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 成仏できていない者達が集まるスポットというものがあるらしい。

 そこは怪奇現象は絶えず、人々は体調を崩すのも珍しくない。

 しかし、町並みは至って普通。

 なぜなら、目に見えるわけがないのだから。


 この町の取り柄と言えば、大きな医療大学があること。

 高いビルが連なってるわけでもなく、人口が多いわけでもなく、田舎って言うわけでもなく、過ごしにくいわけでもなく。むしろ過ごしやすい方だと思っていた…。

 とある事が起こらなければの話。

 それとなく日常を過ごし、取り柄である医療大学に行くことになった霜月真眼(しもつきさなめ)。勉強嫌いだが、医者になって金儲けの為に必死になって勉強をして偏差値を上げ、推薦に達するほどの学力を見事に得て、今に至っている。

 医者になる為に、人との接し方を学ぼうとアルバイトで先に学んだ方がいいかと思い、真眼はバイト先を探している。同時に、自立もしてみようかと家探しも兼ねている。

「見つかったの?」

「んー、まだ~………おっ?」

  真眼はパソコン画面を凝視。そこには、月収10万越えという文字が。金には目がない真眼、もちろん食らい付く。

「決まったかもしれないぞこれ」

「どんなのさ」

 母の問い掛けに目を輝かせてこたえる。

「月収10万越えで、しかもお部屋付きだって!自分これにするわ」

「内容を聞いてんの」

「内容は……不幸の人たちを救う、だってさ。いい仕事だな!」

「そうなの…」

 母は少々不安そう。

 そんな母を気にも止めず、早速準備をする真眼。

「なに、もう行くのアンタは」

「うん、忘れる前に行っとく」

「どんだけ興味ないのさ…」

 唐突すぎるが、母は止めなかった。娘の成長を嬉しく思うのと、自立できるのかと不安にもなったりするが、そこはあえて楽しみとして受け取る。

 真眼はそれっぽいかしこまった服装をし、髪の毛を一本に(まと)めて結い、いざバイト先へ。

「無事帰ってくるんだよ」

「ほーい、行ってきまーす」


 展開が早すぎるが、これがいつもの真眼。先ほど調べたところ、家から5分以内で着く距離にあるってこともあってか、今日実行にあたったのもある。

 バイト先の通りは、住宅街。その中に喫茶店があるらしい。喫茶店の隣に目当てのものがあり、注意書にはカフェと間違えないようにと書かれてあった。

 あっという間に喫茶店へ。目的は喫茶店の隣だが。

 しかし、どちらが喫茶店なのかわからない。どっちも見た目がお洒落で、看板がちょうど建物と建物の間にあるため、真眼には見分けがつかない。

 困り果てた時、チリンチリンと音が。右側の建物の扉が開いた。その中から、エプロンを着た、可愛らしい女の子が出てきた。

「どうされました?」

 とても可愛い声で、首をかしげる。両サイドに結ってある髪の毛が動き、萌えを感じさせる。

「えっと、どっちが喫茶店かなーって思ってたんですが…あなた様が出てきたのでようやくわかりました」

「そうなんですね!ちなみに隣とこの喫茶店繋がってるんですよ。ごゆっくりどうぞ♪」

 喫茶店に入ると思われたのだろう。事情を話してから、目的地へ。


「ごめんください~」

 インターフォンを押してからたずねる。

 すると、中から男の人の声が。声はかっこいい方だと思われる。

 ガチャ、と扉が開き、開かれた先には、髪を遊ばせた男の人が立つ。髪の毛の色はほぼ金、前髪はかっこよく分けられており、なんと言っても目付きが鋭い。

「何の用?」

「ここでバイトさせてください」

「マジで言ってるのか」

「え?」

「いいや、事情聴取だ。中に来い」

「あ、はい」

 そう言って中へ連れてこられた。中はシンプルで、どこか落ち着く感じがある。

「お前、度胸あるな。周りの奴等は怯えてここにバイトしに来るやつなんぞ居やしない」

 急に誉められたのか。戸惑う真眼。

「度胸…っすか」

「死ぬかもしれないこの仕事を引き受けるんだ、度胸あんだろ」

「死ぬ!?」

 何言ってんだこの人。と思った矢先、呆れられた。

「はっ?お前何だと思ってここ来たんだよ馬鹿」

「馬鹿じゃないです!何も考えずに来ました」

「いっぺん死んでこいボケ」

「えぇっ」

 馬鹿、ボケの連発。

「ったく、おい、これ読め」

 男は机の中から、紙を取り出す。その紙を真眼の顔面に叩き付ける。

「いってぇ…」

 紙を手に取ると、ずらーっと字が書かれている。

「これ読むんですか」

「おう、死んでも保証しねーからな。同意書だ」

「お、おぉ。そんな…」

 一通り目を通してみると、確かにそのようなことが書いてある。

「けど、死んだらきっと問題になるだろうし、テレビにも出るじゃないですか。って事はまだ死人は出てないんですよね、さほど危険じゃないってこと!つまり自分もいける!同意します!」

「勢いでいくなよクソガキ」

「はい、同意しました。サインですよ、ほれ」

「……いいんだな、後悔するなよ」

 低い声で同意書を受け取り、印を押す。

「これは俺が保管しとくわ、あーだこーだ言われても俺がこれを出せば文句なしだ」

「ほい」

「返事は?」

「はい」

 まさか今になって、こんなことを言われるとは思ってなかった。

「では、また明日出直してきますね。今日は挨拶しに来ただけなので」

「おう」

 真眼は一礼して出ていった。

今後ともよろしくお願いします

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