それがよ、今まで発掘されてねぇこともあって、新種が多いのと、まだ全部探索しきれてねぇんだと。炭鉱だしな。かなり広く掘ってたらしい」
ハルマとイノがダンジョンについての話をしている間、モミジは無我の境地と言った面持ちでフラフラと心もとない足取りで隣を歩いていた。その隣にはいつでも支えられるよう、ツバキがスタンバイしている。
この構図に、僕は欲望を感じてしまうのだが気のせいだろうか。
とにかく、ダンジョンに向かう4人は、ときどきツバキがモミジを支えながら(&お触りしながら)歩いていた。
いつもは「やめてよ!」とか言ってツバキの手を跳ね除けるモミジも、今は無表情で無言でそっと払うに留まっている。
可哀想になってきた。展開変えてダンジョンやめさせようかな。
そんなことしたら色々と崩壊するからやんないけど。