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心落  作者: とにあ
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緑の羊と王様

 

 僕は緑の羊。

 物言わぬ偉大な母様の子供のひとり。

 母様と王様の愛で僕らは健やかに育った。

 庭を駆け巡り世界を楽しんだ。

 王様はたくさんのごはんとおひさまをくれていろんなお話をしてくれる。

 世界はここより広いんだ。

 僕らより先にいるにいさんねえさんを僕は見あげる。

 彼らの多くは動くことなくひとつの場所で王様を待っている。

 王様は彼らが咲かせた花にすごく嬉しそうな笑顔を見せる。

 僕は緑の羊。

 花は咲くのだろうか?

 僕は偉大なる母様の子供。

 母様から引き継いだチカラがある。

 だから僕らは多くを学ぶ。

 僕らが求める高みに至るために。

 王様が何処かに行くのかと聞いてきた。

 僕はあの塀の先を目指すのだと伝えた。

 外は厳しいぞと王様は言う。僕はそれでもあの先に僕の運命を見た。

 王様は僕の決意をたたえてくれた。

 特別に王様が力をわけてくれた。みなぎる力は僕の理解力をゆっくりと高めてゆく。


 塀の外は緑色。

 僕は紛れて旅をする。

 いろんないきものがこの世界にはいる。

 母様が僕らに伝えた記憶の世界とはまるで違ういきものたちが。


『うまそうだな。食べてやる』


 大きないきものが大きな口をあけて僕を飲みこんで、すぐに吐き出した。


 僕は緑の羊。

 この緑は毒の色。


「美味しく食べてくれないなら僕が食べちゃうよ」


 王様がくれるごはんよりずっと貧相で美味しくないけど僕はまた考える力を得たんだ。

 母様から引き継いだ在り方。


 僕らは美味しく食べてもらうために生まれた。


 僕らは母様のように食べられるために言葉も動きも捨てた偉大な姿から外れてしまった。

 それでも、僕らは望むんだ。

 美味しく食べてもらいたい。

 でも、丸呑みは嫌なんだ。

 いろどりのマントに包まれて。

 柔らかに混ざりあって。


 僕はいろいろ旅をした。

 塩の海も泳いだし、あふれる溶岩と共に弾けもした。

 僕を丸呑みしようとした奴はちゃんと食べてあげた。

 旅をして僕を何度かやり直して僕は王様の庭に帰る。

 庭にいる僕らは変わらず僕を受け入れる。

 王様は僕を見て帰ってきたのかと撫でてくれた。

 帰ってきた僕は気がついた。

 答えは最初からここにあったんだ。


 パイの花も、酒の果実を実らせる木も、金平糖のススキ草も王様に美味しく食べてもらいたいんだと。

 僕は僕に実った果実をおひさまであたためる。

 美味しく食べてもらうために!



 一口食べた王様があわてた様子で盃をあける。


「ムッチャモサモサしてる!」


 僕は改善を心に決めた。


 僕は緑の羊。

 バロンポルトガッシュ。

 僕は僕の意志で遺伝子を改変しつづける。

 偉大なる母様は三個九八円のダンシャクイモ。

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