7.お祝いの最中に
珍しい能力を持っていることに喜びを感じて、お祝いを企画。
当日になってワイワイやっていたら、電話がかかってきた。そして、
真眼が起きる頃には、下がドタバタとしていた。今真眼がいるのは二階なのだが、何をやっているのだろうか。気になりはするが、まだ布団の中に居たい。寝過ぎが良くないのは知っているが、それでも出たくない。
真眼は枕元に置いてある時計を見てみるが、まだ朝の5時だった。まだ寝れるじゃないかと安心し、下の事は置いておいて二度寝することに。
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「ふあぁ~....」
大きな口を開けて欠伸を一つ。真眼は時計を確認すると9時だった。
(ヤバい、寝過ぎた)
これが学校のある日だったらどうなってたか。真眼は、今が春休み中でよかったと、心から思った。神様に感謝と。
そもそも、こんなに時間に気にするようになったのは寝坊したことがあるからである。一度寝坊すると癖になって、何度も寝坊しては遅刻する、というのを繰り返してしまう恐れがあるのだ。
真眼は起き上がり、下へ降りる。一階へ近付くにつれて声が聞こえてくる。その中には女の人の声も混じっている。依頼人か、と思うと行きづらい。強に怒鳴られそうだ、いつまで寝てるんだ、と。
怒られる覚悟で一階の扉を開けると、目の前は暖簾で見えなかった。
「ちょっ...」
.....前見えないし!
しかし、こんなもの垂らしてたっけ?と思いながら避け、中へ入ると、
「あっ」
「へ?」
「うぉっ」
真眼に気付いた強が急いで、一人ではとても隠しきれないテーブルを隠そうと必死になっていた。
「何ですかこの豪華な光景は」
「まだ寝てろやアホ」
「寝過ぎは良くないんで」
「いい子ぶってんじゃねぇ!」
強に別の事で怒られてしまった。なぜか胸くそ悪い。
「今日は何月何日でしょうか!」
突然颯太が問うてきた。
真眼は暫く考えると、ようやく思い付く。
「あっ!今日お祝いしてくれる日だ!!」
「正解!」
相変わらずのイケメンスマイルを見せる颯太。
「これセットするのに一時間以内で済むと思って朝4時くらいからやってたのによ、梓と颯太が食べ物溢しやがって拭いてたら、次は梓が作り直した食べ物を持ってくる時、何につまずいたのか知らねぇけど転んで...ほんっとに災難だったわ、どうしてくれるんだ真眼」
「そんなこと言われても....」
災難があったのは仕方ないが、それをどうこうできるような超人ではないので対応に困る。
「本当にすみません、真眼ちゃん。私の不注意さが不幸を呼んで…」
「いやいやいや、ここまでしてくれてるんですから文句ないですって!しかも作り直しまでしていただいて、自分は充分幸福者ですから!!!」
隣の喫茶店の看板娘である梓が謝ってきた。かなり申し訳なく思ってしまう。
「それに、休みの日を削ってまでここまでしてくれてるんです…今までの不幸せさが滲み出てきますよ.....」
友達が少なかった過去を思い返してしまう。今この瞬間が一生続けばいいのに、と願う。
「しんみりした話はやめよーぜ。朝から夜までぶっ通しで盛り上がろうぜ!逸材なんだからよ」
「そんなに透視能力って貴重なんですか?」
「おうよ、お前は1兆くらいで売れるんじゃないか」
「う...売るって、前から思ってたんですけど、そんなに自分を売りたいですか!?」
「金になるなら」
「アンタお金持ちでしょうがあぁぁぁっ!!!」
苛立ちと怒りが入り混じって、どんな感情なのかわからなくなった。きっと苛立ちが大きいだろう。
「ささっ、食べてください!私腕を振るいましたよ~」
にっこにこな笑顔で梓は言ってきた。真眼も早く食べたくて仕方なかった。
「じゃあこのマグロいただきますっ」
真眼は目の前にあったマグロを一口口に含む。
「うっっっまあぁっ!!」
「そのマグロ市販のヤツだろ」
「高めなのを買いましたよ~!」
「ヤバイヤバイ、久しぶりに食べた気がする!!」
皆食べることに夢中になり、日々の疲れを忘れるほど楽しんでいる。
「真眼ちゃん、結構食べるね…」
「美味しいですからね!」
数々のご馳走の半分は軽く真眼が食べただろう。その胃袋はどうなっせるんだ、と誰もが思ってそうだ。
「こりゃあ余りはしないな。だいたい残飯処理って俺だから助かるわ」
「あぁ、僕の誕生日の時もそうだったね」
「誕生日会的なのやるんですか?」
「おう、めでたい日だからな」
「おぉっ」
イベント事は毎年やるようだ。真眼はこれからが楽しみになってきた。
「後は夜に回しましょうか」
梓はそう言った。
「えっ、まだ食べたい!」
「てめぇ、夜飯無くすつもりか」
それもそうか、と真眼は納得したが、それでもまだ食べたい。
梓は食べ終わった皿を片付け始める。真眼も手伝おうと声をかけたが、主役はごゆっくりと断られた。こんなに作ってもらって、黙ってるのも落ち着かない。
「よいしょっと~」
強が椅子に腰掛けると、全く同時に電話がなった。
「はぁ?タイミングよすぎだろ」
文句を垂らしながら強は受話器を取る。
「はいこちら…」
『助けて下さい!!!!』
耳がキーンとするほどの音量で言ってきた。大きすぎて真眼たちにも聞こえていた。
「ご…ご用件は.......」
『主人が急に暴れだしたんですっ、狼になって!!私今どうしたらいいですか!?死にたくないっ!』
これは事件だ。家の中で変化する事例はあるにはあるが、多くはない。身内に知られたくなかったり、今なれば家の人が死んでしまう、等ときちんと理由があるからだ。大抵なら変化するしないは操れる。今狼になった人は我を忘れてしまっているのか。
「家を教えていただけませんか。家の近くにある、目立つ建物とか…」
『はぁ!?家しかありません!』
「だからその…」
『早くっ!』
「なら、住所教えてくれっ」
『光町1丁目5番10号っっ』
「ありがとう」
強は受話器を戻すと共に立ち上がる。
「颯太、真眼。急いで行くぞ、命の危機だ!」
「えっ」
「驚いてる暇はねぇぞ真眼!梓、ちょっくら行ってくる」
「気を付けて!」
梓に告げると、急いで外へ出る。
「それで、どこだって?」
「光町1丁目5番10号つったかな」
「き…近所!?」
「マジか、案内しろ」
幸いその住所を知ってて安心する。二人は真眼の後をついていく。
三人は全速力で駆け抜ける。少々人が多くて、避けるのにも一苦労。
ここで、信号が赤になってしまった。
「マジか!!!」
「こんなときになんなんすか信号っ!」
真眼と強は信号に文句を言う。二人は足踏みをしながら待つ。
「青だ!」
真眼は猛ダッシュで信号を渡る。それに続いて後の二人も渡る。
「ええっと、ここら辺なんですよ」
「詳しく知らねぇのかよ」
「あのオレンジの建物は自分の家なんです!5番16号!」
「この付近だな」
強はどうするか考える。考える暇はないとしても、探す方法を。
「待って…叫び声聞こえない?」
颯太が言った。強も真眼も耳をすませてみると、確かに聞こえた。おまけに何かの鳴き声も聞こえる。間違いない、狼の鳴き声だろう。
「この家だな」
「早く行きましょう!」
立ち止まってたすぐ隣の家だった。
三人は急いで扉を開け、中へ入っていく。
「うっ…」
真眼が一番に玄関へ入ると、すぐそこには死体が転がっていた。まだまだ幼い男の子だ。
「死人出たか......。早く狼取っ捕まえるぞ!」
「あそこ!」
颯太が狼を見付けた。奥の台所だろう場所だ。
「真眼、お前は奥さんを探せ。俺たちであいつを殺る」
「わ…わかりました!」
「颯太いくぞ」
「了解」
二人は落ち着いた雰囲気で行動する。真眼も見習って行動したいところだが、死にたくない気持ちが強すぎて震えるばかり。
「早く探さないと…!」
真眼は恐れながらも探す。一番恐いのは依頼主だろうに。
ちゃんと見やすくするように改行入れました。見やすいかどうかはわからないですが...!
次もよろしくお願いします