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世の中には「死亡フラグ」というものが存在する。
死亡フラグが立つケースとして、あまりにも自分に幸せなことが続いている瞬間を指す場合が大半である。
たとえば、最愛の恋人ができた瞬間。守るべき自分の子供ができた瞬間。自分の達成したかった目標を達成した瞬間。このような時に人は、決まって感動てきな言葉を吐く。
「俺は、この人を一生守ろう」
「勉強した甲斐があった。俺は、これからも頑張るんだ」
「この幸せが一生続けばいいのに」
こんなセリフを吐いた瞬間、死神が大きな鎌を持って、吐き主前に現れ、喉元に鎌を突きつけるのである。これは、世に言う死の宣告というものだ。
実際、僕は死亡フラグが立つようなセリフを半年以上前くらいに履いたような気がするが、僕はいたって元気であった。死亡フラグなどこの世には存在しなかった。
僕は、大学の掲示板に張り出されているものが気になった。
【快挙!公認会計士3年生で在学合格者が2名誕生! 鈴木一郎さん、仙崎進さん合格おめでとう】
僕は、あの図書館で会ったやつなんじゃないかと思った。写真こそ張り出されてはいなかったが、たぶん間違いない。
しかし、その貼り紙を見て僕はやる気が出た。なぜなら僕は、公認会計士の予備校に通っていたからだ。あの奇妙な事件が終わったあと、僕はしばらくして予備校を申し込んでみたのだ。だいぶいい値段の授業料ではあったが、僕は彼女の「会社作り」の手伝いがしたく、会計を本気で学んでみようと思ったからだ。
ちなみに、彼女との交際は順調に上手くいっていた。そして、彼女を通じて友達も何人かできてしまった。彼女が女友達に僕を紹介するたびに「ええ、こんないい人いたの!?」とよく驚かれた。僕は、女性の言う驚きは、皮肉なのか本当に羨ましがっているのかいまだにわからないでいる。(まぁ、一生わからないのだろう。性転換でもしないかぎり)
「おっはよー」
大学の広場を歩いていると彼女が後ろからやってきた。彼女は、また一段と明るくなった気がする。
「あらあら。今日も勉強ですか。私の相手はしなくていいのかな」
「ごめん。今日は勉強をちょっとしたいかなー。連結会計でちょっとわからないところがあるんだ」
「ふーん。私よりも会計なんだ」
「そんなことないよ」
僕は、彼女のあたまを撫でた。彼女は目をつむって、なにやら嬉しそうな表情をした。
「じゃあ、勉強終わったら?」
「え、きみの家にいくつもりだったけど」
「じゃあ、ご飯作って待ってるよ。カレーでもいい?昨日、野菜炒め作ったんだけど、ちょっと残っちゃっててさ」
「残飯処理部隊隊長の私におまかせを」
僕は、敬礼のポーズをとった。
「では、任せた隊長」
彼女は、僕に命令をした。
「イエス、マム!」
僕の死亡フラグが発動するのは、たぶん、だいぶ先であると思ったのだった。




