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001:タマゴ

ブックマークありがとうございます!!

駆け出しですが、非常に嬉しく思います。励みにさせていただきますね!

 気がつけば、森の中にいた。

 ……森?

 ちょっと待って。森? 何故?

 さきほど聞いた話では、異世界に転生する、ということになっていたはずだ。つまり、今まさに僕は生まれたてであるはずで、それを親が祝福しているはずで……それが何故森?


 よし。一度整理しよう。とりあえずは自分の置かれた状況を把握することが一番大事だ。まず、ここはどこだ? 周囲を見渡す。でかい草と、どでかい花と、さらにどでかい木が見えるばかりだ。どう控えめにみても、市街地でないことだけは明らかだ。なにせ、親らしい人影どころか、動物の姿は一切見受けられない。

 完全に、屋内に生まれるつもり満々だった。両親との対面を楽しみにして待っていたのに。

 ということは、これは、まさか、捨て子か……? 

 まずいぞ。生まれたての無防備な状態で、何が出てくるかもわからないような森に捨て置かれたってことか? それは非常にまずい。生まれて早々命の危機じゃないか。親の人間性を疑うと同時に、自分の身の危険を感じ、身構える。これは早急になんとかしなければ。

 見るに、ここは森の中でもある程度開けた場所のようだった。こんなところに居ては、外敵に見つかりやすい上に、身を守る手段が何一つない。隠れる場所や、せめて遮蔽物があるようなところに行かないと。そう思い、急いで立ち上がる。


……ん?

……立ち上がれた?


 待って。今僕は赤ん坊なはずだよね? 生まれたてなんだもん。それとも、ある程度成長してから転生した? それはおかしい。もしそうなら、僕が転生する前のこの体に宿っていた人格はどうなった。まさか僕が乗っ取ってしまった?そんな馬鹿な。ありえない、と思いたい。

 さっきからおかしいことだらけだ。さすがに混乱してきた。とりあえず落ち着いて、今できることから始めよう。僕の体はどうなってるんだ? 体をチェックする。

 腕を動かそうとする。体からの反応は無い。

 首を動かそうとする。体からの反応は無い。

 足を動かそうとする。お、歩けた。

 ……どういうことだ?


 落ち着こう。再三再四確認するが、自分の現状の把握が最優先だ。

 再び、体の各部を動かそうとする。しかし、うまくいったのはやはり足だけだった。何なんだこれは。半身不随? だとしたら、普通は動かなくなるのは下半身だろう。

 体を動かしてみた実感として、足が異様に短いのがわかる。生まれたてだから仕方ないにしても、視界の高さに比べてもこの足の短さはちょっとおかしい。また、やたらガニ股にしか歩けないのも若干気になる。体と言えば、今の僕のサイズは、想定していたよりかなり小さいようだ。周りの草が大きいのか、自分が小さいのかはわからないが、木がまだ若そうにみえる割に大きいことを考えると、自分が小さいという線で考えたほうが良さそうだ。鏡があれば簡単に自分の体の状況を確認できるけど、生憎とここは森の中である。そんな気の利いたものがあるはずも無い。

 何か鏡の代わりになりそうなもの……そうだ。池か湖か何かを探そう。風はそう強く無いようだし、水面に僕の姿が映るはずだろう。

 そういえば喉も渇いている。僕の体がどうあれ、命をつなげるためには確実に水分補給は必要だろう。


 そうとなったら急いで池を探さないと。歩けるのは予想外ではあるが、むしろ好都合だ。これを活用しなければ。と、歩き出したところ


 ガサッ、ガサガサッ


 と、草むらの揺れる音が聞こえる。

 ……何かが居る。音の聞こえ方から推測するに、そう近くは無いけど、確実に居る。辺りを見渡すと、それは簡単に見つかった。


 トカゲだ。

 しかし、ただのトカゲではない。大きいのだ。

 オオサンショウウオを見たことはないが、これくらいなのだろうか。体長は、およそ2メートルほどだろうか。正確な大きさは定かではないが、見た感じでは今の僕の10倍ほどある。


 幸いにして、トカゲは僕には気付いていないようだ。欠伸をして、ダラケきっている。野生動物がそんなことでいいのだろうか。

 こんな怪物みたいな生き物に見つかったら、僕は丸呑みにされてしまうだろう。せっかく転生したにも関わらず、丸呑みにされてハイ終わり、では余りに切ない。切なすぎる。ここは安全をとるために、トカゲとは逆方向に進もう。いのちをだいじに、というやつだ。

 忍び足で慎重に移動する。トカゲからは目を離さずに、見つからないように最新の注意を払って歩く。トカゲが見えなくなってからも、周りの状況に常に気を配って移動した。トカゲは一匹とは限らない。他の個体もあの大きさがあるとしたら、僕の命はそれまでだ。考えただけでもゾッとする話だ。


 そうして歩くうちに、念願の池を見つけた。よかった! これで水を飲めるし姿を確認できる! そうして覗き込んだ水面には、一個のタマゴが映っていた。


……え?




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