6.青虫の正体
颯太から呼び出しをくらい、目的地へ行くと、真眼には見えないものが。それは….
「戻ったぞー」
結局探していた人は見付からずに戻ってきてしまった。
「よし、早速行きますよ」
「どこ行くんだよ」
「死体が倒れてる場所」
「それがどこにあんのか聞いてんの」
「交番の近くらしいですよ」
「ふーん、近くていいじゃねぇか」
「そうですよね」
中に入ったばかりだが、また外へ出る。
交番までは5分足らずで着くところにある。多少疲れてても普通に歩ける距離だ。歩く道は住宅街のため、比較的静か。人通りが少ないのだ。
そうして歩くこと数分、あっという間に着いた。
交番付近にはやはり警察や野次馬がたくさんいる。警察側は、颯太たちに気付いたのか、こちらへ寄ってきた。
「待ってました。こちらなんですが…」
警察が指したのはやはり死体だった。胸部を刺されたような跡が残っている。とても悲惨だ。
そんな中、真眼があらぬことを口にした。
「それで、死体どこですか?」
「は?」
「さ…真眼ちゃん?」
強と颯太はほぼ同時に声に出した。
透視能力はどこ言ったと言いたくなるような発言だ。
「え、死体どこですか…」
「いやいやいや、馬鹿にも程があるぞお前」
盛大に突っ込む強。警察側も驚きを隠せない。
「真眼ちゃんどこ見てる?あそこにいるんだけど」
「って言われても」
真眼には、地面には人など見えておらず、血だけが見えている。
目を擦ったり、素早く瞬きしたりといろいろしてみたが、人は見えない。目を細めても血しか見えない。
かなり視力が落ちたのかと思い始めてしまい、近くへ寄ってみる。
やはりいなかった。ここまで見てもいないのだから、いないだろうと結論付けたいところだが。
何かと気に食わず、ずっと地面を見てると見覚えのあるものが見える。その場にしゃがんでみると、
「あ!!」
「見付けたか?」
「今更見えたってことはないでしょ…」
「これって…青虫じゃ……」
「え」
あっけらかんとした声で強は反応した。何言ってんだお前と思いながら、死体の元へ近付いて行くと、
「うぉ!?これってあれじゃねぇか、あれ。あいつだ…えーっと」
強までもが何かに気付いたように声を発した。
「こいつ、今俺たちが探してたいじめられっ子じゃねぇかよ!?」
「なに!?」
真眼がそれを聞いて驚いた。
それよりも、颯太は混乱していた。青虫だの探してたいじめられっ子だのと、話が追い付かない。
「ちょっと落ち着こう。僕も警察も話が見えてないから!」
颯太は二人に言い付けた。
「まず、真眼ちゃんには青虫に見えてるんだよね?なぜだかわからないけど」
「そうです」
「んで、僕たちは人に見えてるわけだけど。強さん曰く探してた人なんですよね?」
「おう」
「でも、探してた人だって言う確証は…あります?」
「おうよ」
強は依頼主から貰った写真を颯太に見せた。
「似てるだろ?」
「確かに…」
死体が目を瞑ってても似てると言うことがわかる。髪型といい、口元といい、この死体はわかりやすい顔をしている。
「似てるけど、青虫は意味わからない」
「青虫はさっき踏んづけたやつでよ、幽霊だったから成仏させたんだよ。…………って、あれ」
自分の言ってる事がおかしく思えてきた強。成仏させたのに、なぜ今ここで死体となっているのか。そもそも、踏んだ場所はここではない。もっと遠いい所で踏んだはずだった。どうやって移動したのか、それとも、違う青虫か。そんなわけないだろう。今は寒いのだから、何匹も青虫がいるわけない。そもそも、いないのだ。
となると、やはりさっき踏んづけた青虫になる。そして、依頼主の息子になる。
「成仏できてないってこと?」
「真眼に青虫の成仏させたんだけどな…駄目だったか」
「それより二人とも」
颯太と強が話し合っている間に割り込んできた真眼。
「あそこに倒れているのは自分たちが探してた人なんですよね?死んじゃってますよ。これって、あの…自分が殺した事になっちゃうんでしょうか…」
「あ…」
そう言えば、と言う思いで颯太は声を漏らしてしまった。
「自分捕まっちゃうんでしょうか…」
「いや、それはねぇな。だって相手は人間じゃねぇんだから。俺たちはそういう奴等を殺したり、この世から消し去らなければならねぇ職業だからな。こいつを殺したって罪にはならない」
「本当ですか!?」
「警察が証明してくれる」
「これは罪には入りませよ」
「よかった…!!」
安堵の表情を浮かべた真眼。かなり安心した様子。
「罪があるのはこの母親だな」
「え?」
「幽霊と知っておきながら、俺たちに黙ってるのは違犯だ。知らなかったら別だが」
「そうなんですか…」
「警察さんよ、俺こいつの母親の電話番号知ってんだ。事情聴取とでも行ってくれ」
「言われなくても承知の上です。では、電話番号を拝見させていただきます」
強は警察に紙を渡す。
「確かに預かりました。それでは、事も解決しようとしてるところであります。あなた方の協力感謝します」
「なんのなんの~」
「これで自分たちの依頼は終わりですか?」
「行方不明者も見付けたしな、俺たちの出番は終わりだ。後は警察のもんだ」
「やった!やっと終わったー!」
「お疲れ様、真眼ちゃんと強さん」
「帰ったら寝るぞー」
一段落着いて、一行は安心と共に疲れが出る。そのまま帰ることにした。
「はぁ~」
強は倒れ込むようにしてソファへダイブ。
「まさかの依頼主の息子だったとはなぁ~。見た瞬間驚きすぎて心臓止まるかと思ったわ」
「その勢いで死ななくてよかったですね~」
「自分は青虫って単語にびっくりしたよ」
普段青虫だなんて言うはずないので、何かとびっくりしていたようだ。
「自分牢屋行きにならなくて安心でした!」
「そうだね。これから細かいルールとかも教えないとダメかもね」
「颯太が教えろよ。俺は真眼と相性が悪いみてぇだからよ」
「自分颯太さんの方がいいので、是非とも颯太さんで」
「そっか、別にいいけどね」
まだまだ未知なところも多いが、そのうち慣れればいいかなと思う真眼。ゆっくりやっていこうと。
本日二回目
投稿ペースが落ちそうで心配であります^^;
まだまだ続くので見てやってくださいな