5.面倒な奴
話し合おうと出会った人は、面倒な人。結局……
「どんな人かもわからないのに探せるんです?」
「写真借りてきたから大丈夫」
「ならいいですけど」
意外にも用意周到か?とも思える。
「この写真の主、不細工だな」
「失礼な事言わないでくださいよ。別に不細工じゃないじゃないですか」
「お前の目は腐ってんのか」
どっちがだよ、と思ったが、ここは口に出さずおとなしく。
「自分の顔を見直した方がいいのではないでしょうかね~」
「ぶっちゃけ俺はイケメンな方だと思ってるんだがな」
「何をほざいて…」
「あん?」
はっ、と真眼は口を塞いだが、塞ぐ前に睨まれた。油断すればすぐこうだ。
歩いて5~6分掛かっただろうか。会話しててあまり人の顔を見ていない。これはいろいろとまずい。
「こいつ見つかんねーな」
「ちゃんと探してます?自分、強さんと話してて思わず忘れてましたよ」
「馬鹿じゃねーの?屑だろ、クソッタレ」
「いやいや、強さんも周り見ずにこちらと会話してましたよね、強さんこそ馬鹿ですよ」
「お前と一緒にされたくねー」
そう言いながら写真を真眼に預けてきた。
「探そー探そー」
怠そうに探し始めた。
真眼は写真を渡してきた理由を聞きたかったが、また怒られるのも嫌なので聞けず。
「いねぇな、コンチクショー。何してんだよ馬鹿者が」
「口悪すぎでしょ強さん」
「あ?」
「すいません………」
またやらかしてしまった、と反省。なんて面倒臭い生き物なのだとしみじみと思う。
「とにかく!すぐに見付かるわけないんですから、粘りましょう。なんだったら颯太さんと交代すればよかったじゃないですか」
「本当だよ、全くよぉ。こんなめんどくせーの押し付けてきたのアイツなんだよな。ここの主である強さんが真眼ちゃんのお手本にならないと駄目だよ!っつってた」
「主として頑張ってくださいよ。全然参考にすらならないんですけど」
「それはお前の理解不足だ」
「はい?」
何を言ってるんだアンタは、と少し切れたかったが、やはり強には逆らえない。恐ろしい。こんなにも我が儘な感じだとは思ってもいなかった。
「こんな人の多い場所に家出してきますかね」
「コイツ家出したのか」
「いや…勝手にそう決めただけですけど」
「勝手に決めてんじゃねぇよアホ」
「だって帰ってこない=家出って言うイメージありません!?」
「勝手にイメージ化するな」
「そうですね」
返す言葉が見付からなかった。
「あぁ~、疲れたんだけど。もう死んでるんじゃねーの?」
「勝手に殺さないでくださいよ!後、まだ開始から10分も経ってない気がするんですけど」
「まだ10分かよぉ~。駄々こねるぞ」
「こねてみなさいよ」
良い歳してそんなことできるわけないと思いながら言ってみた。案の定怒られたが。
「うおっ」
急に真眼は声をあげた。
「ふざけんなお前、馬鹿じゃねぇの」
「どうしましょう、青虫踏んじゃった………あ」
真眼はさっきの事を思い出した。さっき真眼は青虫を地へ返したではないか。もしかするとその青虫かもしれない。
「コイツ…血出てねーな。……となると考えられるのは………」
「オモチャですか?」
「んなわけあるかボケ。成仏できてない幽霊ちゃんかもな。こんなちっこいのならお前でもできそうだし、やってみるか?」
「是非ともやりたいです!」
「よし、じゃあまず塩を振ろうか。その後は簡単、専用の武器で刺すだけ」
「はいっ」
真眼は小さな青虫に塩をまんべんなくかける。うっすら白くなったところで、今度はナイフを取り出す。グロテスクなものを想像していたが、刺してみるとそんなにグロイものではなかった。踏んだ時点で血が出てこなかったのだから、ここで血が出るはずもないのだが。
「こいつはずっと変化してたのな…」
「自分は元の姿を見てみたいくらいで」
「無理ってわけではないと思うけどな。何か練習が必要だぞ」
「何かって何ですか」
「その何かがわかれば別に何かなんて言ってねぇわ」
「強さん今まで何してたんですか」
「透視のことなんざ調べるわけないじゃん。いるとは思ってなかったから」
「しっかり」
「うるせっ」
真眼は、変化前の姿を見る方法を知りたい。あると言われて食い付かないわけがないだろう。この先ずっと意味不明な光景を見るのもうんざりになりそうだし。
「どこー…俺おねんねの時間」
「やっぱり颯太さんとチェンジしてもらえばよかったじゃないですか!」
「うるせーんだよゴミがよぉ」
「はぁ!?」
言葉を慎め馬鹿野郎!!、と心の中で思いっきり叫んだ。いつか強に堂々と面と向かって言ってみたいものだ。
「やっぱり警察に頼まないと。皆からの情報も無しに見つかるわけないじゃないですか」
「んなこと言われたって…」
「もう一度依頼主と話し合ってもらえません?」
「じゃあ、お前も来いよ。俺じゃ説得力の欠片もないだろうからよ」
「……わかりました」
大事にしたくない理由も聞きたかったので、真眼は強と一緒に依頼主の元へ行くことにした。
強は依頼主からの電話番号をメモした紙を取り出し、自身の携帯からかけた。待ち合わせ場所を決め、真眼たちはそこへ向かうことに。
「ひかり公園だとよ」
「少し遠いいですね」
「あぁ、でも仕方ねーわ」
ひかり公園へ着いたので、依頼主らしき人物を探す。一通り見渡してみると、それらしき人物が。
「あ、笹原さんですか?」
「そうです、笹原です。お話とは何でしょう?」
強が話し掛けたのは、40代であろう女性。
「俺…じゃなくて、私達だけでは探すのも困難だと判断し、警察に頼まれた方がいいかと」
「なぜ?探すのが面倒だと言うのですか」
「いや、だからだな…」
強は詰まる。
「あの、お聞きしたいのですが」
ここで、真眼が依頼主に尋ねる。
「なぜ大事にしたくないのか理由をお聞かせ願えませんでしょうか…」
「そんなの決まってるじゃない。ただでさえ息子はいじめられっ子なのに、公に公表したら馬鹿にされるじゃない。何逃げてるんだ、弱々しい!…って」
「それは…」
考えすぎだ。この人は心配性でもあり、親バカなのであろうか。
「学校にはきっと行方不明だって、もう知れ渡ってしまっていると思うんです。情報って怖いことに、すぐ広まりますから」
「学生じゃないです、この子」
「え」
「社会人です…。この子弱いから、間違われるのも珍しくないんですよ…」
「あ…なんかすいません。けど、会社にしても同じです。ほとんどの人は知ってると思いますよ。なので、諦めて警察に…」
「嫌。3日経ってるのよ…あの子は一人じゃ何も出来ない。もう飢えてるかもしれない……」
「それはないですって」
さすがに3日で飢えるはずがない。被害妄想が過ぎている。
「早く探してよ…警察なんていらないから探しなさいよ!!!」
急に怒鳴ってくる。これは、真眼も強もお手上げ。探すしかないようだ。
「すいませんでした。専念します」
強は依頼主に謝り、再度探すことに。
依頼主からある程度離れたところで、強の愚痴が始まる。
「何なんだよあのババァはよ」
「まぁまぁ…」
「なんなら自分で探せや屑が」
「そんなみっともない事言わないで…」
「お前はイライラしねーのか?あ?」
「しますよ、さすがにしますけど…嫌だって言ってるんだから仕方ないですって」
「仕方ないで済ませるのか。その仕方ないで済ませてストレス溜まって死ぬんだろ?」
「それは…その……」
この世の中、自分の意思で何かが変わるわけないので、受け止める事も覚えなければやっていけないだろう。
「あの糞野郎……」
ここで、強の携帯が鳴る。颯太から電話が来たようだ。
『強さん?今警察から連絡が来て、死人が倒れているみたいなんです。もしかすると幽霊の仕業かもしれない、とのことで来てほしいと連絡が』
「マジかよ…人探しで忙しいってのによ。お前だけじゃ駄目か?」
『それはわからないですが…一応来た方がいいかと』
「………しゃあねぇな。一旦そっちに戻ればいいのか?」
『そうです』
「了解。切るぞ」
強は画面をタップして通話を切る。
「真眼、一回戻るぞ。行方不明野郎を探しつつな」
「え、なんで」
「理由は後」
二人は探しながら戻る。
そろそろ日が暮れてしまう頃だろう。暗くなる前に解決したいところだ。
最後まで読んでいただいた方はありがとうございます
次も頑張ります