015:ボス狼改め
この土日、久しぶりに休日らしい休日を過ごせています……やっとこさ更新出来る喜び。ブックマークを解除せずに居てくださった方々、本当にお待たせいたしました。
そしていつの間にやら50000PVを突破です!「気付いたら」なのはちょっと残念ですが、皆様の目に触れていると思うととても有り難く感じます。
今後の更新ですが、私生活が多少落ち着きはじめているので、しばらくはちょくちょく更新出来ると思います!
ボス狼はとぼとぼと群れから離れていく。いや、元ボス狼と言うべきだろうか。戦いに敗れてから一度たりとも振り向かない。今まで連れ添ってきた群れだ。思い入れは深いものだろう。にもかかわらず、ちらりとも目を向けずに去っていくのは、その群れが既に新しいボスの物であるという認識から身を引いているのか、負けてしまった自分への苛立ちからか。寂しそうに、悔しそうにしながらも、毅然とした態度を崩さないその姿は潔く、感銘を受けてしまうほどだった。“立つ鳥跡を濁さず”ならぬ“立つ狼後を濁さず”という訳だ。
元ボス狼は、一匹狼となった。【ステータス閲覧】によると骨折をしていて、しかもリーダー争いの直後であり消耗しているところである。つまりは、絶好のカモ。狙い目だ。思い描いていた通りの展開を一発で引き当てることが出来た。ご都合主義が過ぎるというか、自分の運の良さにそろそろ呆れてくるレベルだ。まあ、自分に利益と成るように物事が運ぶのは助かることなので、文句はない。むしろ諸手を挙げて歓迎したいところだ。
行く当てもなくふらふらと彷徨う元ボス狼の後をつけながら、僕はいつ仕掛けるべきかと攻めあぐねていた。元ボス狼の潔さに感動していて、すっかり襲いかかるタイミングを逃してしまったのだ。
うーん、どうしたものかなあ……いや、群れの近くで戦闘してフォレストウルフ達に囲まれるのは避けたいから、ある程度時間をおいてからの方が良いんだ。きっと。
自分に言い聞かせながら、元ボス狼の尾行を続ける。
《スキル【気配遮断】を獲得しました。》
要は、タイミングさえ有れば良いんだ。今はただ移動してるだけだから、いつ仕掛けるか迷っちゃうんだ。元ボス狼が無防備になるタイミングが有れば、そこを突けば良いんだよ。
野生動物が無防備になる瞬間といえば、相場が決まっている。
食事中か、排泄中だ。
食事はさっき、まだ群れのボスで居た頃に済ませて居た様子だったから、すぐには期待できそうにない。となると、狙いは排泄ちゅ……それはちょっと、嫌だぞ……
今回、フォレストウルフを狙ったのはレベル上げのためではない。いや、レベルもついでに上げられれば願ったり叶ったりではあるけど、主目的はそちらではない。
進化によって手が生えて、広がった戦略がどの程度通用するかを確かめるためにフォレストウルフという格上の生物を相手取るのだ。不意を突いて仕留めるのは、趣旨とずれているような気もする。
いや、不意を突かなければ僕が危険かもしれない。進化キャンセルして大きくなったとはいえ、僕は小さい。身長はせいぜい30センチ程度だろう。一方で、元ボス狼は高さだけで、少なくとも僕の二倍は有りそうだ。正面切って戦って、勝てる相手かは分からない。
あれ、もしかして僕、すごく無謀なことしようとしてるんじゃ……? だったらもう不意打ちしかない。ああ、でも排泄中を狙うのはさすがに嫌だなあ……
そんな堂々巡りな出口のない自問自答を繰り返し、元ボス狼って呼び方だといかにも追放された人って感じで可哀想だなあ、などと良い感じに脱線していたところ、はぐれ狼(この方がまだマシかな)は水場に出たようだった。
危ない危ない。見失うところだったよ。ここで見失ってしまっては今までの尾行が全部パーになっちゃう。
はぐれ狼は水辺まで足を引きずり歩いて行き、ぴちゃぴちゃと水を飲み始める。
しめた。水を飲んでいる間なら、そこまで周囲に対して警戒はしていないはずだ。絶好のチャンス。
僕は低木に身を隠しながら、可能な限り、ギリギリまで近づく。殻の中からお手製の槍を取りだし、確かめるように握りしめる。まずは機動力を完全に封じる。骨折しているのは右の後ろ足。左の後ろ足も動かなくしてしまえば、いくらか安全に戦うことが出来るだろう。
足音を殺してはぐれ狼に近づく。槍をもう一度握り込み、一気に突き刺す!
「キャイン!」
《アビリティ【槍術】を獲得しました。》
《スキル【不意打ち】を獲得しました。》
はぐれ狼は情けない声を上げながら飛び上がる。その瞬間、僕の手から木の槍が離れていく。
しまった! 槍がはぐれ狼の腿に刺さったまま、手を離してしまった。
はぐれ狼は、左後ろ足をがくがくと震わせながらこちらを睨み、呻り、威嚇する。槍は足に刺さったまま、手の届かない位置まで持って行かれてしまった。これは拙い。素手で格上と対峙することになってしまった。こんなことなら、もう一本予備を作っておくんだった。僕はいつだってそうだ。普段は慎重な方なのに、肝心なときに準備不足なんだ。これではすぐにやられてしまう。こんなことなら、進化キャンセルしてから多少なりともレベル上げをしておけば良かった。大体からして、レベル1で格上に挑もうっていうのがそもそもの間違いだったんだ。
もう終わりだ。ここで食べられて死ぬんだ。そう思った。
しかし、はぐれ狼はこちらを威嚇するばかりで襲っては来ない。余計なことをぐだぐだと考えていたのに。時間ならいくらでもあったはずなのに。
……これは、もしかして、最初の不意打ちがかなり効いているのではないだろうか。
はぐれ狼は、右後ろ足こそ地についてはいないが、他の三本足で立っている。左後ろ足は震えては居るが、移動できないというほどでもないように見える。
僕のことを格下に見ていれば、こちらを認識してすぐに殺しに掛かったことだろう。それでも未だに睨み合いが続いているということは、こいつ、僕のことを警戒して攻めるに攻められないんだな。
僕は落ち着き直して、両手を握り、拳を構えようとした。その瞬間――
「ガアッ!」
噛みついてきた! 僕はすんでの所でこれを躱す。
「ガアッ! ガアガアッ!」
二撃目、三撃目と、はぐれ狼は次々に牙をむく。後ろ足をかばってか、極力動こうとして居ないことが幸いして、何とかこれも躱すことに成功する。
《スキル【見切り】を獲得しました。》
スキルを手に入れたとはいえ、この勢いで攻め立てられては堪らない。一度距離を取って立て直す。
またしてもお互い睨み合い、相手の出方を伺う膠着状態に入ってしまった。
……これ、どうしたもんかね?
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個体名:なし Lv.1/30
種 族:魔物のタマゴ+1
HP :91/91
MP :34/34
攻 撃:74
守 備:156
魔 力:34
精 神:39
速 さ:48
ランク:F-
スキル:
【ステータス閲覧 Lv.5】【体当たり Lv.6】【踏みつけ Lv.5】【集中 Lv.4】【回し蹴り Lv.4】【殴打 Lv.2】【気配遮断 Lv.1】【不意打ち Lv.1】【見切り Lv.1】
呪文:
アビリティ:
【進化の可能性 Lv.-】【超成長 Lv.-】【食材の見分け Lv.4】【消音 Lv.3】【槍術 Lv.1】
耐性:
【打撃耐性 Lv.5】【毒耐性 Lv.4】【水耐性 Lv.4】
称号:
【異世界人】【採集家】【釣り師】
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