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55 助っ人乱入

「ミー、とってもとっても期待していたデース! 『命剣』同士のバトルが見られて、有用なサンプルデータを獲れると思ていたネー!」


 不満爆発とばかりにジュディが訴える。


「それなのに、こんなアッサリ終わっちゃサンプル全然取れないネー! ミーは欲求不満デース!!」

「欲求不満言うなッ!?」


 真面目なタチカゼは、また顔を真っ赤にして激昂した。


「こうなったら、ミーがやってやるデス!!」


 え?


「ミーがタチカゼさんの手助けをして、ユキムラさんに対抗させるデース! ミーはタチカゼさんの応援をすると宣言したから問題ないはずネー!!」

「いや、ありまくるわ!!」


 聞いてタチカゼは大慌て。


「これはそれがしとヤツとの正式な決闘だ! 一対一であらねばならんのだ!! なのに助太刀を許しては……! しかもそれが婦女子の手では……!!」

「うん、いいよ」

「はいッ!?」


 僕の即答にタチカゼ益々大慌て。


「どうせお前一人じゃ勝負は詰んでいたんだ。ここで新しい要素を加えないと、僕だってつまらん」

「何を……!?」

「ハッキリ言ってやろうか。お前は舐められてるんだよ僕から。悔しかったら、その娘と一緒に一発ぶちかましてみな」


 タチカゼ自身に思い知らせるにもいい機会だと思った。

 ヤツが気分だけで毛嫌いしているフェニーチェも魔法研究者が、ヤツにとっていかなる援けになるか。


 そしてヤツは、どんな気分でそれを受け入れるのか。

 僕にとっても興味がある。


「おのれ……! おのれ…………ッ!!」


 悔しさで全身をプルプル震わせるタチカゼ。

 ヤツ自身、これまでの打ち合いで力の差は嫌と言うほど思い知らされている。

 それを理解できないほど愚鈍と言うわけでもあるまい。

 受け入れがたい事実を受け入れているからこそ、ヤツは悔しさに身もだえしているというわけだ。


「タチカゼさん! やってやるデース!!」


 ジュディは快活に叫ぶ。


「これまでの短い過程を観察しただけでも、試してみたいアイデアがいくつか浮かんだネー! それが上手くいけば、きっと勝てるデース!!」

「何だと!? あんな数合の打ち合いで、何か閃いたというのか……!?」


 自分は何も手が浮かばないのに……!

 という言葉がタチカゼの表情に浮かんでいた。


「ユキムラ!!」

「ジュディが戦いに加わるというのなら、我々も……!」


 離れたところから見守っていたクロユリ姫とルクレシェアも俄かに慌てだすが、無論僕はそれを止めた。


「いいさ、これはアレだ、ハンディキャプってヤツだ」


 元々一対一の状況でも僕が圧勝の流れだったんだ。

 ジュディが参戦することは、一方的な勝負をほんの少し公平に傾け直しているだけで、一種の余興のようなもの。


「タチカゼ。お前との勝負は実につまらなかった。ジュディの助けを借りて、ほんの少しでいいからもっと僕を楽しませてくれ」

「クソッ……! いい気になりおって。いい気になりおってぇぇぇぇッッ!!」


 タチカゼは悔しさに額の血管がブチ切れそうになっていたが、それがいい。

 もっと平静を失わせた方が、ジュディのペースに乗せられやすくなるだろう。


「タチカゼさん!! 挑発に乗っちゃダメデース!!」


 ジュディは存外ああ見えて観察力、判断力に富んでいる。


「今からミーの言う通りにするデース!! タチカゼさん、手を繋ぐネー!!」

「何ィッ!?」


 何故そこで声を裏返す。


「男女で手を繋ぐなど……! そんな童のようなマネをしろというのか!? まして将来を誓い合った仲でもないというのに、男と女が肌を触れ合わせるなど……!」

「つべこべ言わずに繋ぐデース! 将来を誓い合わないとダメなら、あとで結婚ぐらいしてあげるデース!!」


 ジュディさん、いきなり男らしい。


 半ば無理やりタチカゼの手を取って強く握った。


「ひゃわわわわわわわわわ!!」

「ずっと試してみたかったデース! すでにモナド・クリスタルは空っぽにして準備完了してたネー!!」


 ジュディの右手にも、フェニーチェ魔法技師の証モナド・クリスタルをはめ込まれた腕輪が輝いていた。

 フェニーチェ出魔法を使う者たちは皆、あの水晶に魔力を蓄積し、魔法に変換する。

 そのモナド・クリスタルの蓄積魔力を空にしているということは……。


「別のものを注ぎ込むため、か……!」

「その通りデース! タチカゼさん! 風剣をプリーズ!!」


 いきなり言われて戸惑うばかりのタチカゼ。

 言われるままに風剣を作り出す。


 そしてジャキンと、二振りの風剣が現れた。


「なあッ!?」


 それに驚いたのはタチカゼだった。


「何だと!? どういうことだ!? ヤマウチ家の者しか作り出すことのできない風剣を、何故異国人のお前が……!?」


 そう、二振りの風剣のうち、一振りを作り出したのは当然タチカゼ。

 それに対してもう一振りは、タチカゼと右手を繋いだジュディが、左手から伸ばしたものだった。


「既に実験証明された現象デース!! 『命剣』のエネルギーはモナド・クリスタルで変換し、魔法技師が使用可能ネー!!」


 かつてクロユリ姫とルクレシェアがやったことを、もう自分の者にしたということか!?


「準備は済んだネ! これから本格的に実験開始デース!!」

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ソードマスターは聖剣よりも手製の魔剣を使いたい
同作者の新作スタート! こちらもよければお楽しみにください!
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