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お墓参り  作者: 水々
1/6

階段を登っていく

一段ずつ階段を登っていく。 水平線から、少しだけ顔をみせた太陽に照らされながら、老いた体をゆっくり動かしていく。


「喉が渇くわね」


独りで言うと


「コーヒーならあるぞ」


って、返ってきて欲しかった。


「もう夏かしら」


また独りで言うと


「海、行きたいですね」


って、言って欲しかった。


「クーラーの効いたゲームセンターにでも、いきたいわね」


独りで言って


「ついでに勝負するか? どうせ俺が勝つけどな」


返ってこない。


「少し、脚が痛いわね」


呟いて


「こんなところだけど、ゆっくり休んでいいからね。 天ちゃん」


聞こえなくて。


「私も、もう歳かしら」


言って


「そんなことないよ~。 天ちゃんはまだ若いって~」


悲しくなって。 でももう聞こえない。 だって言う人が、いないんだもの。

お墓までは、まだまだ遠い。 いや違う。 遠いと感じているだけだ。 きっと、実際はもっと近いんだろう。

登りきった頃には、もう太陽が丸く見えるようになっていた。 目の前にあるのは沢山のお墓。 ほとんど、というか全て知っているお墓。

みんなみんな死んでいった。

私のように、歳を取ることもなく、死んでいった。

私を残して、死んでいった。

夢を叶えられずに、死んでいった。

私も早く逝きたかった。

でも無理だった。

なんでだろう、分からない。


「ばーか、リア充めー、どうせあの世でイチャイチャしてんでしょ、ちくしょうー」


つい口走ってしまった。 ババアが使う言葉じゃないわね。


鬱憤うっぷんばらしもすんだところで、一つ目のお墓に歩み寄った。 少し金色に染めた髪、私に憧れを抱いてくれた、最初の人。 素直だったあいつが、そこにいるような気がした。


そのお墓に入っているのは──





藤堂倉間とうどうくらま

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