11.朗報
被害にあった子はまさかの…。
「急げクソ眼」
「誰ですかクソ眼って!」
「ちょっと、今喧嘩する時間じゃないから!!」
急ぐ理由はただ一つ。犬に襲われている女の子がいるから。依頼主曰く、女の子は幽霊であろう犬に腕を深く抉られているそうだ。命の危機がある。
場所が近いのですぐ向かえるが、襲われてるのは女の子だ。抵抗できる力など持ってないだろう。近所の人たちも協力しても、相手は普通の犬ではないので、これまた危険。むやみに近付くことが困難。
走り続けていると、悲鳴が聞こえてきた。幽霊犬がいる所に違いない。
場所がわかった一行は走るスピードを速める。一秒でも早く辿り着きたい。
「いたよ犬たち!!」
「真眼お前何も出来ないから住人の援護しろ。いざとなったらその腕壊す勢いで守れ。まぁ、そのいざと言う時は作らないがな!」
早口で強が言った。最後の一言はかっこよかった気がするが。
「颯太!行くぞ!!」
「了解!」
二人は一斉に犬に飛び掛かる。これを見てると、透けない幽霊って不思議だなと思わせられる。が、そんなこと考えてる暇はない。住人の援護に行く。
「だ、大丈夫ですか!?」
「…あの子を守ろうとした暁にやられちまった、無様だなぁ」
「今手当てしますよ」
傷はすごい深いわけではないが、見ていて痛々しい。普通に血が流れている。
血を止める為に圧迫してみるが、これがなかなか止まらない。何せ医者でもないため、知識がない。これから医者になろうとしているのに。
「ち…血止まりませんね.....」
「俺も寿命か…」
「死なせませんからぁ!!」
そう簡単に言わないで!、と内心で叫びながら強く圧迫。さっきよりは血の流れが収まった。大きい絆創膏を貼り、包帯で強く巻いてとりあえず済ませた。
「ありがとな」
「いいえ!!」
右手で手を振ると、激痛が走った。ここで痛い姿を見せては格好悪いので、我慢。
「なぁお嬢ちゃん。あの二人は本当に人間か?」
「あの二人…?」
怪我を負った男性の視線を追ってみると、あの二人と言うのは強と颯太のことを指したのだろうか。
「あぁ、あの二人…。ちゃんと人間ですね。多分心臓刺されれば即死です」
「やっぱり人間だよな。じゃあ、あの犬は?普通の犬か?」
「あれは…確か成仏ができずにいる霊だったはずです。このあとちゃんと成仏させますよ」
「そうか…そういう職業だもんな。じゃああの女の子は?」
「え…?あれはこの近所の子じゃないんですか?」
「見たことねぇな」
真眼はゾッとした。あれも幽霊だと言わんばかりの発言ではないか。
こんな夜中に出回る幼い子供などいるはずないではないか。稀にいたとしても家付近を出るはず…だろうか。
「強さんっ、この子も幽霊じゃないですか!?」
「はぁ!?」
颯太が気付いたみたいだ。
「嘘…」
「あの子幽霊か!たまげたもんだな」
愕然とする真眼。こんな事が起こるなんて。
「おまっ…見間違えじゃないだろうな!?」
「傷口から微かな粒子が飛んでる。これって…」
「.....そういう事か」
幽霊であろう確証が得られた。
そうと知れれば犬も女の子も関係無い。犬も女の子も滅多刺し。
今までにないえぐい光景を、今真眼は目にしている。そのグロさに吐き気を覚えるおばさんも。
グロいと言っても、血は地面に付いてるわけでもない。
「霊よ帰せ!!」
強が御札を手にして、二つの霊に貼り付ける。そのまま消え去るのかと思いきや、消えず、強が真っ二つに切り裂いた。
「幸せにやれよ」
切られた霊は空気へと消え去った。
「ふぅ~、疲れたぁ」
「夜中はキツいですね」
強と颯太に夢中になっていると、いつの間にか野次馬がぞろぞろと出てきていた。
お疲れ様と差し入れをくれる方も。もちろん強と颯太に。真眼は鑑賞していただけなのでくれるはずがない。
「すげぇ野次馬だな。お前さんは何で一緒に戦わなかったんだ?」
「え?あ、自分は今腕を負傷してて…戦える状況じゃないんです…」
「そうかそうか。そんなに酷い傷も負うのな、俺も現に負ったしな。危ない仕事だなぁ」
「本当ですよね」
ここで会話が途切れた。
そしてそのまま、強と颯太に群がる野次馬を見る。自分も戦ってたらちやほやされてたんだろうな、と真眼は思う。
羨ましがっても仕方ない。戦えないのだから。
すると、強と颯太が真眼の所へ来た。
「帰んぞ」
「差し入れたくさん貰ったから、帰ってから分けようか」
「はいっ」
流石は颯太。優しいから分けてくれるようだ。
「おじさん、気を付けてくださいね」
「おう、お前さんもな」
一応別れの挨拶を。お互い手を振ってこの場を去る。
「帰ったらおやつ~♪」
「帰ったらうがい、手洗いして寝ないと」
「は?もう朝だろ、明るくなってきたし」
「休息は必要なんです!1時間でもいいから寝て」
「…わーったよ」
強を黙らせる事を出来るのは颯太ぐらいではないのか?と思わせられる。
真眼は欠伸をして歩く。今から寝れば午後12時まで眠れそう。
「今思ったけど、作業効率上がったと思いません?」
「まぁな、前は怖がってお前はろくに霊とも近付けないで、石ッコロ投げてたのに対して、今は堂々としてるしな」
「ほんと…1時間足らずで倒せるようになってよかった」
そんな過去があったのか、と思いながら二人の会話を聞いていた。
誰だって最初は怖いものだ。死ぬかもしれないから。
真眼もいつか、二人の様に戦える日が来るのを楽しみに待つ。その為には、まず腕を治さなければ。
「ただいま~」
「颯太、んなこと言っても誰もいねぇから…」
「え、いる…」
そこには梓の姿が。
「梓?おい、梓」
「強さん、起こさない方がいいんじゃ…」
「ここにいる理由気になるだろ」
「そうだけども」
寝かせておいて、起きた頃に事情を聞いたらいいだろうに。せっかく寝てるのだから。
「ん…」
「おっ、梓」
「......あっ」
梓は素早く起き上がった。
「ご、ごめんなさい!電話が鳴ったので私出たんです」
「お前朝早いんだな」
「はい、朝は強いんです」
「んで、電話は何だった?」
「それがですね…」
間を置いてから、
「ここへバイトしたいとの電話が入りまして。今日の昼頃には訪れに来ると思いますよ!」
「女か?男か?女か??」
なぜ女を二回言ったのか。
「喜んでください、女です!可愛らしい声だったので、顔も期待大ですね!」
「うっし!!ようやく可愛い子が来るんだな」
どんだけ可愛い子にしか目がないのか。真眼はちょっと嫉妬。自分も女なんですけど!?と言いたかった。
「新入りかぁ、自分先輩ですね」
「だね、頑張って真眼ちゃん」
先輩になれると言う喜び。しかし、知識がまるでないので、立派な頼もしい先輩にはなれないだろう。
「新入りの為にも、疲れを取るために休息取るよ。起きてるならもう起きててもいいや」
諦めてそう言った。
強と梓はこのまま1階で待機。颯太と真眼は眠さに耐えられず寝室へ。
真眼はどんな人が入ってくるのか楽しみでいる。
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