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風恋
じくじくと痛む胸の痛みに目を覚ます。
風の唄を聴きなさいと笑っていたのは叔母様で。
花の声を梢の歌に耳を傾けてごらんなさいと笑ってらっしゃる。
「叔母様の耳には聞こえたのですか?」
鬼籍に入られた叔母様は答えを下さらない。
庭ではゆっくりと紫陽花が葉を広げ、梔子の甘い香りが漂う頃に笑う少年は愛しい人。
じくじくと胸が痛むのです。
あなたを愛おしいがゆえにあなたの心が不安なのです。
差し出される梔子の白い花。
折れた花弁は傷みを進める。
旬を過ぎた花は落ちる。
私はあなたにとって美しい花であり続けられない。
あなたは私に枯れない花をくれない。
死ぬことのない蝶はくださっても。
贈られる花はいつも生花。
「早く、追いつきたいんだ」
あなたの笑顔がすべてを溶かす。




